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トンニャン過去編#66 ファイヤーバード(原題「ファイヤーバード」)

※この物語は「阿修羅王」編・「アスタロト公爵」編の本編であり、さらに昔1970年代に描いたものを、2006年頃に記録のためにPCに打ち込んでデータ化したものです。
話の位置は「フェニックスの巻」の次。「ファイヤーバードの巻」のような意です。
また、特定の宗教とは何の関係もないフィクションです

それは一九七六年が明けてまもなくの、ある夜更けの事だった。人々は皆寝静まり、夜の闇は、全てを覆い隠すように広がっていた
 
「ありがとう。ブラックエンジェル。ここまででいいわ」
大きな鳥に乗った女に、それに乗せてここまで連れてきてもらった少女が言った。
「コーラ、あんた、これからどうするんだい?」
女が少女に言うと、少女は首を振った。
「どうにかなるわよ」
鳥に乗った女は、夜の女王ブラックエンジェル。そして少女は、大魔王ルシファーに愛された魔女コーラである。

「でも、何が不服なんだい?ルシファーに愛されて、一緒に住んでいるんだろう?」
ブラックエンジェルの見つめる目をかわして、コーラは横を向いた。
「不服なんて・・・。ただ、いたたまれないのよ」
ブラックエンジェルは大きな声で笑い出した。
「リリスに遠慮してるのかい?魔女らしくない。でも、まぁ、私はあんたのそんなところが好きで、脱走に一役かった訳だけど」
 
ルシファーと一緒に暮らしているコーラが、ルシファーの目を盗んで脱走など不可能だ。
それを成し得たのは、このブラックエンジェルのおかげ。彼女は昼間は全く力が無いが、夜はルシファーをも凌駕する力で、夜の世界を支配している。
彼女は大きな鳥にまたがって夜の闇を飛び回る。コーラはそのブラックエンジェルを以前から知っていた。
 
その時、突然まわりが明るくなった。
「いけない。朝だ。コーラ、また会おう」
光を見たブラックエンジェルは早々に引き上げて行った。
「おかしい。まだ、夜が明けるには時間が・・・」
空を見上げたコーラは真っ赤に燃える炎に包まれた鳥が飛んでいるのを見た。
「光は、ファイヤーバードのせいだわ。フェニックス。鳳凰・・・トンニャンね!」
コーラがそうつぶやいた瞬間、鳥はどこかに去り、またもとの闇が訪れた。
 
コーラは自分の名を呼ぶ声で、後ろを振り向いた。
「トンニャン、やっぱり」
コーラは懐かしさでトンニャンの胸に抱きついた。
「コーラ、ブラックエンジェルを知っているの?」
「えぇ、魔界ではルシファー様と同様に恐れられているけれど、私には優しいの」
 
ブラックエンジェルとコーラの付き合いは、コーラが生まれたばかりの魔女達がひしめく天秤から、弾き飛ばされた時から始まった。
赤ん坊のコーラが飛ばされて落ちた所は、湖のそばだった。
月に照らされて泣き叫ぶ赤ん坊のコーラを、抱き上げたのがブラックエンジェル。つまり、ブラックエンジェルは、コーラの育ての親なのだ。
 
「それから、ずっとブラックエンジェルと?」
「そう。でも、途中で連れ戻されて、ルシファー様の部下の魔王様について、魔女修行が始まったの」
「・・・天秤に入る前の記憶は?」
「わからないの。魔女は、たいてい自分の出生を覚えているものだけど、私は覚えてないのよ」

続く
ありがとうございましたm(__)m

トンニャン過去編#66 ファイヤーバード(原題「ファイヤーバード」)

※夜の女王ブラックエンジェルは、ここで初めて登場します。コーラはブラックエンジェルと自分の関係を語り、トンニャンはそれに興味を持ったようです。このトンニャンの興味が、20年以上後の、トンニャンシリーズの中で、トンニャンから「きみの過去を探ってもいいか?」という提案に繋がっていくのですね・・・。(ちなみに書いていたら急にトンニャンが言ったセリフなんで、正直どうするのか全くわかりませんでした。こんなふうに書かせられているのでは?という状態の時が、時々あります)
トンニャンシリーズ「悪魔皇太子妃コーラ」こちらから

https://note.com/mizukiasuka/n/n0b67b42d34fa?magazine_key=mf04f309d9dfc

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次回トンニャン過去編#67 ファイヤーバードへ続く
https://note.com/mizukiasuka/n/ne15fe5ea3e99

前回トンニャン過去編#65 フェニックスはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n1e733deacc84

■トンニャン過去編#1最初から
https://note.com/mizukiasuka/n/n32aa2f7dc91d

※トンニャン過去編 全部読めるマガジンはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/me347e21d7024

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