見出し画像

大切な場所にはいい音楽が集まる

名門ジャズクラブ、新宿Pitinn50周年記念コンサートの映像を見に行ってきました。

渡辺貞夫さん、山下洋輔さんや日野皓正さんという日本のトッププレイヤーの出演。Blanky Jet Cityのドラマー中村達也さん、吉田美奈子さんなど普段ジャズとはちがうキーワードで語られる人達の出演も、作曲者である大友良英さんによる「あまちゃん」のテーマ曲、と見どころ盛り沢山。この映像は、2015年に行われたコンサートのもので、新宿ピットインは今年で53年も続いているそうです。これスゴイことみたいでこんなコメントがあまりした

ホールなどの公共施設は別にして、音楽興行を提供する業態の店舗の寿命は決して長いとは言えない。世界的に見てもニューヨークの名門Village Vanguard(1935年オープン)が異例と言えるほどで、その他のポピュラー音楽史を彩った数々のライブハウスがいずれも営業を続けられていない例はあえて挙げるまでもないだろう。そのVillage Vanguardでさえ、オーナーすなわち経営母体の変遷は免れていない。ところが新宿PIT INNは、同一オーナーによる継続的な経営で50周年を迎えた。これこそ“快挙”ならぬ“怪挙”と呼べるものなのだ。 新宿 ジャズ・フェスティバル 2015 | ARBAN より 

ライブハウス(ハコ)を続けるのはむずかしいんですね。
どれくらい続いているの? 取り急ぎですがアメリカの有名ジャズクラブはどのくらい続いているか調べてみたました。
※急いで拾った情報なので間違っているかもしれませんがご容赦下さい

サラ・ヴォーン(Sarah Vaugha)やアニタ・オデイ(Anita O'Day)で有名な、ミスター・ケリーズ(Mister Kelly's)

エリック・ドルフィーの有名な作品が録音されたファイブ・スポット(Five Spot Cafe)

マイルス・デイビスで有名なブラック・ホーク(Black Hawk)

ライブ録音が名盤になっているようなクラブも確かにそんなに長く続いていませんでした。あと、70年代に閉店しているところが多い、70年代中ごろはジャズの中の1カテゴリーとしてフュージョンが出てきてプレイヤーもファンもそっちに拡がった頃で、そんな時代の変化についていくことができなかったのでは、と推測されます。ジャズの本場アメリカの有名クラブでも営業を続けることは難しいのですから、ピットイン53周年というのはやっぱり“怪挙”なんですね。

(参考)「Bill Evans - Waltz For Debby」で有名なヴィレッジ・ヴァンガード(Village Vanguard)は今も存続していて、1935年創業で1957年ジャズ専門になったとありましたのでジャズのハコとして今年61年の歴史になるようです。

(参考)他のジャンル、ロックはどうか?東京の有名ライブハウス2店ですが
「新宿ロフト」は今年で42年、「Shibuya EggMan」は37年でした。

どうしてピットインは長く続けられているか、考えてみたくなったので勝手に書いてみます。

先日のイベントの中でPit Innオ−ナー佐藤良武さんがからこんなエピソード紹介がありました(聞き覚えです、発言そのままではないことご容赦ください)

来日時(1966年)に麻薬不法所持で嫌疑を受け日本に足止めになったエルビン・ジョーンズに(裁判費用を捻出するために)ピットインでライブしていただいたことがきっかけで、その後、定期的に出演いただきました。

モダンジャズドラムの先駆者の一人、ジョン・コルトレーン・カルテットの不動のメンバーだったElvin Jonesに出演し続けてもらえる場所をつくったというのは、ローリング・ストーンズのキース・リチャーズに出演してもらえるロック・クラブを日本に作るくらいスゴいことです。
50周年記念コンサートには、先ほど挙げた貞夫さんなど日本を代表するアーティストの他にも 映画音楽も多数手掛ける菊地成孔さん、新世代天才ドラマーと言われる石若駿さんなど、幅広い日本のスゴ腕ミュージシャンが出演されてました。このように、いい人が出演し続けている、というのはピットインがミュージシャンにとって”いい場所”だと考えられます

名古屋に「Tokuzo」(1998~)というライブハウスがあります。ジャズ限定ではありませんので、ロック、ソウルのミュージシャンが沢山出演されるのですが、どのライブもいい音楽ばかり、というハコです。そのTokuzoにについて、「あまちゃん」テーマ曲で有名なギタリスト大友良英さんが語っています

ライブを頼まれたら絶対に断りたくない店というのが、全世界に6店だけあって、もちろんTOKUZOはその中の一つ。ただ店がいいんじゃなくてそこで働いてる人達の顔がいい。ライブだけじゃなく打ち上げがそのまま出来るのもいい。楽屋にBB KINGがES350を弾いてる写真があるのもいい。

僕自身がTokuzoにはずーっとお世話になっていることもあり、大友さんの言葉には「そのとおり!」と大きくうなずくことができました。ここのハウスドラムセットは村上“ポンタ”秀一さんが開店祝いに寄贈されたものだったり、Tokuzoもアーティストにとって”いい場所”であることでいつもいい音楽を提供しつづけられている、と考えらえます。
(オーナーの森田さんは1971年-91年にあったOpneHouseの店長だったことからするとTokuzoも長い歴史のあるハコです。)

次も名古屋のライブハウスですが、1977年から続く老舗E.L.L(Electric Lady Land)、BOOWYなども出演していたロックのハコです。ここもミュージシャンとのつながりを大切にし、ミュージシャンにとっていつもいい場所としてあり続けているようで、時々こういう画像をミュージシャンがあげていらっしゃいます。

最近は出演できなかった人が久しぶりにELLに来て楽屋に入ろうとすると「おかえりなさい」メッセージが出迎えてくれるそうです。ハコに大事に思ってもらっていると感じることでそこはミュージシャンにとって”大切な場所”に。
元BOφWYの布袋さんのブログにもこんなコメントが

E.L.L.にはBOφWYがまだまだ全然売れない頃から本当にお世話になった思い出の場所。社長のシゲさんが「お前達は絶対成功する!」と断言し、惜しみないご協力を頂いたのも20数年前。こうして久しぶりにお会いしても、彼の不屈のロック魂は未だ健在で、ホンネで語れる嬉しい先輩。いつもに増して気合いが入りました!

”大切な場所”だからいい演奏をしようといつにも増して気合いが入る。そうなるとお客さんは「ELLで聴きたい!」「Tokuzoで聴きたい」「Pit Innで聴きたい」と思い足を運んでくれる。いい出演者がいて、お客さんがたくさん来てくれればそこは続いていきますよね。

たくさんのアーティストに”大切な場所”と思ってもらえる

実はこれが大変なことで、それをやり遂げられるのが”怪挙”、その結果が長い歴史になるのかもしれない。

これを聴き手側からみると、
TwitterやInstagram、ブログなど、アーティストの気持ちが知れるツール(SNSサービス)から、大切にされていそうな場所を発見したら行ってみると、いい音楽に出会える、ということになるのかもしれません。





この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?