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もう一度新入社員

今日から新しい会社の社員になった。新しい名刺をもらい、ピカピカのMac Book Airの箱を開ける。Macで仕事するのは4年ぶりだ。早速、トラックパッドを使いやすいように設定し、時が止まったままのSafariのブックマークを整理する。残ったのはほんの少し、Gmail、Googleドライブ、Workplace。これだけあればとりあえず仕事はできる。

初めてのプランナー職、初めてのスタートアップ、初めてのクライアントワーク。30歳を過ぎて、仕事においての初めては、なかなか一度に経験できない。本当にありがたいな、と思う。

前の会社は評判が良く、実際にとても恵まれた環境だったから、なんで辞めるの?と、ここ数ヶ月聞かれ続けた。その度にひとことで答えられずに、だらだらと経緯を話していたけれど、自分自身でも完全には腑に落ちていなかった。

決して嫌になって辞めたわけじゃない。今日の朝だって、昔自分が担当していたブランドの飲み物を買ったくらいだ。大好きなブランドと大好きな人がたくさんいる会社だ。

それでも、次に行くことが必要だったのだと思う。それは、ものごとの優先順位の変化がきっかけだった。去年結婚をして自分の家庭ができ、親戚が増え、日常生活の中で気にかける人が増えた。同時に、30歳を通り過ぎ、自身の体調や機嫌と向き合わなければならないことも増えてきた。けれど好きなものは好きと言い続けたい。大好きな友達や家族との時間も減らしたくない。子どもも近いうちにできればいいと思っている。

そんな中で、自分の生活の7割は占めていたであろう「仕事」とどう向き合うべきなのか。ずっと頭の片隅で考えていた。今と同じ働き方では体力的に続かない。何より時間が足りない。しかし、ここまで積み上げてきたものをゼロにして、何かを始める勇気もなかった。

そうなると、いま自分ができることの中で領域を少し絞って、 深めていくことが解決策なのでは、と思った。では、どこに焦点を当てる? 今までの仕事をひとつひとつ思い返してみて、いちばん楽しかったことはなんだろう。

ちょうどこの辺りまで考えた頃だった。さとなおラボの卒業生のためのFacebookグループに、ファンベースカンパニーで社員を募集している、と投稿があった。

あ、これだ。

不思議と迷いはなかった。その場でさとなおさんに、お話を聞かせてくださいと、メッセージを送った。送ってから少しだけ緊張した。

自分が信じているもののために時間を割きたかった。何百万、何千万もの人に買ってもらえる商品も本当に魅力的だけれど、自分がいままで救われ続けてきたような、そのままだと消えてしまうものごとのために働きたかった。真剣にものづくりをしている人を支えたかった。好きなものを真っ直ぐに好きと言える場所を作りたかった。

そのことに専念ができて、かつ、小さなチームで意思決定も早い。私にとっては願ってもみない環境だった。それに、私がいままで担当してきたブランドにも、いつか貢献ができるだろう。そう信じて、転職を決めた。

昨日はほんの少しだけマリッジブルーのような気分で、仲良くしてもらっていた前職の先輩に思わず連絡しそうになったけれど、それは今じゃないな、と思ってやめた。朝起きたら気分は晴れていた。お気に入りのカットソーを着て、玄関のドアを開けた。夏の朝日がとても眩しくて、目を細めた。

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