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夜(詩)

東京の夜には闇がない。
真夜中に目覚めて気がついた。
窓を照らす街灯の光が殺風景な部屋を浮かび上がらせる。

幼かった頃の漆黒の闇を思い出す。
夜の暗さに怯えて、泣きながら母の布団に潜り込んだ。

闇はいつからか安らぎに変わった。
何者をも飲み込んでしまう闇の包容力。
闇は心の中の不安や焦燥も消し去ってくれる。
夜の闇は心を癒やす。

それなのに人間は、闇を明るくしてまで自分を傷つけている。
癒しの闇を自ら消し去っている。

夜の明るさは心に影を作り、やがて影は重なり合い、いつしか心に深い闇を作る。

心の闇は、明るさに負けた人間たちを心療内科へと送り込む。

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