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耳で聞くのに向いている本、向いていない本

Amazonのオーディオブック「オーディブル」を試してみた。オーディブルは月会費1,500円で対象作品12万作以上が聞き放題になるサービスだ。
なお、オーディオブックとは書籍を朗読した音声コンテンツの総称である。

オーディブルを試すことになった経緯

読書好きな友人と会う約束をした。その友人と会った時に感想を語り合いたい本があった。図書館でその本を予約していたのだが、なかなか順番が回ってこない。待ちきれないから本を買おうと思ってAmazonのサイトを見ていた時に、単行本とKindle版の他に「オーディブル版 1か月無料体験」の文字が目に飛び込んできたので試してみることにした。
読みたいと思っていた本は、「三体Ⅲ死神永生」の上下巻。三体は中国のSF小説の三部作だ。私は電子書籍よりも紙の本を読みたい派なので、ⅠもⅡも図書館で借りて読んでいた。仮に三部作の最後だけ所有していても、人に貸したりあげたり売ったりしにくいし、物理的に場所も取るしで、購入するのはちょっと悔しいなとも思っていた。

とりあえずオーディブルを試してみて、合わなかったら紙の本を買えばいいやと思い、まずはアプリをダウンロードして、ライブラリにお目当ての本を追加した。そして、仰天した。なんと、「三体Ⅲ死神永生」上巻は17時間31分、下巻は17時間51分、合計で約36時間の音声データだった。文字で読んだ方が絶対に早い。この数字を見ただけで諦めそうになる。
でも、折角ダウンロードまでしたんだから、と試しに聞いてみることにした。

聞いてみた

「三体Ⅲ死神永生」は、15世紀のヨーロッパの話で幕を開ける。
前作では未来の宇宙で派手な戦闘が繰り広げられていたのに、なんで昔に戻るの?
訳が分からないまま聞いていたので眠くなってきた。
私がオーディオブックを聞くのは寝かしつけの時である。暗い寝室で、子どもたちがキャーキャー騒いでいる横で寝転がりながら聞いている。
何日もかけてなんとかその章を聞き終わり、後の章で物理学や宇宙の話がてんこ盛りになってくるのだが、そこは催眠術のようだった。目で文字を追っても理解できないものを、耳で聞かされてもさっぱり分からない。つらい。

手詰まり感が出てきたので、本のジャンルを変えてみることにした。次に選んだのは、「40歳の壁をするっと超える人生戦略」。
こちらの本はオーディブルだとトータルで4時間59分。まだ聞いてみようと思える数値だ。
こちらはすんなりと聞くことができた。翻訳ではなく元から日本語で書かれた本で、口語調の平易な文章だ。ちょっとくらい聞きそびれても、大事なことは繰り返し出てくるので大丈夫。ざっくりとだが内容を理解することができた。

結論:耳で聞くのに向いている本

・日本語で書かれた口語調の文章
(同音異義語や外国語由来の固有名詞が多いと、すっと頭に入ってこない)
・文章を味わうエッセイや小説ではなく、実用系の本
(聞きそびれても挽回できる)
・文字を読んで自分が理解できるレベルの内容
(文字を読んで理解できないものは、耳で聞いても理解できない)

耳で聞く読書の位置づけ

オーディブルを試す前は、耳だけ暇な時間がどれだけあるのか疑問だったのだが、意外とあることが判明した。家事をやっている時、筋トレしている時、子どもに添い寝している時、など。その時間で積読を解消できたら効率的だろうと思う。一方で、耳で聞く読書の理解度は、目で読む読書の7割くらいだと感じる。
そもそも「耳で聞く」ために作られたものではないので、耳だけで理解できるようになっていない。ものすごく集中すれば理解度は上がるが、ながら作業ではそんなに集中できない。それならば、一方の作業をさっさと終わらせて、本を目で読む時間を長く取る方が結局は効率が良いように感じる。
期日までに何らかの知識をインプットしないといけない場合は、目でテキストを読むか、本の要約動画を見る(あるいは聞く)ほうが勘所を理解しやすいと思う。
あとは、同じ量の文章であれば、耳で聞くよりも目で読む方が早い。
というわけで、私の志向にはオーディブルがあまりマッチしなかったので、無料体験期間内に解約した。

そうこうしているうちに、図書館で予約していた本の順番が回ってきた。「三体Ⅲ死神永生」のうち、既にオーディブルで聞いている箇所にもざっと目を通したのだが、やはり抜けているところがあった。うつらうつらしながら聞いていたので大事なところを聞き逃していたのだ。
その後、数日で紙の本を読み終わり、友人と三体談義に花を咲かせることができた。楽しかった。三体、とっても面白いのでお勧めです。


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