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中村哲医師は正しかった ―空爆ではガザに平和はやって来ない

 2019年12月4日に中村哲医師がアフガニスタンで銃撃されてから4年になろうとしている。中村医師は、人が満足な食物を口にできないことが紛争や暴力、あるいは社会的混乱の原因や背景となることをアフガニスタンでの実践や、その体験の中から語っていた。

山梨英和学院のポスターより 「平和を実現する人々は幸いである」 https://www.yamanashi-eiwa.ac.jp/post-10863/


「三度の食事が得られること、自分のふるさとで家族仲良く暮らせること、この二つを叶えてやれば、戦はなくなると言います。私ではなくて、アフガニスタンの人々の言葉です。十人が十人、口をそろえて。」(「ペシャワール会 中村哲医師に聞く。共に生きるための憲法と人道支援 <前編>」May.03.2017)

http://sealdspost.com/archives/5388/2

 中村医師が語るように、アフガニスタンでは食を得られる手段である職業がないために、人々は武装集団に入ることによって生活手段を得ていた。中村医師は用水路を築き、農地を拓くことによって人々に食を与え、平和を創造することを考えた。農地を開拓し、実りを得ることに一生懸命になれば、戦争など本当にバカらしく思えてくる。

ダスティン・ホフマン https://www.bedbathandbeyond.com/Home-Garden/Dustin-Hoffman-on-the-set-of-Sleepers-Photo-Print/25378649/product.html


 昨晩はBSフジの「プライムニュース」でイスラエルのギラッド・コーヘン大使と同席する機会があった。大使の父方はアフガニスタン出身、母方はリビア出身で、いわば中東イスラーム文化の中で育ったような人で、ハマスを非難する以外は気さくなイスラームの人と同様と言った感じだった。大使がアフガニスタンと縁があるということで、中村哲医師のエピソードを紹介し、イスラエルにはキブツ(農業共同体)という社会主義の最も成功した体験があるではないか、日本でも昔は左翼の学生たちがキブツの勉強に行ったように、パレスチナ人たちにもキブツで得た知識や技術を伝え、それで彼らの生活水準を上げることになれば、暴力は減るのではないかとコメントした。大使は、それは我々もやろうとしたが、パレスチナ側が受け付けなかったと話していた。キブツはイスラエルの入植事業の一環とは言え、私有制を否定し、徹底した集団生活と平等、共有の原則で生産活動、育児、教育などを共同で行ってきた。

コーヘン大使はダスティン・ホフマンに似ていた https://twitter.com/GiladCohen_


 イスラエルは10月7日にハマスの奇襲攻撃があると、直ちにガザへの水と食料、燃料の供給を停止した。人道物資の搬入が再開されたのはようやく10月21日になってからだった。ガザは2007年からイスラエルの経済封鎖を受け、失業率は60%に近く、住民たちは満足に水も利用できず、当然のことながら農業生産も上がらない。食料の80%を国際支援に頼るなど、人々が十分に食物を口にできないことがハマスの求心力を高める要因となっている。ガザ住民たちの生活状態の改善をイスラエルが視野に入れることがなければ、暴力という負の連鎖は繰り返されることだろう。

 10世紀の歴史家たちは、ガザは美しいワインヤードなど農地に囲まれていたと記すなど、ガザは農業が盛んなところであった。また、ガザはイスラーム生誕以前より聖地メッカと取引があり、イスラームの開祖ムハンマドの曾祖父がガザで亡くなったのも、そうした通商に従事していたからだ。イスラエルが人々の移動を制限していてはガザの経済を活性化することなどできない。

ガザのブドウの収穫 https://www.arabianbusiness.com/gallery/376824-in-pictures-grapes-farming-in-gaza


 中村哲医師がつくった用水路によって稲、麦、野菜、果物が収穫され、魚が用水路を泳ぎ、生きとして生きるもの、すべてのものが和すこと、それが平和であることを知らされた。中村医師の「水や食べ物があってうれしい。平和な暮らしがしたい。病気が治ってうれしいなどといって喜ぶ姿は善悪を超えて万人共通のものです。」「人はお腹がいっぱいになれば戦争に行きません」などの言葉は、激しい戦闘が繰り広げられるガザでも有効であることは言うまでもない。イスラエルがパレスチナとの和平を真剣に考えるならば、ガザ住民のお腹をいっぱいにすることを考えていくべきだ。爆弾は平和への解であるはずがない。

ガンベリ試験農場のスイカの苗をみる中村医師 http://www.peshawar-pms.com/kaiho/104nakamura.html

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