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環境問題を都市から解決。フィンランドのNGO"Dodo"に学ぶ、創造的なアクティビズム

今日は、私がフィンランド滞在中にアアルト大学外の活動としてよく参加していた、フィンランドの環境NGO “Dodo(ドードー)”の取り組みについてご紹介します。


1. フィンランドの環境 NGO "Dodo"とは?

ドードーは、「環境問題は都市で解決する」ことをモットーに掲げ、クリエイティブに環境問題に取り組む NGO です。温室を含む都市農園や都市養蜂、コミュニティディナー、収穫祭などのイベントやワークショップ等、環境や社会のサステナビリティに関わる数多くの活動を行っています。

ドードーのオフィス兼都市ガーデンは、ヘルシンキのPasila(パシラ)駅近くのターンテーブル(旧鉄道車両基地、転車台​​)という歴史的な鉄道の旧停車場にあります。

ターンテーブル上に温室が立っている

もともとは、線路と線路の間の細い土地で木箱を設置し野菜作りをはじめるというゲリラ活動からスタート。その様子は、こちらの動画でご覧いただけます。

ターンテーブルは、フィンランド交通インフラ庁が管理しています。ドードーのゲリラ農園やその他の活動が周知され、2012年には正式にターンテーブルの契約を開始しました。​​

2. 廃棄食料をみんなで料理して食べる Urban Dinner(アーバンディナー)

年に一度の収穫を祝う HarFest(ハーフェスト)や自転車や徒歩で街中の食べられる食物を採取する Foraging Tour(フォレジングツアー)、リペアカフェなど、さまざまな活動があるなかで、私がよく参加していた、Urban Dinner(アーバンディナー)の活動についてお話ししたいと思います。

線路のすぐ横で都市養蜂

アーバンディナーとは、ドードーのキッチンで隔週火曜日に開催される廃棄食品で作るコミュニティディナーのことです。2021年にはオウル、タンペレ、トゥルクなどヘルシンキ以外の都市でもスタートしているようです。

ディナーの主な食材として、近隣のスーパーマーケットから廃棄されてしまう食品を受け取ります。夏から秋にかけての収穫期には、自分たちで育てている都市ガーデンの野菜やハーブなどの収穫物も活用します。ディナーの後には集まった人たちとともにワークショップやディスカッションの時間があります。

ターンテーブルを活用した野菜づくり

寄付される食料はその時々によって違いますが、主にパン類、野菜、乳製品、肉など多岐にわたります。アーバンディナーでは、その日手に入った食料から即興でメニューを考えます。ドードーのキッチンに常備されている乾物やスパイスなどで味付けをし、さまざまな料理を出身地が異なる参加者で協力して作っていきます。

参加者の多い夏季のキッチン

ディナーに参加する人数は冬季は大体5人くらい、夏季はさらに多くなります。作り終えたディナーは、冬季は室内、夏季は温室の中で食べます。

夏季は温室の中で食べる
楽しく飾り付け

初めての人でも、やさしく受け入れてもらえるので、楽しく会話をしながら料理をすることができます。一時間で何品か作り、盛り付けをし、ディナーの完成です。デザートを作る時もあります。その時手に入る食品と参加する人によって、毎回まったく違うものができあがるのも楽しみの一つです。

私も一度フランスギクの花を天ぷらにして出したところ、「花って食べられるの!?」と驚かれました。(※実際に食べるかどうかは、ご自身の判断です。)

フランスギクの花の天ぷら

みんなのお腹が満たされた頃、NGO/NPO/個人の活動紹介やビーガン料理教室、フィルムスクリーニングなど、社会・環境に関わるトピックについてシェアする時間があります。私も、自分が一年間行っていた "EcoEmotional Footprints"というプロジェクトの中から、Foraged Colours(自分の足元にある「色」を見つける)の活動についてお話をさせていただく機会がありました。

ドードーのアーバンディナーに参加することで、大学以外の場所で友人ができ、フィンランドの文化や環境について知ることができました。

ちなみにドードー以外にも、廃棄食品に関するヘルシンキ市の取り組みとして Stadin Safka(スタディン・サフカ)というプログラムがあります。

スタディン・サフカは、ヘルシンキ市とヘルシンキ教区協会が共同で行っている食料援助の活動です。商店や食品業界から寄付された(さもなければ廃棄されてしまう)食品を、ヘルシンキを拠点とする食料援助事業者に提供し、事業者はさまざまな食事や配給の場で市民に提供します。こちらはフィンランド全国で行われている食料援助事業者の地図です。


3. 創造的なアクティビズムのコツとは?

ドードーの活動は、環境(Environment)というテーマに対して、アクティビズム(Activism)とデザイン・アート(Design / Art)の要素がうまくかけ合わさってるなと感じます。私が考えるポイントは3つです。

・身体を動かす

多くのイベントやワークショップは身体を動かす活動が伴うため、純粋に楽しいです。市内の公園を歩きながら(時には自転車に乗って)食べられる野草やキノコを採取したり、スクリーンプリントを体験したり、刺繍を習ったりと、まず身体で体験することができます。体感があるからこそ、自然の大切さがストンと頭に入ってくるのだと思います。

・アイデアを提案し実験できる余白がある

ドードーのイベントやワークショップの雰囲気は、良い意味できちっとしすぎず、参加者やボランティアがアイデアを提案したり一緒に作り上げたりする余白があるところが好きです。個人的にも、イベントやワークショップを開催するときの企画者 / 参加者の壁の高さに関して考えることが多いので、ドードーのもつカジュアルな雰囲気はとても参考になります。

・ビジュアルアイデンティティの統一

一見「余白」とは反対ですが、WebサイトやSNSに現れてくるドードーの NGO としてのビジュアルアイデンティティは統一されています。「環境問題」や「アクティビズム」と聞くと難しく考えてしまう人もいるかもしれませんが、ドードーの黄色と黒を基調としたパキッとしたデザインはかっこよく、彼らの活動をうまくサポートしてくれているのではないかと思います。ちなみに、ドードーは絶滅してしまった鳥類の名前ですが、英語で「まぬけ」という意味もあります。

環境(Environment)xアクティビズム(Activism)xデザイン・アート(Design / Art)がうまくかけ合わさった活動。バランスよく楽しくできる活動を、日本でも展開できないかと検討中です。

※特記がない限り、写真は筆者が撮影

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