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空き家銃砲店 第二十一話 <薔薇>

姪は生まれる前からこの家に結び付けられていた。母となる妹が里帰りをして産んだのだが、父親となる人の希望で「言葉が話せるようになるまで実家にいてほしい」と言われたのだ。

そしてこの地で生まれ、住民登録もした。苗字は字違えども、この地で生まれ同時に住民登録された第一子は、おそらく初めてだろう。

話せるようになった赤子は母子ともに父の待つ家へ行ったが、わずが1年あまりで戻ってきた。今は両親のとなり、私と妹が育った家に親子三人で住んでいる。

姪の記念樹、イングリッシュローズの花言葉は<微笑み>。崩れた日本庭園の片隅には秘密が眠っている。 




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あとがき

色紙に書かれた絵です。

「猛虎 一声 山月高 昭和庚午(昭和5年、1930年)??心(?)堂」「もうこ いっせい さんげつたかし」と読み下すようです。

中島敦の短編小説「山月記」で有名な句ですが、そちらの発表は昭和17年(1942年)なので、こちらは漢詩からとったようです。

平成22年(2010年)以後に、下の娘が気に入って持ち帰ったもので、忘れていましたが、ふと、寅年の今年(2022年)、最終話をアップする前日に見つかりました。年代から国俊が描いたものかと思われ、何かの縁だと載せることにしました。

最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。

1日1にっこり。 読みやすくて、ほっこり、にっこり、にやり、とする記事を書きつづける原動力になります。よろしくお願いします。