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-映画紹介-『マッドマックス 怒りのデスロード』 世界中の映画ファンが度肝を抜かれました。

《乱れ撃ちシネnote VOL.50》

『マッドマックス 怒りのデスロード』 ジョージ・ミラー監督 2015年オーストラリア、アメリカ

「死ぬまでに観たい映画1001本 第5版」選定作品

鑑賞日:2023年2月11日 U-next

【Introduction】
一昨日の『アトミック・ブロンド』と昨日の『モンスター』の共通点は主演女優が作品を上回っていることです。

主演女優はシャーリーズ・セロン

マッドマックス 怒りのデスロード』のセロンは目を見張るほど美しかった。
片腕で坊主頭なのに・・・
セロンはとても重要な役を演じていますがそれはあくまでも駒として光っているんです。
シャーリーズ・セロンが出演した映画でこの作品が一番面白い。
いや、圧倒的に面白い作品です。
面白い映画がそうであるようにこの作品も物語はシンプルです。
近未来の荒廃した地球上でインディアンに襲われた幌馬車隊がどう生き延びたかという西部劇を思わせる物語です。
文句なく楽しめる映画なのでお見逃しのないように。

アイマックスシアターでこの作品を初めて観た時、冒頭のシーンだけでオモシロさにのけ反りそうになりました。
特殊撮影を極力押さえてほとんど実写なので画面からほとばしるエネルギーが半端じゃないんです。
とても68歳の監督の作品とは思えません。

この作品を初めて観た時の驚きをブログに書いています。

いや〜、ホントに凄い映画でした。
1979年に自ら脚本を書いた「マッドマックス」で長編監督デビューしたジョージ・ミラー監督のシリーズ四作目『マッドマックス 怒りのデスロード』。
観ている間仰天しっぱなしでした!
少なく見積もっても今年前半最大の収穫かな。

残念ながら109シネマズ湘南ではIMAXヴァージョンを観られなかったので、もう一回IMAXヴァージョンで見直したい。
情報量が多い作品なので二度、三度観ても楽しめるでしょう。
この醍醐味はDVDでは伝わり切れないので映画館に通い続ける人が続出するんじゃないかな。
観ている間に頭に浮かんだのがこの2作品。

1939年に公開されたジョン・ウエイン主演、ジョン・フォード監督の『幌馬車』
と、
1971年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督のデビュー作(テレビ映画)『激突』。

この作品は、
これでもかこれでもかのカーアクションの連続です。

観るものに画面から目を逸らせない骨太な脚本と圧倒的なパワーで爆進する斬新な映像の連続にただただ驚くしかありません。
これほど無条件に楽しめる映画は何十年に一本あるかないかです。

68歳の監督と73歳の撮影監督が創りあげたエネルギーの塊のような映像に素直に酔いしれました。
一年に映画を一本しか観ないという人にも超オススメです!

とは言え実はこのたぐいのアクション映画は本来好みではありません。
映画を語らせたら今一番面白いライムスター宇多丸がラジオ番組でこの映画の面白さについて何週間にも渡って熱弁を奮っているのを聞き、
「ほんとかな?」と観に行って衝撃を受けたんです。

坊主頭で片腕のシャーリーズ・セロンの気高さと美しさにも魅了されました。
(2015.07.05付け万歩計日和)より。

その一週間後に以前観ているけれど印象の薄かった過去のシリーズ3作品をツタヤで借りて立て続けに観たんです。

『マッドマックス』(1979)
『マッドマックス2』(1981)
『マッドマックス/サンダードーム』(1985)

どれも『マッドマックス 怒りのデスロード』とは比較にならないほど陳腐。
そして、
映画公開3ヶ月後にレンタルを開始したDVD『マッドマックス 怒りのデスロード』を観て再び大感激。

次の文章は『マッドマックス〜 怒りのデスロード』がアカデミーにノミネートされたニュースを知った日のブログです。

これは面白いことになってきた。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が第88回アカデミー賞にノミネートされた。
しかも作品賞、監督賞を筆頭に10部門にノミネート。
これは快挙!
つまりこのたぐいのアクション映画が作品賞受賞となったら凄いことだ。
ぼく個人は昨年映画館で観た映画の中で、
と言っても10本程度あるかないかでお恥ずかしいけれど、
ダントツNo.1が『マッドマックス 怒りのデス・ロード』なんだから。

この作品は先日発表された第36回ロンドン映画批評家協会賞で作品賞と監督賞を受賞しているからまんざらアカデミー受賞も夢ではないかも。

声を大にして「これが映画だ!」とわめきたくなる映画の数少ない一本なんです。
ちなみに過去に「これが映画だ!」とぼくが喚き散らしたのは、
・『激突』スティーヴン・スピルバーグ監督。

・『市民ケーン』オースン・ウェルズ監督。

・『七人の侍』黒澤明監督。

・『バリ−・リンドン』スタンリー・キューブリック監督。

・『オン・ザ・ウェイ その夜86分』スティーヴン・ナイト監督。
などだ。

肉体を感じさせない最近の音楽と同じように、
馬鹿の一つ覚えのような薄ら寒い特殊効果まみれの最近のハリウッド映画と違い
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の画面からは血と汗と涙がほとばしっている。
役者の肉体が動いてこその映画だ。

主演のトム・ハーディもいいけれど女戦士シャリーズ・セロンが見事だ。
本作品ではノー・メークで登場したセロンは『モンスター』では役作りの為に14Kg体重を増やし、
『プロメテウス』ではウエスト50センチの衣装を着るために余分な脂肪を完全になくして腹筋が8つに割れるほど体を引き締めている。
(2016.01.20付け万歩計日和)

次が生まれて初めて朝9時から午後2時までアカデミー授賞式生中継を観た日のブログです。

朝9時から2時までWOWOWのアカデミー賞授賞式生中継を見る。
残念ながらぼくのイチオシ『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は6部門受賞にとどまった。

・衣裳 デザイン賞
・美術賞
・メイク・ヘアスタイリング賞
・編集賞
・音響編集賞
・録音賞

技術賞ばかりなのが残念だ。
これらの技術に裏付けされて見事な作品に出来上がったというのに。
少なくとも監督賞を獲って貰いたかったな〜。
(2016.02.19付け万歩計日和)より。


本作品は1985年に公開された『マッドマックス サンダードーム』以来30年ぶりの新作です。

【Story】
資源が枯渇し、法も秩序も崩壊した未来の世界。
石油と水を支配出来れば世界を支配できる。
核戦争後、絶望的な未来社会にその2つを手中に収めた軍団が民衆を支配している。
愛する者を奪われて荒野をさまようマックス(トム・ハーディ)は、
砂漠を支配する凶悪なイモータン・ジョー(ヒュー・キース=バーン)の軍団に捕らえられる。
そこへジョー配下の女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)らが現れ、
マックスはジョーへの反乱を計画する彼らと力をあわせ、自由への逃走を開始する。


格別物語が面白いわけではない。
夢をかなえるために新しい土地に向かう幌馬車に襲いかかるインディアンと戦う幌馬車隊のような物語。
西部劇の定番を未来世界に置き換えた作品です。

【Trivia & Topics】
*企画から製作開始まで30年近くかかりました。
1998年8月。
ジョージ・ミラーがロサンゼルスの交差点で歩いていたときに本作品のアイデアを思いつく。

2001年
撮影開始の予定で準備は進んでいたが9月11日の同時多発テロのために延期。この段階では今までどうりメル・ギブソンが主役を演じる予定だった。

2003年
『マッドマックス』シリーズ4作目の脚本が出来上がり制作発表。
この段階ではヒース・レジャーがメル・ギブソン演じるマックスの意志を受け継ぐ「息子」の役でメル・ギブソンとの共演が予定されたいた。
5月にアフリカのナミブ砂漠で撮影開始。
2005年公開を目指して準備はすでに出来ていたが、
イラク戦争の影響で映画で使われる多くの巨大な乗り物や撮影機材の出荷制限が強化され撮影延長となる。
その上オーストラリア経済が不安定になり製作費の調達も困難になり映画制作じたいも難しくなった。
過去3本の主役メル・ギブソンが度重なる撮影延期で次第に新作に興味を失い製作が中止された。

2007年
世界情勢やオーストラリアのドル経済が安定したので再度『マッドマックス4』の製作を模索し始めたジョージ・ミラーは3Dカメラを開発して撮影することを目指した。
しかし予算面から不可能なことが分かり2Dで撮影して3Dに変換すると表明した。

2009年
ミラーは2011年初頭までオーストラリアのブロークンヒルで『マッドマックス4』の撮影を行うと発表。
主役を演じる予定だったヒース・レジャーが急死したためにマックス役をトム・ハーディと交渉中と報告。
さらにシャーリーズ・セロンをヒロイン役として交渉中だと発表した。

2010年
ミラーは『マッドマックス4』制作と同時進行で5作目の『マッドマックス: ザ・ウェイストランド(Mad Max: The Wasteland)』の製作予定、そして6作目の企画予定もあると声明を発表。

*68歳の監督が指名した74歳の撮影監督。
前2作の撮影監督ディーン・セムラーが映画製作から離れたため、ミラーは既に引退していたジョン・シール(オーストラリアの撮影監督。『イングリッシュ・ペイシェント』でアカデミー撮影賞を受賞)を抜擢した。
本作品がシール初のデジタル撮影作品です。
シールは撮影に6台のARRI ALEXA Plusと4台のALEXA Mをメインで使用。アクションシーンでは壊れても民生品のためにすぐに調達出来るキヤノンEOS5DオリンパスPENE-P5を使用しました。

*フェミニズム
この作品ではフェミニズムが大きなテーマになっているため、ミラーはフェミニズムに造詣の深い劇作家のイヴ・エンスラーを撮影現場のアドバイザーとして招きました。
エンスラーはフェミニスト的なテーマに感銘を受けナミビアに1週間滞在して出演者たちに女性に対する暴力に関する助言を行なった。

ほぼ実写です。
9割は実写で撮影されていることをミラーは表明しています。
スーパーチャージャー付き軍用トラックもその先頭に吊り下げられているヘビメタ・ギタリストが演奏するギターも実際に使用可能です。
ギターが火を噴くシーンにもCGは使われていません。
セカンド・ユニット監督でスタント・コーディネーターのガイ・ノリスは150人以上のスタントを統率し、その中にはシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーも含まれていました。

見事な編集。
ミラーの妻マーガレット・シクセルが編集しました。
彼女が編集した映像は480時間。
全部観るだけで3ヶ月かかったと言われています。

秒間のフレーム数を調節。
本作の5割〜6割は秒間24フレーム(通常の映画の1秒間のコマ数)にしてません。
観客が画面の中で何が起こっているかを分かってもらうためにはスローダウンさせ、
逆に分かり易すぎる時はショットを短くしたり、
24コマに戻すためにスピードを上げています。

映画とはなにか?
映画の持つ機能を限界までこだわったミラーの演出には脱帽です。

・音響について。
サウンドデザイナーのマーク・マンジーニは、
イモータン・ジョーが戦車に銛を突き刺してミルクを噴射する場面では、
鯨の吹き溜まりからの呼吸音を取り入れ、
最後のウォー・リグの破壊ではトラックの死を象徴するために熊のうなり声をスローにした音を使いました。
どれだけ音・音響を大切にしたか・・・。

・セロンの提案。
片腕の女戦士を演じるシャーリーズ・セロンは自ら提案してノーメイクの坊主頭で出演しました。
天下のブロンドの大女優が坊主になりますか?
どれだけセロンがこの役にかけていたかが分かります。
いつもながらセロンの役者魂には恐れ入ります。
この作品の世界的大ヒットがゼロンが企画していた『アトミック・ブロンド』の製作開始を可能にさせました。

*シャーリーズ・セロン。
身長177センチ、体重57kg、B91、W61、H91。
南アフリカ共和国ハウテン州ベノニで道路建設会社を経営していたフランス系の父親とドイツ系の母親の間に生まれました。
セロンの母語はアフリカーンス語で、英語はテレビを観て勉強しました。
アルコール依存症の父親による家庭内暴力に悩まされていた15歳の頃父親に暴力をふるわれ銃をつきつけられたので母親が彼女を守るために父親を射殺しました。
母親は正当防衛が認められたがセロンは多くの人と家庭内暴力や依存症の問題を共有していくためにこのことを発表している。

幼い頃バレリーナを目指していたセロンは単身アメリカに渡りましたが怪我でバレリーナを断念。
その日暮らしで貧困のどん底で暮らしていたセロンが銀行と小切手の件で争っていた時、その場にいたプロダクションのマネージャーにスカウトされ女優活動を始めます。
2005年に「同性愛者同志の結婚が法的に認められるまで私は結婚しない」と宣言し、GLAAD(中傷と闘うゲイ&レズビアン同盟)のメディア賞の名誉賞を受けています。
2008年には国連平和大使に任命されます。

2023年現在47歳のシャーリーズ・セロンは未婚ながら二人の子どもを母国アフリカから引き受け養子として育てています。
しかも上のジャクソンくんはトランスジェンダーをカミングアウトしたことを世間に公表しています。
セロンは世間がジャクソンを彼と呼ぶことによりジャクソンが傷づくことを恐れインタビューで公言し、ジャクソンを長女として育てています。
セロンは子どもたちが結婚すると決めた時には、
「男の子と?それとも女の子と?どんな結婚をするの?」と話し合うことから始めますとインタビューで答えています。

*『マッドマックス』スピンオフ作品制作中。
2024年公開を目指したマッドマックス・シリーズのスピンオフ作品『フュリオサ(原題)』が現在制作されています。
女戦士フュリオサの若き日が描かれます。
監督はジョージ・ミラー、若き日のフュリオサをアニャ・テイラー=ジョイが演じます。

シャーリーズ・セロン(左)とアニャ・テイラー=ジョイ(右)


【5 star rating】
☆☆☆☆☆

【reputation】
Filmarks:☆☆☆☆


Amazon:☆☆☆☆

u-next :☆☆☆☆★



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