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年経る町角

TVショッピング、通販が、深夜帯のテレビを席巻するようになったのはいつからだったろう。


T兄もなんか視てることがあり、そのような番組群の存在を知らなかった私は訊いた。
「T兄、なんか買うの?」
「買わないよ」
「面白い?😃」
「面白くねえよ」
的な会話をしたような記憶がある。
ほかにやっている番組がないが、早朝の暗さ静けさに音や画面がないのは寂しくて、どうやら視る気もないのにワザと点けてるのが常だったらしい。男一匹、男おいどんなT兄だった。


通販で、「コレは良かった❗️」とレジェンド某の魔術にかかるみたいなことはあるのだろうか。


目立つのは、ダイエット関係、各種便利グッズ、化粧品、そして若さを取り戻すためのサプリメントなどか。


年経る町角、ということで、アラフィフなわたくしが、アンチエイジングなあれこれの特徴をざっくりまとめてみる。


特徴① まず「気になりませんか?その、○○」と、不安をあおる(おなかのぜい肉、痛む肩や足腰、しみしわ白髪薄毛、高い血糖値、かすみ目など)

ここでモニター(桜)登場。

特徴② 皆一様に「いやー、気にはなるんだけど…」と、忙しさや面倒くささ、トシに逃げてあきらめているていでアンケートに答える。

特徴③ 突如画面いっぱいに、びっくりマークつきで叫ばれる。
「ちょっと待ってください❗️あきらめるのはまだ早い‼️」

特徴④ 大向こうを狙ったように、「そこで、こちら‼️」商品登場。

特徴⑤ 使用後の桜、登場。一様に「今では手放せません❗️」
使った人の9割を超える満足度を表す大雑把な円グラフ。本物かどうか分からない偉そうな医師が太鼓判を押すも、画面の隅には年寄りにはつらい小さな字で「実は効果はないかも」「個人の感想だから」と断り続けてはいる。

特徴⑥ 何故か、初回に限り送料は無料で、半額で、もう一個ついてくる。それじゃ原価いくらなんだよ、と思っていると次のが始まる。


どうでしょう。こんな感じで。だいたい合ってるでしょうか。


私もこれまでに色んな職場で同僚や先輩に化粧品関係などを勧められた経験はあり、武士らしく「いや拙者は」とフラフラ逃げてきました。
そういう人に限って仕事はできないというのが共通してたけど。彼女たちが、家庭内不況対策としての来たるべき副業ブームを先取りしてた、と好意的に見ることも出来はしますが、異様に値段が高いのが特徴でした。そのわりに、その人は大して「全然効果出てないんじゃないか」というのを体現されていたのもまた、忘れられない思い出です。


年を取り、しわを笑う。しみを笑う。まろやかなおなかを、しょうがないなあこれじゃモテないよと笑う。そもそも年を取ってるだけで、しかも何も持たず、経歴もなくツブシもきかないのを笑う。金の卵を産む卵管も閉じた。


だが、見てくださいよ。そんな人が、どれだけたくさんいるかを。そいつらイケてねえよと言ってる若い人々が、いずれ、もれなくそうなることを。そしてもちろん、皆死ぬこと。足掻こうが笑おうが。


たくさん、ものやお金を持ってない、イケてない中年の私は、やはり同じような人が好きだし、顔に美しい年輪をたくわえた人はもっと好き。その心映えが美しければ。そしたらその人より美しいひとなんていないもの。そうなれたら。そして、そう生きて死ねたら。


金を紡ぎ出せない私を、親もきょうだいも周囲の人たちも笑った。でも、笑わない人もいる。
そして、一緒にしゃがんで悩んでくれて、やがて一緒に笑って立ち上がることができる、そして笑う。そんなことがある。嘘だと思う?


請け負うよ。それは嘘じゃない。ただ、そこに行くまではラクじゃないかも。それだけだって。


象牙の塔に、行きたくば行け。永遠の若さを求めたくば求めよ。


私は、愛としわを選ぶよ。ちゃんと痛む体を選ぶよ。それが恵みでないだなんて、誰が言った?そこから学べることは無限だと。


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