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加算式デザイン

僕らのような設計事務所がする設計(デザイン)、特に公共工事の設計は、事前に全てを決めてしまう。

床の仕上、壁の仕上、天井の仕上はさることながら、棚や家具、建具のデザイン、塗料の種類まで事細かに決める。

さらには、最近になるとCG(パース)で事前にインテリアを示しておかないと「図面だけではわからない」と言われ納得されなかったりする(15年ぐらい前はそうではなかったのだが)。

そうなると、色彩計画も事前にしておかなければならないし、設計に含まれない机や椅子などの家具も一旦チョイスして、だいたいのイメージを作っておくことになる。

確かにCGソフトも使いやすくなり、より簡単に設計者自身も完成のイメージがしやすくなったところはある。

そこまで決めてしまっていれば、現場がはじまれば、その計画の実現に向かって一直線に進んでいくことになる。

一方、セルフリノベーションの場合は、設計料はもらえないのだから、図面は出来ればあまり描かずにすませたい。

図面を詳しく描けば、それなりに手間がかかるし、事前の実測や調査にも労力を使う。

CGやパースも時間がかかるので、描かないに越したことはない。

だいたい大雑把に流れを考えて、それをしながら、また考えたり、思いついたりしたことを付け加えながら、進めていく。

どこかを塗りなおすと、触らないつもりだったところが、気になってくる。

じゃあどうしようかと考え、触らないつもりだったところにも手を加える。

DIYを進めていくうちに、だんだんもっと良くしたいと欲も出てくる。

そのとき、たまたま手に入ったものを使うことも出来る。

さらに、複数の人間で手を加えていくと、一人の頭では思いつかないところまで広がりが生まれることもある。

これが加算式のデザインだ。

加算式のデザインには終わりがない。

一応目途のようなものはあり、店舗であればオープンまでにどこかでキリをつけなければならないが、オープンしてからも手を加えることが出来る。

そして、建築工事にとどまらず、家具や小物、観葉植物、スタンドライト、絵画、クッションや、ラグなどのファブリック、パースでいう「添景」にあたるものも付け加えていく。

足で探し、手作りする。

あるものをどうにかして使う。

加算式デザインは、加算すれば加算するほど良くなり、次第に誰にも真似できなくなっていくのが特徴だ。

また加算し続ける限り、ピークが過ぎることはない。

新築建物の場合、新築時がピークで、ビジュアル的にも機能的にも、その後はじわじわと下がっていくのが運命だ。

事前に隅々まで決めてしまう、設計のやり方は、僕らのような専門家にしかできないが、加算式デザインは根気さえあれば誰でも出来るだろう。

過去のもの、そこにあるものと、オーナーの好み、能力(DIYの)との融合から偶然に産まれる、どこにもないデザイン。

そっちはそっちで面白いなと、co-ba kamaishi marudaiとsofo cafeをセルフリノベーションして思った。

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