見出し画像

光への道は遠く 『夜明け前 ー吉展ちゃん誘拐事件ー』

2023年11月6日(月)14時開演
@すみだパークシアター倉
¥15,000(3作品チケット)

コレ、発表された時に全容が把握できなくて「???」ってなったのよね。
「Acting Space×オフィスリコ×ISAWO BOOKSTORE 昭和大事件連続上演 光への道は遠く 夜明け前 ー吉展ちゃん誘拐事件ー」
って一読して、何が何だか分からなくないですか?
昭和の事件を舞台化するってことはわかったけど、3作品はすみだで、もうひとつは下北沢で上演。通し券はすみだの作品だけで、下北沢の演目だけ鬼っ子みたいに仲間外れ。何で?
公演のオフィシャルサイトもチラシも、情報が整理できてなくてむちゃくちゃ分かりにくい。両方ともたぶん素人が作ったんだろうなーー。

なんとか解読して、問い合わせもして、3作品チケット+半券値引きを利用して4作品を予約。ここまで能動的に調べないとチケット買えないって、観劇のハードルめちゃくちゃ上げてるよね。よっぽどの芝居好きか、誰かのコアなファンか、関係者しか来ないでしょ・・・もったいない。

1963年3月、翌年に東京オリンピックが開催されるその年、東京台東区に住む一人の少年が誘拐される。中原家の末っ子である満は公開された犯人の声が自分の兄であると確信し、他の兄弟姉妹に相談する。身内の犯した犯罪に右往左往する人々。果たして、彼らの下した決断は? 吉展ちゃん誘拐事件を犯人の兄弟姉妹の視点で描く。

(公式サイトより)


中原保 田島亮
満(弟) 五島三四郎
義成(長男) 杉木隆幸
弘二(次男) 筑波竜一
千代治(三男) 根津茂尚
イサヨ(長女) かんのひとみ
オト(次女) 荒木理恵
キヨ子(保の愛人)山像かおり
幸枝(満の妻) 奥野亮子
サクエ(千代治の妻) 佐河ゆい

この事件は辛うじてアタシの生まれる前の事件で、ほとんど知らなかったので事前にネットで概要をチェックしておいた。なので結末はわかっていながら観たので、「嘘ついてるくせに殊勝らしいふりなんかして・・・」「どうしようもない碌でなしなのに、肉親だからと言って愛せるのか?」とモヤモヤ考えてしまった。
保が本当にどうしようもない人間で、何ひとつ感情移入ができなかった。想像するのも難しかった。金に困れば目の前の小銭を盗む。たぶん何も考えてない、迂闊な人間なのでは。キヨ子さん、早く別れて!

保の心情ではなく、そのきょうだい目線のお話なので、それについてはまだ何となく想像はできる。できる・・・かな。アタシには弟がひとりいるが、やつが犯罪を犯したらどうするだろう。弟より、実父の方はマジでどうしようもない人間だったので(借金を全部母に押し付け、アタシらの教育資金を使い込んで、散々世話になった人の妻と蒸発した)、アタシに類が及ばないか本気で危ぶんだ。いや金を使い込まれたからめっちゃ類が及んでいる訳だけど、それ以外には結局何もないまま先日くたばったらしい。心底ほっとした。
保のきょうだいたちは気が気でなかったろう。犯罪者の身内も犯罪者みたいに扱われるからね、この国は。

役者さんがみなさんとてもよかったので、なんのストレスもなく話の中に入り込めたのは有り難い。保の愛人・キヨ子さん役の山像かおりさんの雰囲気、すてきだった。女優陣はみな愛らしい。お久しぶりの杉木さん、やはり好きだなあ。醸す空気があたたかい。主演の田島くんもよき。彼は演出も制作関係も色々とやってるらしいのにすごいなあ。なんというバイタリティ。

アフタートークもあり、田島くんとキヨ子役の山像かおりさん、ゲストに外波山文明氏、西瓜糖の奥山美代子さんのおふたりが参加。
演劇界のアレコレなお話。その中でiPadならぬEPADという言葉がチラリと出てきて、何のことかと思えば何やら舞台映像のデジタルアーカイブの事業があるらしい。当日配られたチラシの中に入っていたコレかな? https://epad.jp/ ふむふむ、気になりますな。もっとちゃんと話してくれればよかったのに。
好きな役者さんだけ呼んだから集客がむずかしい、という話も。集客を見込むなら人気のある人に出て貰えばよいが、出て欲しい人にだけ出てもらったのだと。(つまり集客パンダに出て欲しくはないのね。わかりみ・・・)

田島くんは「この年になって、先輩から受け継いだものを若手にどう残していくかを考えている」とのこと。えらいなあ。
こういう事件もずいぶん風化してきているように感じるけど、こういうのもおなじく次の世代に残していくべきなんだろうなと。実際にこの誘拐事件について、アタシもいまだに色々と調べてしまっている。舞台で描かれなかった様々な事実を知ることによって、事件や犯人についての見え方が変わってくる気がする。

見応えのある芝居と、たくさんの考える時間を受け取った。
脚本の高橋いさをさんによると、このシリーズでは『夜明け前』が一番重いらしい。ということはあと3つを観に行く足取りも重くならずにすむかなあ。ちょっぴりホッ。芝居を見るにも体力が必要だな。
でもとりあえずぜんぶ楽しみ。


この記事が参加している募集

舞台感想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?