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#読書感想文〜じゃむパンの日

「じゃむパンの日」赤染晶子(あかぞめあきこ)
(palmbooks・2022)

赤染晶子は2010年、「乙女の密告」で芥川賞を受賞しています。

私は、以前、「芥川賞受賞作品を読もう」という企画をひとりで勝手に立ち上げて、小説を読んでいた時期がありました。

そしてリストを順番に読む中で、「乙女の密告」に出会ったのでした。

その当時、私は、赤染晶子を知らなくて、何の予備知識もないまま、読み始めたのですが、この小説が、何とも面白く、私にスマッシュヒットしたのでした。

大学が舞台でしたが、この毒のある女学生達のやりとりにすっかり、魅了された私は、「なぜ、この作家を知らなかったのか?」と、急いで、他の作品を調べたところ、驚いたことに、作者は2017年に永眠されていたのでした。

こうして、大きな落胆とともに、赤染晶子は私の中に、刻まれたのですが、このたび、エッセイが出版されたと知るやいなや、急いで図書館に予約をしたのです。

当初は区内の図書館に1冊しかなかったので、時間がかかっていましたが、しばらくして、所蔵館が増え、結局4ヶ月待ちで、昨日、ようやく借りることができたのです。

結果は大当たりで、なんと私の心の中に、ここ1ヶ月ほど巣食っていた、ふさぎの虫を吹き飛ばしてくれたのでした。

なんて、素晴らしい!

ちょうど、昨日のnoteで、気分が乗らない時は、軽いエッセイが最適と書いたところでしたが、ちょうどそのタイミングで、このエッセイを読めたのです。

これは、新聞のコラムを中心にまとめたもので、短いものばかり。そして、どれも、抜群に面白く、スイスイ進みます。

何が面白いかって、まずは、この方の妄想力です。
雑居ビルの給湯室で、新妻になってみるなんて、秀逸!

小学校の時も、大学生の時も、何だか変な目にあっている。群ようこや益田ミリなどが好きな方には、ハマると思います。

巻末には、翻訳家の岸本佐知子との交換日記も収録されていて、これは文芸誌の企画と思われますが、非常に楽しめます。

そもそも、この本を知ったのも、岸本佐知子氏のTwitterでしたが、小さな出版社なので、宣伝もそんなにしていないのかな。これは、じわじわ口コミで広がる本だと思います。

小説は、川上弘美や小川洋子のようなちょっと幻想的な世界で、それでいて、夢野久作や、江戸川乱歩のような、昭和の香りがするような文体だった気がします。

もう、随分前に読んだので、記憶が曖昧ですが、私が、学生の頃に好んでいたものに近くて、「ああ、好きなやつ!」と思ったのは覚えています。

ちなみに、私の「芥川賞受賞作品を読もう」企画は、その次の「苦役列車」を読んだところで、頓挫してしまいました。

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