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ストレスの身体への影響~胸腺への影響(ハンス・セリエ)

ストレスは、生きていく上では常に付き合っていかなければいけないものです。
人にストレス反応を与えるものをストレッサー(ストレス要因)と呼びますが、しんどいことや負担になること以外でも、クリスマスや旅行など楽しいこともストレッサーとなります。
『配偶者の死』=100
『離婚』=79
『夫婦の別居』=65
『クリスマス』=12
など、点数化されている場合もあります。

ストレスを受けると、人の身体はどうなっていくのでしょうか。

ストレス学説を唱え、ストレッサーの生体反応を明らかにしたカナダの生理学者であるハンス・セリエ(Hans Selye 1907- 1982)は、ストレスに対する人体の反応の時間的プロセスを3つの時期に分けました。

警告反応期
ストレッサーに対する警報を発し、ストレスに耐えるための内部環境を急速に準備する緊急反応をする時期である。警告反応期は、ショック相と反ショック相に分けられる。ショック相では、ストレッサーのショックを受けている時期であり、自律神経のバランスが崩れて、筋弛緩・血圧低下・体温低下・血液濃度の上昇・副腎皮質の縮小などの現象が見られ外部環境への適応ができていない状態と言える。このショック相は、数分〜1日程度持続する。一方、反ショック相ではストレス適応反応が本格的に発動される時期で、視床下部、下垂体、副腎皮質から分泌されるホルモンの働きにより、苦痛・不安・緊張の緩和、神経伝達活動の活性化、血圧・体温の上昇、筋緊張促進、血糖値の上昇・副腎皮質の肥大・胸腺リンパ節の萎縮といった現象が見られる。
抵抗期
生体の自己防御機制としてのストレッサーへの適応反応が完成した時期で持続的なストレッサーとストレス耐性が拮抗している安定した時期である。しかし、この状態を維持するためにはエネルギーが必要であり、エネルギーを消費しすぎて枯渇すると次の疲憊期に突入する。しかし、疲憊期に入る前にストレッサーが弱まるか消えれば、生体は元へ戻り健康を取り戻す。
疲憊期
長期間にわたって継続するストレッサーに生体が対抗できなくなり、段階的にストレッサーに対する抵抗力(ストレス耐性)が衰えてくる。疲憊期の初期には、心拍・血圧・血糖値・体温が低下する。さらに疲弊状態が長期にわたって継続し、ストレッサーが弱まることがなければ、生体はさらに衰弱してくる。
Wikipediaより

そして、セリエはストレス要因によって生じる人体の反応として

①胸腺の萎縮
②副腎の肥大
③胃潰瘍

を見出しました。

今日は ① 胸腺の萎縮 について書いていきたいと思います。

胸腺、というとあんまり聞き慣れない方もおられるかもしれませんし、私も恥ずかしながら一応看護師として働いていてもあんまり意識したことがない臓器でした。

胸腺(きょうせん、英: thymus)は胸腔に存在し、T細胞の分化、成熟など免疫系に関与する一次リンパ器官。胸小葉とよばれる二葉からなっており、胸骨の後ろ、心臓の前に位置し、心臓に乗るように存在する。
子牛の胸腺はフランス料理などの食材として使用される(リードヴォー)。
Wikipediaより

『子牛の胸腺』…字を目にしたことはあります。
口にしたことはありませんが。
大きさは思春期には最大の30~40g、その後は徐々に小さくなり成人以後は脂肪の一部のように見えるそうです。

子供が虐待を受けると胸腺が高度に萎縮することが知られており、法医学で被虐待児を判別する一つの指標となっています。

胸腺はTリンパ球と呼ばれる白血球を作っている免疫系の中枢臓器なので、萎縮すると身体の抵抗力は低下します。
そのため『ストレスをためると風邪を引きやすい』と言われ、実際に免疫力が落ちる原因になっています。

胸腺はストレス状態が生じると萎縮が起きますが、その原因が取り除かれると自発的な回復が起こります。
回復の程度は萎縮の原因になった刺激の程度によると言われており、あまりに強い刺激を受けた場合は完全に元の状態に回復することは不可能になります。

ストレスを長期にわたり受け続けている方もおられると思います。
だんだん慣れてきた、と思いながら仕事や生活を送る中でも、身体はストレスを受け続け、体調の変化が起こってしまったり取り返しのつかない状態になることもあります。
体調が良くないな、と思う時は、少し立ち止まって、頑張りすぎている現在の状況を見つめ直す時なのだと思います。



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