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「令和5年度介護事業経営実態調査」結果の考察(デイサービス)

特養の考察につづき、デイサービスの結果についてみていきたいと思います。
デイサービスの場合、特養とは異なり、経営主体(社会福祉法人と営利企業など)や定員規模(地域密着型と大規模など)によって、経営状況が大きく異なります。


通所介護(経営主体別)

第38回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会 資料
【資料2】令和5年度介護事業経営実態調査結果(案)より
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001165516.pdf

「社会福祉法人(社協以外)」と「営利法人」を比較してみましょう。
17行目「差引 ③=①-②(収支差額、収支差率)」は「社会福祉法人(社協以外)」が-2.8%、「営利法人」は4.5%とと大きく異なります

収益について

25行目「延べ利用者数」が「社会福祉法人(社協以外)」が556.7人/月、「営利法人」が611.4人/月で約55名ほど「営利法人」の方が多くなっています。
36行目「利用者1人当たり収入:イ・ロの補助金収入を除く」では、「社会福祉法人(社協以外)」が9,209円、「営利法人」が9,541円と約330円単価が高い水準です。
要介護度では「社会福祉法人(社協以外)」の方が高い印象があるため、「営利法人」の方が個別機能訓練加算などを算定していることにより、単価が高い傾向になっていると推察されます。

費用について

26行目「常勤換算職員数(常勤率)」をみると大きな差がなく、41行目「常勤換算職員1人当たり利用者数」が約6名も多い状況があります。

30行目・31行目「常勤換算1名当たり給与費(介護福祉士・介護職員)」は、「社会福祉法人(社協以外)」が介福:362,877円、介護:339,341円、「営利法人」が介福:311,599円、介護:291,932円と、「社会福祉法人(社協以外)」の方が介福で51,278円、介護で47,409円も賃金水準が高い状況です。
39行目「常勤換算職員1人当たり給与費」、40行目「看護・介護職員(常勤換算)1人当たり給与費」を見てもらっても、一目瞭然で、6行目「給与費」で「社会福祉法人(社協以外)」が71.1%、「営利法人」が57.7%となっています。

以上のことから、「社会福祉法人(社協以外)」に比べ、「営利法人」の方が、少ない職員配置(常勤換算)で、低賃金で職員を雇用し事業を行っているため、高い利益率(収支差額、収支差率)となっている、といえます。

通所介護(延べ利用者数階級別)

38行目「訪問1回当たり支出」と誤字を発見しました。

第38回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会 資料
【資料2】令和5年度介護事業経営実態調査結果(案)より
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001165516.pdf

収益について

定員規模により、「地域密着型通所介護(定員18人以下、300人以下)」や「通常規模(750人以下)」「大規模Ⅰ(900人以内)」「大規模Ⅱ(900人超)」と別れ、それぞれに基本報酬が設定されています。

17行目「差引 ③=①-②(収支差額、収支差率)」をみると、「300人以下」が-8.9%、「601~750人」が3.5%、「751~900人」が5.0%、「901人以上」が6.9%と、規模が大きくなるにつれて、収益率は高くなります。
ただし、36行目「利用者1人当たり収入:イ・ロの補助金収入を除く」をみると、「300人以下」が10,886円と最も高く、「601~750人」が9,398円、「751~900人」が9,246円、「901人以上」が8,417円と単価は徐々に低くなります。
基本報酬がそのように設定されているわけですが、現在の大規模になるにつれて基本報酬が減額されていることは、国が大規模化を進める方針に相反するという主張により、見直しされるようです。

費用について

6行目「給与費」をみると、延べ利用者数が増えるにつれて、1行目「介護料収入」と連動して金額は増えますが、割合は低下します。

また、9行目「その他(事務費・事業費)」についても、延べ利用者数が増えるにつれて割合が下がる傾向であり、スケールメリットが働いているといえます。

まとめ

特養と比べて、デイサービスの黒字・赤字は分かりやすい傾向として、「高い稼働率」と「適正な人員配置・賃金水準」の2つの要素に尽きるといえます。
特に、「社会福祉法人(社協以外)」と「営利法人」を比べると、非常に分かりやすい傾向が出ています。

現在、デイサービスの経営改善の案件をいくつか担当しておりますが、この2つの経営課題に対して、何に取り組むかということが重要なのですが、組織づくりや事業所の強みづくり、情報発信など、いろんな側面からアプローチしないといけないという難しさも含んでいます。

複合型サービスの情報も出てきています。
自事業所がどのような市場のポジションで、どのような利用者ターゲットに対して、どのようなサービスを提供するか明確にした上で、次期介護報酬改定に臨めるよう準備をしましょう。

管理人

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