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『海をゆく者』 PARCO劇場開場50周年記念シリーズ

2023年12月20日(水)
18時開演
@PARCO劇場
¥10,000

公演情報を見て、キャストが非常に魅力的!・・・なんだけど、あんまり食指が動かず。翻訳物でブラックコメディ・・・栗山演出もちょっと重いのよね・・・と。けどやっぱり気になってはいて、生協で優待チケットが出たので申し込んだら当選してしまった。ハズレてもいいやってのは大抵当たるという法則(苦笑)。とはいえ届いたチケットは最後列の端っこ。安い分、悪い席と思うべきか・・・。

【あらすじ】
アイルランド、ダブリン北部。海沿いの町にある古びた家に、若くはない兄弟が二人で暮らしている。兄のリチャード(高橋克実)は大酒のみで、最近、目が不自由になり、その世話のために戻ってきたという弟のシャーキー(平田 満)は、酒癖の悪さで多くのものを失い、今は禁酒中。陽気で解放的な性格のリチャードは、クリスマス・イヴも朝から近所の友人アイヴァン(浅野和之)と飲んだくれ、シャーキーが顔を合わせたくないであろう男ニッキー(大谷亮介)を「クリスマスだから」とカードに誘ってシャーキーを怒らせる。さらには、ニッキーが連れてきた一人の男、ロックハート(小日向文世)。彼こそが、シャーキーが忘れたくとも忘れられなかった男だった。

公式サイトより

注)ネタバレしてます!


この演目、今回で3演目だそう。えー全然知らなかった。この面子でノーチェックって、過去のアタシ何してたんだろう。
ブラックコメディと銘打っていたけど、さほどコメディ色は強くなく。しょうもない酔いどれジジイたちの戯れに終始するクリスマスの1日。
濁声でガーガー叫ぶ傍若無人なリチャードがすごく嫌で、最初のうちはチケット買ったことを後悔した。ヒゲも剃らない風呂も入らない(近づいただけで臭い)、おまけに痰を吐いてテーブルや手すりに擦り付ける・・・てのが気持ち悪くってオエってなった。あんまばっちい描写は嫌いなんだよ~。そんな兄の世話するシャーキー、不憫だなあ。

兄弟の家に、アイヴァンとニッキーという同じく飲んだくれの友人がやってくる。ニッキーが連れてきたロックハートも交え、5人で延々と(朝まで!)ポーカーをする話だ。そのロックハートという男がこの話のキーマンで、もう登場した瞬間から異質な雰囲気を醸してたのよね。
ひとりだけキチンとした身なりで言葉遣いもていねい、物腰柔らか。でも端々にただならぬ気配を漂わせてるのだ。ちょっとした仕草や口調なのかな、ココがこうだからって明確にわからないけど、だからこそコヒさんすごい・・・って思った。

そのロックハート、なんと悪魔だった! シャーキーがその昔、浮浪者を殺して投獄された時に監獄で出会い、魂を賭けてポーカーをしたのだと。その時は悪魔が負け、支払いにシャーキーを釈放させた。勝負の再戦のため、やってきたのだ。
・・・急に悪魔だなんて荒唐無稽な設定が飛び出して、アタシは途中までなんらかの詐欺とか夢とか、そういうオチかなと思って観てたんだけど、結局ちょっとファンタジックなお話だったのね。なるほどクリスマスキャロルっぽくもある。

最後、勝負は悪魔の一人勝ちで終わり、シャーキーの命が危ない!ってところで「あっ、4だと思ってたけど、エースのフォーカードだった!」。目の見えないリチャードと眼鏡なしアイヴァンのペアが、メガネが見つかったことで逆転!(って言うのとはちょっと違うけど)今回もシャーキーの命が助かったのであった。めでたし。すんっとなって出ていくロックハートがちょっとかわいそう・・・

人生にいいことなどひとつもないって顔のシャーキー、最初は不憫とか思ってたアタシだけど酒乱だし殺人以外にもかなり素行が悪かったようで、それなりに自業自得なところもあったのかな。でもそんな人間でも兄ちゃんは弟を思っているんだよね。ポーカーの負け分を肩代わりしようとするし、クリスマスプレゼントに携帯電話を贈り「仕事に使えるし、連絡取りやすい」とちょっと照れくさそうに言うし。なんだ結構いいお兄ちゃんじゃん。うるさいしばっちいけど。

最初に後悔しかけたはずが、最後は満足して劇場を出たのだった。パンフまで買っちゃった。
惜しむらくは席が後ろすぎて、いろんなものが見えてなかったこと。双眼鏡は持っていったけどねえ、ずっと使うわけにも行かないし。双眼鏡だと人物ひとりぶんしか見えないし。
後で知ったけど、ニッキーの腕の『アィリーン命』って入れ墨はカタカナで書いてあったらしいね? アイヴァンが食べ散らかしてたのはピスタチオだったんだね? 階段の途中にかかってたのは何の絵か、見えはしなかったけどイエスの聖心だったっぽいね(まあこれは想像がついたけど)。何より役者さんの顔、細かい表情がよく見えなくて残念だった・・・。最近とみに目が悪くなってねえ(涙)

あとは小ネタ?や気づいたこと気になったことなど。

・ソファや椅子をばふっとやる度に埃が! 小麦粉かな~
・舞台が遠いのに、ろうそくの匂いがすごかった
・壁の穴ってパスタ屋、アイルランドにもあるの?って思ったらキャッシュディスペンサーのことなのね。私が行ったのはロンドンだったけど、確かに壁の穴だった
・ミンスミートパイ、ずっと挽肉かと思ってた。(まんが『CIPHER』のセリフで出てくる。30年以上前!)でもまだ一度も食べたことないミンスパイ・・・
・アイリッシュコーヒー、コーヒー抜いたらただの酒や

・コヒさん、好きな俳優さんではあったけどより好きになった。滑らかで明瞭で聞き取りやすい声とセリフ。佳い声! あのばっちい酔っ払いジジイの中で、掃き溜めに鶴。
冷ややかで恐ろしい悪魔なのに、時々お茶目でかわいいし、酒に酔うし(密造酒を飲むと顔を歪めて仰反る。どんな顔かは見えないんだけど)、あの方(神)に冷たくされてむくれるし、勝負に勝ったと思ったら実は負けてたと判って卒倒しちゃうし。

・悪魔の能力使ったらポーカーに勝てるんじゃ? 尋常な勝負をしたかったのかな。
・いくら目が悪くても4とAは間違えないよ・・・文字は似てるけどスート4個とでっかい1個だよ?
・平田満さん、もしや舞台で見るのは初めて?(阿修羅城は観たけど00か03か忘れた)

・初演・再演ではリチャードが吉田鋼太郎、それ以外のキャストは全員続投
・鋼太郎さんバージョンも観てみたかったなあ。
・高橋克実さんだけ62歳、他の4人は全員70歳! すごいなあ
・年齢的にももう最後という話が出ていたが、それは残念だなあ
・クリスマスシーズンにまた観たいから、配役変えても続けて欲しい
・数年ごとに再演するなら、次は誰が何役かと想像しても楽しい

こうして書いてると、も一度ちゃんと観たくなってくるのよね。テレビ放映あるかなあ~
悲劇喜劇に戯曲が載ってると聞いて買おうか迷ってる・・・(買ったまま読んでない、読み差しの戯曲が何冊もある)


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