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インドネシアとのつき合いは歴史修正主義ではなく、正しい歴史認識で

 2021年の衆議院選挙千葉9区・比例南関東ブロックでれいわ新選組から立候補した三井義文氏(現在は参政党に所属)は2021年1月27日のツイッターへの書き込みで「戦後教育で全く事実と異なる歴史を信じ込んでいましたが、インドネシアで目が覚めました。国民をオランダ300年の植民地支配から独立させた日本の行動を歴史事実として国民の教育に取り入れています。インドネシア独立記念日の式典では、インドネシア国旗と共に日の丸も掲揚されています。」と述べている。

三井氏の書き込み


 日本の軍政がオランダ支配をいったん終了させたのは事実だが、インドネシア人の独立をもたらしたということはない。また、独立記念日の式典でインドネシア国旗と共に日の丸が掲揚されることもない。インドネシアの独立はあくまでインドネシアの人々の自助努力によるものだ。三井氏が現在所属する参政党は保守色の強い政党で、反移民・反ユダヤ主義(意味がわからない)を掲げる政党だそうだから、歴史的事実を歪めて日本を賛美する三井氏にとっては参政党のほうが居心地良さそうだ。しかし、このような歴史事実、あるいは現況について誤認はインドネシアの人々の対日感情にも否定的影響を及ぼしかねない。

「映像の世紀バタフライエフェクト 大東亜共栄圏の3年8か月」 https://www.nhk.jp/.../blog/bl/pwNd0m2dAp/bp/p9d5Wlr21D/


 日本のインドネシア支配は米国などの経済制裁を受け、米国からの石油輸出が止められる中で、インドネシアの石油は日本の軍部や経済界にとって死活的意味をもっていた。戦略物資の石油がなければ軍艦や戦車も鉄屑同然となる。そのため日本軍はまっさきに油田があるスマトラ島のパレンバンを落下傘部隊で攻略した。当時のパレンバンの石油の年間の産出量は、日本の年間の消費量を上回るほど豊饒であった。

 日本の軍政は1942年3月から1945年8月まで継続した。当初はインドネシア人の感情に配慮するものだった。今村均中将率いる第16軍は、総兵力5万5000人によってわずか10日間でオランダ軍を降伏させた。今村中将の軍政は独立運動の指導者であるスカルノやハッタを釈放するなど、今村の軍政はインドネシア人からは評価を受けたが、大本営からは皇軍精神に欠け、生ぬるいとされた。今村が1942年11月に第8方面軍司令官としてニューブリテン島にあるラバウルに着任すると、インドネシアでは強圧的な政治が日本軍によって行われるようになった。

イスラム教徒に皇居遥拝もさせた 『#映像の世紀バタフライエフェクト 大東亜共栄圏の3年8か月』再放送。アジアを解放するための戦争が、現実は欧米支配を上回る過酷な弾圧政策に。現代日本では「#大東亜共栄圏」という言葉を知らない人もいます。歴史の授業では習わなかった現実がここにあります。 https://twitter.com/kajiponmz


 今村が去ると、日本軍はインドネシア人に対して過酷な政策をとっていった。1943年3月には「ジャワ奉公会」を組織して、インドネシア人を「ロームシャ(労務者)」として勤労動員に駆り立てていった。インドネシア各州にロームシャの割り当てを強制し、この制度によって20万人から30万人のインドネシア人が強制労働に駆り出され、しかもその90%は帰還することがなかった。日本ではシベリア抑留の強制労働が強調されるが、それと同様か、それ以上の過酷な労働をインドネシアの人々に課していった。「ロームシャ」は「ケンペイ」とともに、日本の軍政への反感を現地の人々に植え付けていった。コメの強制徴発に対する農民の反乱、西カリマンタンの指導者たちが反日陰謀を企てたとして日本海軍の民政部、また海軍特別警察隊は住民への弾圧を加え、軍事裁判で処刑された人々は2130人に上るとも言われているほど軍政は高圧的で、残忍な性格をもっていた。

『#映像の世紀バタフライエフェクト 大東亜共栄圏の3年8か月』再放送。アジアを解放するための戦争が、現実は欧米支配を上回る過酷な弾圧政策に。現代日本では「#大東亜共栄圏」という言葉を知らない人もいます。歴史の授業では習わなかった現実がここにあります。 https://twitter.com/kajiponmz


 現在、日本に来ているインドネシアの技能実習生などを戦中の「ロームシャ」と同様な扱いをしてはならないことは言うまでもない。2019年末の時点で日本で働くインドネシアの技能実習生はおよそ41万人、技能実習生の賃金は90,000円から130,000円、それでもジャカルタの最低賃金32、000円に比べると高い。

 NHKで19年7月21日放送の「目撃!にっぽん 荒海にかけた青春~外国人技能実習生の日々」では、鳥取県岩美町田後漁港で働くインドネシア人技能実習生たちが取り上げられていた。インドネシア人技能実習生が乗り込んだ漁船の日本人船頭は「インドネシア人の賃金が安いのはメリットとしてある。仕事も休まないし、それはとってもいいこと。やはり一人、二人いてほしい。」と語っていた。日本人船員が水揚げが多い時で200万円以上の収入があるのに対して技能実習生は13万円。それについてインドネシア人技能実習生は「知った時は力が抜けたというか、がっかりした。同じ仕事をして同じように疲れていても給料は全然違う。でも仕方ない。」と語っていた。

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 日本とインドネシアの関係は良好に推移していると思うが、時として歴史認識が二国間関係の障害になることは韓国や中国について日本人はよく知っているはずだ。冒頭の三井氏のような歴史修正主義ではなく、正しい歴史認識があればインドネシアなど戦中に日本が迷惑をかけた国々といっそう良好な関係を築けることは言うまでもない。


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