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『眠くなっちゃった』ケムリ研究室

2023年10月12日(木)18時
@世田谷パブリックシアター
¥12800(S席)

ケラさんの舞台で、チケットを買った回が中止になるという憂き目に遭うのは2回目。1回目は『世界が笑う』。この時は間違えてチケットを2枚買っていて、それが日にち違いだったので運良く片方のチケットが生き残って観ることができた。
今回は1枚しかなかったんだけど、なんとかゲットして飛び込んだ。ふう!

7月のプレイベントで聞いていた「笑いの要素もあるけどコメディではない、暗い感じのSF」「昔の人が思い描く未来、レトロフューチャーのイメージ」と言う通りだった。
未来なんだけどテクノロジーは後退して街は荒み、人口も減っている世界の、どこともしれぬ国。人々は実体のわからない「中央管理局」に監視され、過酷な生活を強いられている。

ダークファンタジーのような、美しくて哀しくて恐ろしい夢のような世界。荒廃した社会なのに、いまのこの現実を見ているような気分にもなってゾッとする。

娼婦ノーラのピントのズレた言動や考え方は、子供のような純粋さも感じる。愛するヨルコを失い、壮絶な過去を抱えて悪夢で眠れない彼女。指導観察員として管理局からやってきたリュリュは、ノーラに惹かれてゆく。
歌手ボルトーヴォリはノーラの記憶があれば素晴らしい歌ができると睨み、記憶を奪う。その記憶を吸いこんだボルトーヴォリは耐えきれず悶死する。

雪が降り頻るなか、全ての記憶を失ったノーラがうずくまっている。処刑されたはずのリュリュがそれに寄り添い、自分の名を教える。
「リュリュ、覚えたわ・・・」
「愛してる、覚えたわ」
「あたし、眠くなっちゃった」と呟いて目を閉じるノーラ。
ノーラが死んだのかリュリュは幻なのか、はっきりはしないけれど、美しくてやさしくて哀しくて胸に迫るラストシーンだった。

いつものごとく映像と舞台美術の合わせ技がステキでうっとりしてしまう。今回は場面転換が多くて大変そう。小野寺さんのステージングもおもしろい。
二階席でないとわからない照明の美しさがあったそうなので、WOWOWとかで放送してくれないかな。
そして『Don’t freak out』や『修道女たち』のような白塗りメイク。どういう意図でやってるんだろうか。寓話っぽさが増す気はするけど。

役者さんはみな魅力的だったけど、やはり緒川さんはとにかく素晴らしい。ケラさんのミューズ。圧倒的な魅力。美!
有起哉くんのリュリュもよかったなあ。せつなくもかわいらしくもあり。
野間口さんもよき。今回5役あったけど、とにかく全部、野間口さんだった。山内たかやんも、とにかくたかやんだった。篠井さん、イヌコさん、木野花さん、言わずもがな。本当に全員よい。

あと手塚治虫のスターシステムみたいな、別作品のキャラクターやらが登場したりするのもニヤニヤしちゃう。ちょこっと登場したお医者さんがホフマンだったり、お祈りが「ギッチョダ」だったのにはつい笑ってしまった。どっかで世界線が繋がってたらおもしろいね。

面白くて素敵で、観ることができて本当に良かったとおもうけど、色々と満載すぎて理解がおいつかないし、ひとつひとつの味わいが散漫になった感じはする。出演者も多い上に複数役を持ってるひともいて、ちょい役含めるとほぼ60ある。豪華だけど、ちょっとやる方も見る方も大変なのでは・・・

とにかく余韻がすごいのでまだまだ反芻しちゃいそう。
パンフも買って興味深くおもしろく読み切ったけど、わからんところはわからんですなw

これから兵庫公演、新潟公演があるので、よかったらぜひ。
公演オフィシャルサイト


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