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小説

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習作の小説. 短編または掌編
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『スナイパーの意外な使い方』

「本当に無かったの?」 インドの女性首相・ニシャは秘書に尋ねた。 「申し訳ありません。不注意で在庫を切らしておりました」 「今すぐ買って来て!」 「小間使いは既に出しましたが、もう時間が……」 ニシャは眉間に皺を寄せたが、明晰な頭脳ですぐに妙案を閃く。 「護衛隊にスナイパーがいたわね」 「はい、おります。それがいかがなさいましたか」 「すぐに彼を呼んで。頼みごとがあるの」 定刻になり、ニシャは慎重な動きで演壇に立った。三万の民衆が彼女に注目している。ニシャは緊張しながら演説

『顔自動販売機』

「ユキちゃんは愛嬌があって良いよね。いっつも笑顔だし、ウィンクも連発するし……。クラスの男の子、みーんなユキちゃんのことが好きだと思うよ?」 「モテたいんならヒナちゃんも笑えば良いじゃないの」 「無理だよ! 私の家、ユキちゃんみたいにお金持ちじゃないもん」 人に好かれるためには、かわいいお洋服を買わなければならない。新しいコスメを買わなければならない。そして何より、好ましい表情を買わねばならない。表情のストックを切らしてしまうと、たちまち好感を得ることは難しくなる。 「愛