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メンタルヘルス業界は今後成長出来るのか?~上場企業の業績をヒントに考える~

自己紹介

ベターオプションズ代表取締役・慶應義塾大学特任助教の宮中大介と申します。メンタルヘルスや組織開発関連ビジネスの開発支援、人事・健康経営関連のデータ分析に従事しています。慶応義塾大学でメンタルヘルス、ワーク・エンゲイジメントに関する研究教育にも従事しています。株式会社ベターオプションズ:


はじめに

今回はメンタルヘルス業界の成長性について考えてみたいと思います。メンタルヘルス業界では多くの企業が非上場企業であり 企業の業績に関するデータが公表されていません。そこで今回は、メンタルヘルス業界で20年以上の業歴を有するメンタルヘルス業界での上場企業である株式会社アドバンテッジリスクマネジメントの有価証券報告書を参考に考えてみたいと思います。

株式会社アドバンテッジリスクマネジメント売上推移

株式会社アドバンテッジリスクマネジメントの2012年度からの売上高の推移を示しました。株式会社アドバンテッジリスクは、メンタリティマネジメント事業としてEAP、ストレスチェック、研修等を展開しています。メンタリティマネジメント事業以外には、就業不能保険、休復職支援管理システムの販売を含む就業障害者就労支援事業 、損害保険の代理店事業を中心とするリスクファイナンシング事業が存在します。

売上高推移を見てみるとストレスチェックの義務化以前の時期にはメンタリティマネジメント事業とその他事業の割合がほぼ同等であったことが分かります。 その後ストレステック 義務化をきっかけにメンタリティマネジメント事業が大きく 売上を伸ばし、直近の2023年度ではメンタリティマネジメントとその他事業の割合が 約7対3になっていることが分かります。ちなみに、ストレスチェック義務化は 2015年12月に施行されており義務化初年度の売り上げが全て反映されるのは2017年度の売上になります。2017年度には売上高が前年度より約10億円増加と急激に増えていることが分かります。

2017年度以降も株式会社アドバンテッジリスクマネジメントは順調に売上高を伸ばしていますが、その内実に注目する必要があります。同社のプレスリリースによれば義務化以降もストレスチェックの新規導入先を獲得していますが、いずれも大企業であり、他社からの乗り換えと考えられるということです。つまり、株式会社アドバンテッジリスクマネジメントの売上は増加していますが、業界全体としてみると必ずしも市場規模の拡大につながっている訳ではないと考えられます。他方、直近の2023年3月期の有価証券報告書を見ると、健診管理システム、産業医・保健師サービスの伸長がメンタリティマネジメント事業の売上高の増加に貢献していることが伺えますが、こちらは従来健診管理システムが導入されていなかった企業にシステムが導入されたり、産業医や保健師が事業場に増員されている可能性があります。

まとめ

今回はメンタルヘルス業界の成長性について上場企業である株式会社アドバンテッジリスクマネジメントの業績推移をもとに考えてみました。EAP、ストレスチェックを中心とするサービスに関してはストレスチェック義務化のタイミングでサービスへの需要が急拡大したものの直近では需要が伸びず顧客の奪い合いとなっており、周辺の健診管理システム、産業医、保健師サービスといった領域で新たな需要が拡大している可能性があると言えそうです。

以 上

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