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ザ・ベンチャー⑤


私が2002年にオプトに入社した時、配属先は営業部署でした。組織の構造としては、営業、メディア(仕入)、ADPLAN、制作、人事/法務/経理/総務と言ったバックオフィス機能がそれぞれ分かれている組織で構成されていました。とは言っても30-50名程度の社員数だったので、お互いがオーバーラップしながら業務の見落としを属人的に埋めていたと言う感じでしょうか。

最近になって思い出すのは、配属が営業になり上司から「自分のハンコ用意しておいて」と言われた事です。それまで学生だった私は親から貰った銀行の認印しか持っておらず、初めてMyハンコ(シャチハタですが…)を購入したのです。当時はなんだか少し大人になった感じがして嬉しいものでした。

ただ、何に使うかと言うと、月初になると経理の女性の方が私のデスクに請求書を置いてくれるので、それに自分のハンコをひたすらロボットのように押す為でした(その後経理から顧客へ郵送してくれる)。

今では信じられませんが、当時の私の担当顧客が50-60社あったので、意外と大変ではあったのです(同僚には200社と言う強者もいましたw)。

約20年経って、そのハンコが無くなろうとしています。
それはそれで間違いなくやるべき事だし、むしろ何でこんな時間かかったのか疑問だけど、苦楽を共にした事を考えると少し寂しいものです。


組織は生き物で生もの


今もそうですが、当時からネット広告業界では多様な広告の種類が次々リリースされては、まずは自分が理解してその都度顧客へ提案すると言うスピード感が非常に求められていました。

簡単に言えば、当時の営業はネット広告の「専門性」が強みだった訳です。と言うとカッコいいけど単に情報の非対称性があっただけですが(今はほぼ無くなっています)。

私としては、その強みである専門性を支えていた要因の一つに「組織構造」があると思っています。具体的に言えば「機能別組織」が仕組みとしてその強みを継続的に機能させていたと考えています。

教科書通りの話ですが、組織構造は基本的には「機能別組織」「事業部制(カンパニー制)」「マトリックス型組織」があります。(※諸説ありますが割愛します。)


簡単ですが下記で整理してみました。

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これからも分かる通り、機能別の組織は専門性を維持し易いのです。

今となってはダサいので大きな声では言えませんが、一人の営業がCPAの良い広告メニューを見つけると、他の営業が寄ってたかって提案し、その広告メニューが爆発的に売れると言う現象がいつも起きていました。正にその現状が機能別組織の特徴を表しています。

誰とは言いませんが、、広告効果を誰にも共有せず一人でコソコソ売る営業もいましたが(笑)、これが事業部制で競争意識が高いほど、そのコソコソはもっと酷く売上も伸びなかったでしょう。


徐々に環境や戦略変更に応じて組織のカタチも変わっていく事になります。

上場後数年が経ち、社員数も爆増し組織も増え、何と言っても規模やエリアも異なる顧客が増えていきました。それによって顧客のニーズは勿論、提供するサービスレベルや価格帯も多様化していく事になります。

その状況を踏まえ、確か2007年頃だったと思います。組織を事業部制と機能別組織の2つの組織のカタチが存在する構造に変えたのです。

1つは大手顧客向けに事業部制の組織で対応する、もう1つは中小企業向けに機能別組織で対応する。そんなチャレンジングな組織変更でした。当時色々と反発や議論が巻き起こりましたが、戦略的とのズレは無かった為(私はそう記憶してます…)、実行する事になりました。

結果としては一定の成果はあったものの、やはり想定した問題は噴出したのでした。

事業部制の組織は各機能の人員が限られている事で業務を冗長化出来ず、退職者が出たりすると特定の社員(概ね優秀な人材)への業務が過多になり提案がスタックする事もありました。

また、機能別組織においては顧客のニーズが多様化している中で、それに答えられる機能(サービス・ソリューション)が不足する事もあり、その対応スピードが課題になっていました。

他にも多くの事象が起きましたが、今から思い返すとメリットもデメリットも正に教科書通りに近い結果になっており、実際にそれをリアルに経験出来た事は今思うと非常に貴重な私の財産になっています。

これは余談ですし、記憶があやふやではありますが、当時の中小企業向けの機能別組織が後のソウルドアウト社の原型になっていきます。(荻原さん違ったらすいません…)

記事を見ると当時オプトの営業執行役員であった荻原さんが2009年の夏頃に鉢嶺さんへ提案し、12月に会社設立されているのでタイミング的には間違いないかなと。



更に数年後、オプトの組織はまたカタチを変えます。

まるで生き物のように。

ソウルドアウトの独立により、中小企業の顧客は移管され、オプトは大手企業が中心になりました。そのタイミングで大きな戦略変更と共に組織構造も変えたのです。

その時導入されたのが、マトリックス型組織でした。

所謂、事業部制と機能別組織の良い所取りの組織です。この場合、問題になるのはやはりマネジメントです。責任の所在が見えづらくなったり、現場メンバーが混乱する可能性が出てきます。更に評価においても成果までの変動要素が多くなることで、どうしても複雑になってしまいます。

ここは時間かけて適任者を調整したり、評価を運用でカバーしていく事でアジャストさせていく事になります。これは今のオプトでも形を変えながらも続いている基本構造かと思います。


こうしてみると、本当に組織は生き物であり、賞味期限のある生ものだとつくづく感じます。


特にオプトのようなベンチャー企業だと、その意思決定や変化のスピードは速く気づくと違う会社になったのでは?と感じるほど変わっている事もあるのです。

戦略と組織変更の絶妙なタイミング、もしくは変えない判断、変えるならどう変えるのか?これば経営の醍醐味の一つでもあると思っています。


これからの組織のカタチとは


これまでのオプトの組織遍歴を書いてきましたが、今後は企業の組織構造はどうなるのか?

私なりの意見は、従来の組織構造に縛られない組織が増えてくると考えています。理由はシンプルに今まで通りでは勝てないどころか、生き残れないからです。

With/Afterコロナを前提に、企業を取り巻く環境の変化、それに伴う課題は今までにない次元に突入しています。オフィスの解約や採用の抑制、早期退職制度の実施などまずはコストの大部分である、働く人と場所の大きな変化が起きています。

アナログ業務のデジタル化は勿論、ビジネスモデル自体のDX対応など、従来の社員やアセットでは解決できない課題も増えています。

その際に従来通りに社員を増やす事に慎重になる企業や、ゼロから社員教育する事に時間を割けないと言う考えも出てくるでしょう。更に同一労働同一賃金の適用や、副業解禁の流れも加速していきます。

この先、働き方ビックバンが起きる事はかなり現実的になっています。

実際にハートラスでもインハウス支援(常駐)や人材紹介サービスを行っていますが、その流れを肌で感じる事が増えています。

今後の組織のカタチとしては、プロジェクトベースに人を外部から集め、仮想組織を組成して業務を遂行していく事が増えると想像しています。そうなると会社の組織構造は、極論として役員1名で他は全員業務委託の外部人材と言う事も十分あり得る訳です。


今後のこのような変化を楽しみながら乗り越えていきたいし、更には自ら変化を起こしていく立場にもあるとも思っています。

ハートラス、更にはデジタルホールディングスとして、全ての企業の勇気ある変革をサポートしたいと思っています。

ではまた。




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