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企業不正を防ぐには?

自己紹介

ベターオプションズ代表取締役の宮中大介と申します。メンタルヘルスや組織開発関連ビジネスの開発支援、人事・健康経営関連のデータ分析に従事しています。株式会社ベターオプションズ:



はじめに

いつの時代も企業による不正は後を絶ちません。こういった企業不正に関しては、犯罪学、経営学、心理学において研究が実施されています。そこで、今回はこれら分野の企業不正に対する理論や研究成果について紹介します。

犯罪学での考え方

犯罪学では企業不正に対する有力な理論として、動機、機会、正当化の3つの要素が揃ったときに、人は不正行為を働くとする「不正のトライアングル理論」が知られています。

動機には、借金に追われている、上司に怒られたくないといったことがあります。

機会は、不正を可能とする機会を意味します。例えば、経理担当者が、借金に追われているという動機を持っていたとしても、一人ではお金が引き出せない態勢となっていれば、横領にはつながりにくくなります。逆に、一担当者が一人でお金を引き出せる態勢であれば、不正の機会となり、横領につながりやすくなります。

最後は、正当化です。これは、自分の理由を何らからの理由によって正しいものとすることです。「一時的に借りるだけ」「会社のため」「職務内容から考えて給料が安い」といった理由が例に挙げられます。

動機、機会、正当化のうち、動機、正当化は本人の特性によることも多いため、企業側の対策としては、機会を潰すことが初手となります。工場等であれば従業員の故意の損壊や窃盗を防ぐために監視カメラを設置する、経理のように現金を扱う部署では、一人で金庫からお金を引き出せないようにする、帳簿は必ずダブルチェックする、営業担当者の定期的なローテーションを実施するといった取り組みが考えられます。

経営学や心理学での捉え方

経営学や心理学の分野では、個人の特性と環境の組み合わせで不正行動の発生を捉えることが多いように思います。たとえば、ある傾向が強い人ほど不正を起こしやすいが、ある環境では、その関係性が強くなる、逆に弱くなると考えます。

不正行動につながり個人の特性として、マキャベリズムという支配欲求、他者に対する不信、地位への欲求、道徳心のない操作というパーソナリティ特性が知られています。このうち道徳心のない操作は、常識や道徳を無視し、他者を犠牲にして自己が利益を得る行為を重視する傾向を意味します。

Greenbaumら(2017)は、この道徳心のない操作が強いほど、会計情報を偽ったり、操作する、機密情報を悪用するといった不正に関する行動傾向が強いことを報告しています。さらに、上司が「部下を馬鹿にする」、「部下を無視する」「部下のプライバシーを侵害する」といった行動を取っている場合に、よりその関係性が強いということも報告しています。

Greenbaum, R. L., Hill, A., Mawritz, M. B., & Quade, M. J. (2017). Employee Machiavellianism to unethical behavior: The role of abusive supervision as a trait activator. Journal of Management, 43(2), 585-609.

「不正のトライアングル理論」から見ると、上司のひどい行動が「上司がひどい奴だから自分も多少良い目を見て良い」という正当化につながっているのかもしれません。

企業不正を防ぐには

「不正のトライアングル理論」から考えると、企業不正を防ぐためには、機会を潰すことが重要ですが、経営学や心理学の知見を参考にすると、今回紹介したように管理職のマネジメントに注目することで正当化を潰すことも可能と言えます。言い換えると、管理職のマネジメントを適切なものとすることで、「上司が○○だから」という従業員の正当化の理由を奪うこということです。そのためには、経営層が従業員サーベイ等の調査だけに頼ることなく、自らの足で現場に出向いて、従業員の状況や現場の雰囲気から、管理職のマネジメントに問題がないかを探り、問題がある場合は即対応することが重要です。
最後に、経営層の行動自体が、「経営層も同じ考えだから」という正当化の理由を従業員に与えてしまう点は経営層が最も意識すべき事項です。経営層自身が自らを省みて、法的に問題のある行動のみならず、偏った判断や企業倫理から考えて間違ったことをしていないか今一度襟を正すことが重要であることは言うまでもありません。
以 上

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