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お笑い賞レースの採点問題と、「うーん」と思う人への提案

先週土曜日に行われた『キングオブコント』はどぶろっくの優勝で幕を閉じた。得意の歌ネタと下ネタで勝ち取った、力強い優勝だったと思う。ほかにもうるとらブギーズのサッカー実況のコントや、かが屋の時系列をバラバラにした失恋ネタなど、名作コント揃いの大会だった。

キングオブコントのみならず、あらゆるお笑い賞レースで論点になるのは採点方法だ。もちろんどぶろっくの優勝にケチをつける気は全くない(みやまるも腹を抱えて笑いました)。だが、審査員の出身地、性別、芸風などで、評価が大きく変化してしまうのは、前から議論されてきたことだ。今回のどぶろっくも、「♩大きな イチモツを ください〜」と高らかに歌う下ネタが審査員の心を掴んだが、松本人志、三村マサカズ、大竹一樹、日村勇紀、設楽統と全員男性の芸人だったのも大きかっただろう。女性の審査員がいたら、ど直球の下ネタの“天丼”(同じギャグを繰り返すこと)がどう評価されたか気になるところはある。

そもそも論にはなるが、スポーツではない、文化や芸能に正確な点数をつけるのは不可能である。加えて「お笑い」という方法論や評論が確立されてるとは少々言い難いジャンルに対して、1点刻みの採点をするというのはかなり至難のワザだ。ゆえに議論の対象になるのは当然のことだし、完全に公平な採点方式を編み出すことは今後もほぼ不可能と思われる。そうなれば採点に「うーん」と思う、納得のいかないお笑いファンが出てくるのは自然の流れだ。そもそもお笑いの好みなんて100人いれば、間違いなく100通りあるだろうし、極論を申せば笑うという“感情”に得点をつけるなんて、ナンセンスなのかもしれない。

そういう人におすすめしたいのは「自分も採点してみる」というやり方だ。採点基準はなんでも良い。「なんとなく好き」でも、立派な「お笑いの評論」だと思う。そして、自分の中の優勝を決め、「自分の中で優勝」した芸人を「面白い芸人」として認識し、ファンになるのも楽しいだろう。お笑いの採点の難しさもわかるし、能動的に見るからいろんなところに目がいって、いつもとは違う細かなポイントにまで目が行くようになるはずだ。その結果をTwitterやnoteに公開して、意見を交わすのも大いにアリだと思う。

<「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」>とは村上春樹のデビュー作、『風の歌を聴け』の冒頭の文章だが、そうそう完璧なお笑いも、お笑いの採点も存在しないだろう。でも、不満に思う人も、少しでも面白く、かつ能動的に見る方法があるはずだ。

#お笑い #エッセイ

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