読書メモ2:トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ

1 ダイエット本の決定版
 本書は,きちんとしたエビデンスに基づいて,人間がなぜ太るのかを把握し,そこから論理的に導かれる内容で痩せる方法を教えてくれるというものです。
 昨今いろいろなダイエット本が出ますが,本書はそういった方法が効果を有することもあれば,有しないこともあるその理論的根拠を示してくれます。
 以下に概要を紹介します。

2 太る仕組み
 人間はなぜ太るのか。
 本書が注目するのは「インスリン」と「インスリン抵抗性」という要因です。
 体内の血糖値が上がったりするとインスリンが放出されるのは学校で習ったと思います。インスリンが放出されると,体内のグルコースをグリコーゲンに変換して肝臓に蓄えられることになり,その限界を超えると,今度は脂肪に蓄えていくことになります。要するに,インスリンがたくさん分泌されると,脂肪がたくさん増える関係にあるということです。
 これに加えて「インスリン抵抗性」という概念がポイントになります。これは,要するに体がインスリンが分泌されている状態に慣れてくると,グルコースを肝臓に取り入れるのに必要なインスリンの量が増えてしまうようになります。インスリン抵抗性が高まると,インスリンをたくさん分泌するようになってしまうということです。
 このように,インスリン抵抗性が高い状態になると,インスリンがたくさん分泌されるようになり,脂肪がたくさん蓄えられるようになっていくということです。
 そして,インスリン抵抗性が高い状態が維持されてしまうと,それがその人の体の通常の状態ということになり,身体がそれを「基準」にしてしまうようになります。この「基準」を維持しようとするために,一度太った体は痩せにくいわけです。

3 痩せる方法
 以上からすると,インスリンの分泌量を減らし,インスリン抵抗性を下げることで,その「基準」を下げれば,身体は痩せていくことになります。
 本書で進められているのは
① 「添加物」の摂取を控える
② 「精製された穀物」の摂取量を減らす
③ 「たんぱく質」の摂取量を減らす
④ 「いい脂肪」の摂取量を増やす
⑤ 「食物繊維と酢」の摂取量を増やす
 という食事の内容についての改善と,「ファスティング」,つまりは食事回数についての改善です。
 各要素についてもそれぞれ理論的な根拠を示して解説がされています。ここも本書の非常に面白いところですが,あまりに長くなるので割愛します。

4 最後に
 個人的に本書を読んで一番面白かったのは,よく言われているような基礎代謝量を前提に,摂取カロリーを消費カロリー以下にすれば痩せるという考え方が間違っている点です。人間は摂取カロリーが下がれば,当然消費カロリーを下げるように身体が調節するため,摂取カロリーを下げれば,消費カロリーも自然と下がる,という実験が示されています。巷で言われている言説があてにならないということをよく示しているように思います。
 どんなダイエット方法を実践するにせよ,人間の身体が太る仕組みを理解していれば,痩せる方法とその理屈も分かるし,太らないようにするにはどうすれば良いかも分かるようになります。ダイエットに関する本とはいえ,科学的な根拠を示してくれるものであり,どのような問題についても根本的な仕組みを理解しておくということは,応用の幅が広がり,有用であるということを示しているように思います。
 
 

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