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トランプをぶっ飛ばせ! ―中庸こそが社会の活力

 アメリカ共和党の指名争いでドナルド・トランプが勝利し、11月の大統領選挙に臨むことが濃厚になった。

 前回のトランプ政権時代には、ヨーロッパにおける極右の台頭など、反民主主義的なナショナリズムや反知性主義の台頭が世界を覆う現象のようになっていた。またあの時代がやって来るかもしれないと思うと憂鬱になる。

ネタニヤフとトランプは親密 https://www.japantimes.co.jp/news/2019/09/15/world/politics-diplomacy-world/trump-floats-possible-u-s-defense-treaty-israel-boost-netanyahu-ahead-tough-election/?fbclid=iwar15au8ofcjjzr1bjfuhlg3g0_mihickosnvjfdukhruiccecbcsxuwv_dm


 トランプ氏はガザ問題について昨年10月に「イスラエルがテロ組織ハマスを打倒し、解体し、永久に破壊することを全面的に支持する」と発言していた。イスラエルはアメリカがトランプ政権に移行したらやりたい放題となり、ガザ住民たちのガザからの放逐も実行するかもしれない。独裁的な思考の持ち主のトランプ氏は、アメリカ大使館をテルアビブからエルサレムに移転し、エルサレムがイスラエルの首都であることを認めてしまった。1980年8月に国連安保理決議478号が成立し、この決議でエルサレムでは外交活動を行ってはならないことになった。安保理ではアメリカも賛成しているが、そんな歴史などトランプ氏はおかまいなしだった。

またヘイトや人種主義に逆戻りしてほしくない https://www.usnews.com/news/slideshows/10-times-we-thought-trumps-campaign-would-crash-and-burn


 イタリアの哲学者・歴史学者のベネデット・クローチェ(1866~1952年)は、ファシズムの全体化傾向が学問に及ぶと、ファシズムに公然と異を唱えるようになり、全体主義から自由を守るということが彼の思想的中心命題となっていく。トランプ型政治は独裁的な権力の行使による政治形態であるファシズムに近く、彼が同様な政治手法を用いるロシアのプーチン大統領や北朝鮮の金正恩委員長を好むのもそのためだろう。

クローチェ


 クローチェは、少数によるエリート独裁主義であるファシズムを「まったく理解できない、混乱した宗教のようだ」と非難し、「真実への愛、正義への熱望、人間としての寛大さと市民としての意識、知識と道徳的な教育への熱意、自由と前進するための強さ、保障への配慮こそが、近代イタリアの魂であるとの信頼が揺らぐことはありません」と語った。(倉科岳志『イタリア・ファシズムを生きた思想家たち――クローチェと批判的継承者』)

 トランプ政治はクローチェが説いた「真実への愛、正義への熱望、人間としての寛大さと市民としての意識」とはまったく無縁だった。経済ではアメリカ第一の保護主義の政策をとり、個別企業にメキシコへの工場移転に反対するなど強制介入も行った。その政策は中庸とはまったく異なる極端なもので、歴史も歪曲して解釈する歴史修正主義者だった。

ビートルズ ベートーヴェンをぶっ飛ばせ 


 2018年5月にカナダのトルドー首相との電話会談でトランプ大統領は「君たち(カナダ)はホワイトハウスを焼き打ちしたじゃないか」と述べたという。トランプ大統領は1814年に、米英戦争の最中にホワイトハウスが焼き払われことに言及したらしいが、ホワイトハウスに火をつけたのはイギリスであり、カナダではなかった。カナダの建国は1867年のことで、彼は不正確なことでも平気で述べるメンタリティーの持ち主だ。また、2020年の大統領選挙で敗れたにもかかわらず「私は勝利した」と言い張り、議事堂襲撃事件の原因をつくった。

 ところで、日本政府はイギリス、イタリアと共同開発する次期戦闘機の売却を考えるようになった。なし崩し的には日本は平和主義を放棄しているかのようだ。

「戦争というものはいつでも、なかなかきそうな気はしないんですよね。人間は心情的には常に平和的なんだから。しかし国家は心情で動いているのではない。戦争が起きた時にはもう間に合わないわけだ。強行採決につぐ強行採決、・・・・・・今の政府のやり方を見ていると、いつどういうことが行われるかわからない。権力はいつも忍び足でやってくるのです。」

日本の古本屋より


 これは作家大岡昇平の『戦争』(岩波現代文庫)の中の一文だが、多くの日本人がこれを読めば、現在の国政をめぐる状況とよく重なることに気づくだろう。

アマゾンより


 石橋湛山元首相は、「資本を豊富にする道は、ただ平和主義により、国民の全力を学問技術の研究と産業の進歩とに注ぐにある。」と述べている。戦後の日本人が評価されてきたのは、その牡丹餅をたくさんつくってきた学問技術の研究と、産業の進歩であり、戦争をする国の日本ではまったくない。日本では2020年の大統領選挙でのトランプの敗北を信じなかった百田尚樹氏の保守党が国政に参加しようとしている。大の中国嫌いのトランプ再登板の気配がある現在、日本でも荒唐無稽な歴史修正主義が台頭し、トランプとともに歴史修正主義者たちは中国との対立を煽るかもしれない。「いつか来た道」に至らないようにと願わざるを得ない。


石橋湛山平和賞 http://blog.livedoor.jp/leltugo123-yuki1234/archives/51818833.html


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