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『Don't freak out』 ナイロン100℃

2023年3月14日(火)14時開演
@ザ・スズナリ
¥7,600

ナイロン100℃結成30周年記念公演、第一弾! だそう。
1993年か~。94年にキャラメルボックスを観て観劇人生がスタート、ナイロンを観出したのは2000年以降だと思うんだけど、はっきりしないのよね。『ドント・トラスト・オーバー30』はパンフがあるので絶対観てる。その前にも絶対観てるんだけどな~~。過去公演のリストを見ても記憶が曖昧で。老化かな(苦笑)。だからこそブログで記録せねばと思った次第。
ずっと飛び飛びで観てたケラ作品、最近はしっかりフォローしてるかも。新作も立て続けで、どれもしっかり面白くて、今年還暦でますます精力的ですごいなあ。

シニカル、コメディ、ホラー、不条理・・・バラエティに富んだ作風だと言うけれど、どの作品も不思議とケラさん風味はプンプンするんだよね。
今回はホラーコメディというのかな。ちょっと怖い話だとご本人が仰ってたけど、ゾッとするほどではなかったかな~。

天皇がまだ神だった頃。とある屋敷の女中部屋。身を寄せ合うようにして暮らすふたりの女。
部屋の外、土間を挟んだ居間からは怒号。宿痾と向き合う家主が、冷淡な家人たちと言い争っている。
どこか遠くから、気が違った女の声。今にも死んでしまいそうな犬の遠吠え。
窓の外、庭に黒ずんだ雪がちらついている。今夜は芯から冷える。
ふたりの女中は可笑しくもない話をして無理矢理笑う。それでもかき消せぬ魂魄たちの囁き。ふたりの耳元で小さく。「怖がらないで」。

公式サイトより

舞台上いっぱいに女中部屋が作り込んであり、真ん中には板囲いをした切穴。奥の壁が開くと、高い位置に切穴の底にある部屋が現れる仕組み。
スズナリってこんなに大きいんだ?!って錯覚するようなセットだったなあ。風琴工房でアイスホッケーのリンクが出現した時くらいの驚き。
そして全員、白塗り+目の周りを黒く塗った不気味なメイク。ケラ作品の『修道女たち』や『ドクターホフマンのサナトリウム』もそうだったけど、不穏な雰囲気を増幅するよね・・・。パンダメイクって言う人もいたけど、それより骸骨っぽく見えるなあ。顔がよく判らないから誰が演じてるかしばらく気づかなかったりね。

※ネタバレ有り

山奥の脳病院(こういう言葉がもうアレ)の院長一家の屋敷。女中のあめは昔の婚約者を思い続け、思い出の本『一握の砂』を後生大事にしている。姉のくもはかつての院長・征太郎の妾であったらしく、今は穴底の部屋に狂人として幽閉された彼の世話をしている。
征太郎の弟・茂次郎が院長であり屋敷の主となっているが、実際は母親・せんが甘房家を牛耳っている。
孫である清を折檻し、仕返しに薬を盛られ風呂で煮こまれて死亡。見習い女中のてるは責めを負って警察に引き渡されるが、てるは元々カブラギ警官の情婦だった。
これだけでもかなりインモラルだけど、それだけじゃない。

せんの葬式で出入りする葬儀屋のクグツがまたひどい。カガミに似てるとあめは色めくが、彼はあめをエログロ画家にそれと知らせず紹介し、あめの大事な『一握の砂』を借りておいて売り払う。
そんな卑劣漢だが甘房家のお嬢さま・颯子は彼と親しいらしい。奔放な颯子は町長の息子・ソネと婚約しているがクグツとの方が親密ぽくて、嫉妬したソネに頭から熱湯をかけられてしまう。(まりか嬢の絶叫!)

地下室の征太郎は抜け穴を見つけ、夜な夜な抜け出し村の女たちを襲って孕ませ、挙句に村で流行している伝染病に罹患。(顔じゅうにできた黒い斑点が気味が悪い)
清は学校で虐めに遭っているのを隠していたが、日記を盗み見た奥様は虐めた子を殺してしまい、さらに虐めた子の母に清が殺される。連行される妻を返せと逆上する茂次郎を警官が射殺。
地下室を覗き込んだクグツはあめに突き落とされ、征太郎共々閉じ込められてしまう。(外に通じる抜け穴は塞がれている)

ふたりの男を閉じ込めたまま、あめとくもがトランプ占いに興じている。そこにソネが目薬をさしてやってくれと颯子を連れてくる。包帯でぐるぐる巻きの頭と顔。無言のまま目薬をさしてもらい、去ってゆくふたり。
「随分おとなしくなっちゃって」あめとくもは颯子の様子や占いの話をして笑い合う。笑い声がどんどん大きく、しまいに狂気じみた高笑いになり、終幕。

ざっくりお話を追ったけど、あれよと人が死にまくるし二言目には「キチガイ」という言葉が飛び出すし、もう陰惨かつ無茶苦茶。とても公共電波にのせられない。あまりに酷過ぎても笑えるんだな。
廣川さんの役について触れてないけど、どういう役なのか判らなくて。判らないついでに記憶も朧で。貧乏神みたいというか、疫病神みたいでキモコワかったイメージしか残ってない。廣川さんすみません。

役者さんはみなさんとても達者で素晴らしく。特に姉妹は最高。ふたりとも愛を求めてるのが可愛らしく、そして不憫。
征太郎は狂っておらず、不自由だけどくもと穏やかに暮らしていたのに、外に出られた途端おかしくなった。村の女を襲いまくり、本当に狂人になったのかも。くもは手の内にしていた征太郎が外に出て、他の女に手を出したのが許せないんだよね。
ふたりのお着物の所作が素敵で。立ち居振る舞いが決まってるし、縄梯子をおりる時もさっと裾を端折るのとか手慣れていて見惚れちゃう。

クグツが本当に胡散臭くて、さすが入江さんと思った。そうそう、優しそうでめっちゃ裏がある感じ。もっとスマートなイメージだったけど、けっこう貫禄ついたね?
みのすけさん、大好きなんだけど久々に舞台で拝見できてうれしい。征太郎さんラヴ。
新谷さんもメチャクチャ久しぶり!好き! お耽美な少年、素敵すぎて目の保養。
んでんで、まりか様ーー! かわゆ・・・美・・・!! 舞台で拝見するのは初めて。信じられない頭の小ささ、首の細さ、長さ! のどをそらせたときのあのフォルム、まるで名駅のナナちゃん!
あざといで有名かしれませんが、もう本当に、可憐・・・。きらめくような声・・・、素敵でした。熱湯をかけられた時の絶叫さえ好きでした。ココロ震える!
ソネの尾上さん、ヒトハダや『夏の砂の上』で拝見してたはずなんだけど全然わかってなかったw 白塗りのせいってことにしておこう。

ともかく、おもしろかったーー!
怖くて気持ち悪くて救いようがなくてインモラルで、でもおもしろかった。そんなのをおもしろがっていいんだろうかと思いつつも、だっておもしろかったんだもん。
やはりケラさんの作品は見逃せないなあ。ここ数年で観ていなかった『睾丸』や『ちょっと待ってください』とか、観なかったことをめちゃ後悔。WOWOWとかで放送しない・・・かなあ?

キャスト
松永玲子・・・妹(あめ)
村岡希美・・・姉(くも)
みのすけ・・・天房征太郎
安澤千草・・・天房雅代(奥様)
新谷真弓・・・天房清(お坊ちゃま)
廣川三憲・・・屋敷を訪れる男/年嵩の警官
藤田秀世・・・カブラギ(警官)
吉増裕士・・・天房せん(大奥様)
小園茉奈・・・てる/身重の女房
大石将弘・・・若い警官/ヤマネ先生/女房を寝取られた男
松本まりか・・・天房颯子(お嬢様)
尾上寛之・・・ソネ
岩谷健司・・・天房茂次郎
入江雅人・・・カガミ/クグツ

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