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景色のストック

美術館が好きだ。
先日、山種美術館の「日本画聖地巡礼」展を見てきた。

映画、小説、漫画やアニメなどの舞台になった場所を訪れる「聖地巡礼」。絵画でいえば、作品の題材となった地や、画家と縁の深い場所に赴くことが「聖地巡礼」にあたるでしょう。このたび山種美術館では、名だたる日本画家たちが実際に訪れ、描いた場所を「聖地」とし、美術館に居ながらにして「聖地巡礼」を味わっていただける展覧会を開催します。

山種美術館のHPより

取り立てて日本画が好きということはないのだが、この紹介文を見て面白そうだと思ったので行ってみることにした。結果は当たりだった。日本全国を旅したくなった。東山魁夷の京洛四季は素晴らしく美しかったし、他の画家の紅葉や桜を描いた絵も素敵だった。

昔行った美術展で今でも記憶に残っているのが二つある。
2005年に世田谷美術館でやっていた「宮殿とモスクの至宝 ヴィクトリア&アルバート美術館所蔵 イスラム美術展」
大きな説教壇と美しい装飾品に目を奪われた。その場を去りがたくて、私にしては珍しくグッズを買った。
その後イギリスのヴィクトリア&アルバート美術館を訪れる機会があった。そこでどんなものを見たのか細かいことは忘れてしまったのだが、工芸品がどれもいとおしくて、「こんな素敵なものに囲まれて暮らしてみたい」と思ったことは覚えている。

もう一つは大阪の天保山ミュージアムでやっていた「ミュシャ展」
ミュシャのポスターや版画がふんだんに展示されていて、うっとりと眺めた。ここでも図録やポストカードなどを買った。

それから、どこで見たのかは忘れてしまったけれど、上村松園の「牡丹雪」、中島千波の桜(どの作品だったかは今となっては不明)に魅せられたことがある。

フェリックス・ヴァロットンの、ドラマチックでちょっと心がざわざわする版画や、

モーリス・ドニの「木々の中の行列」も好きだと思った。

ここまで書いてみてそれぞれの絵を眺めていて気づいたが、私が好きなのは「構図の妙」を味わえる作品なのかもしれない。

私自身は普通の会社員で、アートを見ることが仕事に直結するわけではない。ただの趣味だ。
「google画像検索と何が違うの?」と人に言われたことがあるのだけど、画面上で平坦に並んでいる画像と、本物はやっぱり違う。当たり前なんだけど、そんな質問をされると思わなかったので驚いた。本物の大きさ、色、筆の跡、それから訪問した美術館の雰囲気とか美術館への道のりとか見た時の気持ちとか、そういうもの全部を含めて、絵を鑑賞している。
後で思い出す際には、見る前のわくわくする気持ちとか、見た時の「・・・はぁ、すごい」という言葉が出ない感動とか、去りがたくて展示会場を何周もしちゃうときの後ろ髪をひかれる思いとか、そういうのも含めて思い出す。

鑑賞する対象は絵や美術品である必要はなく、街を歩いて風景を見るのも好きだ。
東京都内を歩いていて、ふいに「ああ、あの時あの人と歩いた風景だ」という場所に遭遇することがある。この場所に戻ってきた嬉しさと、あの時の状況には戻れない切なさが混ざった、なんとも言えない気持ちになる。この気持ちをエモいというのだろうか。

素敵なものを見てそれに浸る時間が好きだし、後からそれを取り出して眺めるのも楽しい。というわけで、私はせっせと綺麗なものを見て、その景色を心にストックしている。


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