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アスタロト公爵#20悪魔皇女サ―ティ

※この物語は 「阿修羅王」の本編より 悪魔の三大実力者のひとり、アスタロト公爵の作品を抜粋しています。特定の宗教とは 何の関係も無いフィクションです。 

「サーティ?」
いつのまにかサーティは顔を伏せている。アスタロトがその頬にふれると、温かいものが流れていた。
「泣いてるの?サーティ」
「私は自分勝手で酷い女なの。今日だってリジュはどんな思いでひとりでいるか。
リジュは、リオールがコーラと暮らし始めた時の、私と同じなのに。それでも、私は・・・」
「リオールが諦めきれない?」
アスタロトはサーティを抱きしめた。

「女は、何でこんなに悲しいんだろうな。男はもう、自分のことなんか忘れてしまったのに。それでも諦めきれない。・・・残酷だよな」
「アスタロト、ごめんなさい。私、どうしても駄目なの。あの時、リオールがコーラを見つける前に、私が彼を自分のものに出来ていたら、きっとリオールはコーラを追いかけなかった。そう思ってしまうの」
「・・・だから、今になってリオールに近づく為にわたしを?」
サーティは黙って涙を流し続けた。

「リオールを、今からでも自分のものにしたい?」
「・・・最低よね。私って。そんなことの為にあなたを利用して」
アスタロトは、サーティの涙をその指で拭うと、優しく口付けた。
「いいや、好きな男に抱かれる為に、ほかの男に嫁ぐ。そんな女を妻にするのも、また一興」

********

「・・・何故だ。何故今になって・・・サーティ?」
リオールはようやく起き上がった。正気に返ったのか、その顔は青ざめている。
「ずっとあなたを忘れていなかった。長い間、ずっとひとりで苦しんできたの。あなたは私が本気になったら、拒めない。そういう人だって事もわかっていたの。それでも、私には、どうしていいのか、わからなかった」

サーティも起き上がって、再びリオールの腕に自分の腕を絡ませた。
「あなたは優しいから、女に恥をかかせちゃいけない、とか、これ以上拒むと傷つける、とか考えてしまって、結局、不本意な事でもしてしまうのよ。だから昔も、いつもそうなる前に、私から逃げていたものね」

「アスタロトの教えてくれた通りだったわ。男ってこんなに簡単なのね。知らないって、本当に恐ろしい事だわ。私は幼すぎて、何もわからなくて、あなたをつなぎ止められなかったんだわ」
「アスタロトもサーティもおかしい!!」
リオールはベッドから下りると脱ぎ捨てられた衣服を身に付けた。
「もう、ここへは来ない。俺とおまえは兄妹だ。俺には妻がいて、おまえには夫がいる。今日の事は、気の迷い、あやまちだ。忘れよう」

サーティは、ベッドの中で薄笑いをうかべた。
「いいえ、あなたはまた来るわ。何度でも、必ず来るわ」
「サーティ!」
「あなたの物分りのいい妻が、クビドの事は別としても、私の事はどうかしら?」
「サーティ、おまえ・・・」
サーティは自然と笑いがこみ上げてきた。その声は部屋を満たすほどの笑いとなり、響き渡る自分の笑い声に、いつまでも酔いしれていた。

二〇〇七年平成十九年四月十五日(日)朝方

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アスタロト公爵#20悪魔皇女サ―ティ


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