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【フレスコボールマガジン RALLY & PEACE】 當麻早希[2]

人生で一番応援された日

ミウラカップ当日。ミックス部門の當麻・松井ペアは、全40ペアの中で一番最初に出番を迎えた。開会式直後で、全国のプレーヤーのほぼ全員が見守る中での5分間。ナイスキャッチ!ナイスアタック!と、ひとつひとつのプレーに必ず誰かから声がかかった。

「たくさん練習した、ラリー途中でのアタックとディフェンスの切り替えはできませんでした。それでも、乱れてもうダメだと思った球も松井さんが捕ってくれて、必死にラリーを続けました。皆さんの声は全部聞こえました。今が人生で一番応援されている、と思いました」

5分間は、あっという間に終わった。人生で一番応援されて感激したポジティブな気持ちと、それに応えられなかった自分を責めるネガティブな気持ちが、ここでも交互に現れていた。

當麻・松井ペアの後、GVKの他のペアたちの試合が始まった。

躍動していた。

来週も来る?と声をかけてくれたあの人も、なかなか名前が覚えられなかったあの人も、ポイントを一生懸命繰り返し教えてくれたあの人も、懇親会でイジってくれたあの人も。

初めて見る、仲間の大会での姿は、普段以上にキラキラ輝いて見えた。女子部門では風味千賀子・宮山有紀ペアが3位入賞、男子部門では山下祥・岸田直也ペアが優勝を飾った。

「入賞ペアのインタビューでは、皆さん必ず、周りの人への感謝を口にしていました。ものすごく感動して、落ち込んでる場合じゃないなって。私も人間としてもこうなりたい、ついていきたいという気持ちになりました」

結果はミックス部門16ペア中14位だった。しかし、交互に現れていたネガティブな気持ちは、いつしか消えていた。

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ミウラカップを経て、當麻のフレスコボール熱はさらに上がった。週末が楽しみで仕方なかった。中学時代の同級生の西垣戸美沙選手も誘い、ますますフレスコボールが當麻の居場所になっていった。

「このインタビューして頂いてて気づいたんですけど、私、この頃から仕事も嫌じゃなくなっていました。もちろん、大変なことも悩むこともあります。でも、フレスコの先輩達がお仕事も頑張っていて輝いているのを見て、私も頑張ろうって思えるようになりました」。

そう嬉しそうに語る當麻に、フレスコボールを始めたばかりの頃の自信のない面影はもうなかった。

大切な言葉たち

それでも時折ネガティブな気持ちに負けそうになったとき、當麻が大切にしている言葉がある。2月のローカル大会「明石ゲラゲラカップ」の際に、はるばる逗子からやって来てくれた外山祐次選手がかけてくれたものだ。

「自分の声を一番近くで聞いているのは自分。自分のポジティブな言葉を脳に聞かせれば、逆境でも脳が勘違いしてくれる。逆に、ネガティブな言葉を脳に聞かせ続けると、どんどん落ちていっちゃう。だから、ポジティブな言葉で自分を明るくしていこう!」

その日、當麻と西垣戸選手のペアよりも後からフレスコボールを始めたペアが高得点を記録し、自信をなくしかけていた。こんなに毎週練習に来ているのに、すぐに追いつかれてしまうなんて…。口癖の「すみません」が復活し、褒められても「そんなことないです」と謙遜していた。そんなときにかけてもらったのが、この言葉だった。

「9月に関東で打ったときよりも確実に上手くなっているから、自信を持っていこう」。そう続ける外山選手に、そんなことないです、と言おうとして、當麻は言い直した。

「ありがとうございます!!」

「船」 

気付けば、大学時代以上に、たくさんの人に囲まれていた。それぞれに影響を与えられながら、そして、与えながら、成長していく。

「GVKに最近来てくれるようになった大阪のご夫婦がゲラゲラカップの後に話しかけてくださって。當麻さんが最初にラリーをしてくれていろいろ教えてくれたから私達は続けられているよ、って言ってもらえたんです。」

来週も来る?と誘ってもらったこと、ポイントをたくさん教えてもらったこと、そして少しでも進歩したらたくさん褒めてもらったこと。嬉しかったことをすべて自分もやっている。始めたばかりの頃の不安な想いが分かるからこそ、當麻の体験者への対応は人一倍手厚い。

最後に當麻に、今後フレスコボールを始めたいと思っている人や、始めたばかりの人にメッセージを伝えるなら?と投げかけた。

「メッセージですか?そうですね…、続けていったら、魅力がわかります。きっと楽しくなります。大船に乗ったつもりで、ついてきてください!」

仲間を探して飛び乗った船。いまはそれを突き進める一員として、新たな仲間を探している。漕ぐ手を、止めるつもりはない。

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