見出し画像

大規模怪異消滅後初日1~6

同性愛が苦手な方はご遠慮ください。 #BL #LoveIsLove   #LGBTQIA
#R15  くらいで大丈夫でしょうか???

暗夜迷宮のご案内


暗夜迷宮前日譚のご案内


前話のご案内

話中の万禮一家は、 メンバーシップ「夢了の皿」会員の万禮様のオリジナル・キャラクターで 設定その他は会員様御本人と話し合っております。
711号室出演者≒メンバーシップ会員様は常時募集中です♡
万禮様の偶さか日記も併せてお読みいただくと解像度とエモさが跳満です。


主な登場人物


左から
万禮ばんらい久幸ひさゆき、ヒー、始祖:かど凌司りゅうしのバンパイアにおける直系始祖で伴侶。
かど凌司りゅうし、りゅーし:万禮ばんらい久幸ひさゆきのバンパイアにおける直系係累で伴侶。
土果とか久幸ひさゆき凌司りゅうし二人の伴侶犬。
恵玄よしはる:凌司の後天性加護精霊。トゥから贈られたカーボナードの精霊。
上段左から
ラン:久幸ひさゆきの友人。凌司りゅうしの恩人。
トゥ、師匠:ランの伴侶小人。久幸ひさゆきの友人。凌司りゅうしの魔術の師。
泰市たいち:ランとトゥの伴侶猫。
下段左から
サンタ:ねこのぬいぐるみだがトゥの魔法で限定的に猫になる。
スュクセ、すゅー:トゥの特別な遣い魔。個性と向学心がある。
左から絵理香えりか:凌司の元妻。
朗正あきまさ:凌司と絵理香の子。絵理香と同居。
華代かよ:凌司と絵理香の子。凌司の母と同居?


本編

久幸「おはようさん」

常時通りの時間に自然覚醒し、
常時通り目を閉じたまま
関節を伸ばしたら
異なる体温に触れたので
瞼を開けると、
上機嫌な微笑みを湛えた
久幸さんが視界を満たした。
ああ、そうだった……
昨夜は一緒に寝たのだった。
昨夜の出来事がはっきりと思い出され
一気に喉が干上がり、
枕元のピッチャーへ手を伸ばした。
白湯を常時より五割増しで呷る。

私「おはよう……
何時からそうしてたの?」

久幸「2分くらい前? 
凌司君が寝落ちて
俺も直ぐ寝落ちたから
俺は普通に眠れたらしいよ」

彼も白湯を呷ると
私の額へ唇を落とした。
また体温が急上昇する。
くそぅ……彼の寄越す
特別な相手への親密さが
何時からか夢見ていたより
何倍も甘く濃く、
悦びに三半規管が揺れる。

私「そ、それは良かった」

久幸「凌司君の寝相って
今日のがデフォ?」

私「たぶんそうだよ。
今日はとても眠れたし、
寝相を揶揄からかわれた事は無いし」

久幸「なら、普段は
一緒に寝て良いデスカー?」

私の鼻先を
何時か見た動画の仔犬のように
彼は甘噛しながら
ねだるようにおどけた。
身長182センチの私の
鼻を齧ろうと思いつく人など
彼が最初で最後だろう。

私「う……齧らない齧らない。
ぼくも君なら大丈夫そうだから
嬉しいよ。
どっちの寝室にする?」

寝室と浴室の間の
広い洗面室で並んで顔を剃る。
新鮮な光景に指先が震える。

久幸「凌司君も
まあまあ神経質なんだっけ?」

私「まあまあね。
基本的に眠りが浅いみたいで
イビキ歯ぎしりは無理だし、
子どもみたいに
寝返りが激しいのも無理」

久幸「元妻エリカちゃんとはどうしてた?」

私「別室だよ」

久幸「部屋まで?!」

私「(絵理香が)大病院の看護職で
生活時間帯が一定してなかったからね。
交際当時から絵理香からそう・・したいと」

久幸「へぇえええ! 意外だぜ。
四六時中ベッタベタだったんだろうと
思ってたよ」

私「そうだったらああ・・
ならなかったのかもしれないね。
言うても詮無いけど」

久幸「そん時の最善を選択したんだろ。
気にすんな。
寝室は暫く両方を試してみようぜ。
さ、飯の支度と
ラントゥちゃんに報告する心の準備だ」

トゥ「おはようございます。
だいだらぼっち討伐作戦
お疲れ様でした!」

ラン「おはよう! 
異界消滅おめでとう!」

私「おはようございます。
ありがとうございます」

久幸「おはよう。ありがとうさん。
ランちゃんトゥちゃん、
二人に報告したい事があります」

ラン「なぁに?」

久幸「昨夜俺と凌司君は
バンパイア式の伴侶の
契りを交わしました!」

ラン「契りって結婚でしょ? 
すごーい! おめでとう! 
教えてくれてありがとう!」

トゥ「おめでとうございます! 
二人の都合の良い時に、
異界消滅のお祝いと
結婚のお祝いを
盛大に開かせてください!」

久幸「アリガトウアリガトウ。
都合は暫く良い筈だよ」

トゥ「此方では結婚式の直後に
ハネムーンという旅行をすると
読みましたけど、
大丈夫なんですか?」

久幸「そうか、その手があったか!」

私「ありがとうございます……
ランさん、すごいとは?」

ラン「だって永遠なんでしょ?! 
バンパイアは滅多に死なないって
読んだよ」

私「ああ、確かにそうらしいですね。
そうか、そうですよねぇ……
これは確かに凄い事なんですよね……」

ラン「ムフフフ、凌司さんは
久幸さんの何処が好き?」

私「うーん……面倒看が良くて
窮地にも安定して頼れて、
酒の呑み方は
控えめに言って最高です……ね」

久幸「そんだけかよ?! 容姿ナリは?!」

私「ファッ?! えぇと、声も好きだよ。
よ、容姿……目、睫毛と肌? 
ああ、あと歯。
ギザ歯もツボだけれど右の八重歯、
無いか欠けてるかしてるよね? 
凄く興味をそそられてるよ」

久幸「ウッワ、
凄ぇ意外なトコ突いてきやがった……」

ラン「えー?! 
久幸さん、
お正月は歯キレイだったよね?」

久幸「ァ……ッ」

ラン「ア……言っちゃ駄目なやつだった?
……御免……」

久幸「アー……ダイジョウブ大丈夫。
親しけりゃ何時かはバレる事だからな。
……凌司君を同族化しちまってから
抜きマシター」

ラン・トゥ・凌司「「「どうして!」」」

久幸「直系を増やさない誓いと
次に吸血する時負担を減らせるようにでぇす」

私「ばかか!? 私なんかの為に……!」

久幸「凌司テメェ、
『なんか』言うなっつってんだろ!」

……『ばか』は怒らないのか。
否、そうじゃない。

私「そういう処だよ、久幸さん……」

久幸「ナニガ?!」

私は思わず恨めしい気持ちを溜め息に乗せた。

私「君に惹かれた処」

久幸「どれだよ?!」

私「ゼンブ全部。
はい、この話は此処まで!
ランさん、師匠、
今日は何処か行きたい処はありませんか?」

ラン「ヒザクラの町を歩きたいなぁ」

トゥ「ないものはないうきうきスーパーにも
もう一度行きたいです」

久幸「俺もそこ行ってみてぇわ。行こう。
ラントゥちゃんは何時に出られる?」

ラン「10時で良い、おちび?」

トゥ「そうですね。
10時に真代さんの前でお願いします」

久幸「了解。んじゃ後で」

まさか1時間たっぷり
仕置きを喰らおうとは思いもしなかった。

皿洗いが済むと
彼は悪巧みに浮かれた表情で
私の襟首を掴んで地下へ誘なった。

久幸「凌司君は下に尾いてくるように。
一限目はミストサウナで身体を温めながら
慣らし吸血でぇす」

私「本気で?」

久幸「本気で。
1時間で平常営業に戻る
ぶっつけ本番も兼ねてな」

私「夜やるものだとばかり……。
特に戻る訓練は最初からは……」

タイムリミットにひるんだ私は
更衣室で彼の気が変わることを願いながら
微々たる抵抗を試みた。

久幸「事後平常営業に戻る方が難しくて、
難しい事はプレッシャーがある方が
体得し易いから延期は却下! でぇす」

くそぅ……サウナ室に入ると
不本意ながら身も心も
快適な湿度と温度に緊張を解され、
次いで
滑らかな肌から立ち昇り
室内を次第にゆき渡る
久幸さんの香気に包まれた。

久幸「俺の左の八重歯と
凌司君のどっちかの八重歯
指で触れてみ?」

彼の艶々のエナメル質が
保たれている歯に触れると、
先程の話を思い出した。
こんなにきれいに維持してきた歯を……!

久幸「ドウドウ、余計な事考えない。
シンクロしてみ、俺に。つか俺の歯に」

単純動作のシンクロは
幾度か戦闘中に活用したが、
不随意物のシンクロなど
どうすれば良いのだ……

私「ゥワッ!」

不意に右の人差し指の触れていたものが
ズルリと下へ伸び、
『こうなれば』と思った途端に
左指の中のものもズルリと伸びた。

久幸「素直で良いねぇ」

私は彼と私の八重歯が
牙と化している事を認めて
後の事も忘れて
子どものようにはしゃいでしまった。
鋭い切先を形成している己が牙に
つい己が指紋を
引っ掛けたり押し付けたりして
強度を試してしまった。
サクッ。良く研いだ刃を
トマトの皮へ沈めた時の
あの小気味良い感触。

あ、やらかした。

視界に入れた指先から
遅れてプクゥと赤い液体が膨らんだ。
その指の根を久幸さんが強く掴んで
赤い私の体液を極優しく吸い取り、
厳しい口調で怒鳴った。

久幸「凌司テメェ! 結構あほだな?! 
責任取れよ?!」

私「済まない……ッ!」

久幸「覚えろよ、
俺達限定で効く自制心強化呪だ。
リピートアフターミー。
『いまだ日輪堕つる事無く、
いまだ大地裂くる事無く、
いまだ海波立つる事無く……
永久とわはてはいまだ遠し』」

私「『いまだ日輪堕つる事無く、
いまだ大地裂くる事無く、
いまだ海波立つる事無く……
永久の果はいまだ遠し』」

久幸「一心称名と変わらねぇけど、
体質的にコッチのが効く。
凌司君の切先はデスネェ、
自分の指じゃなくて
俺の動脈に突き立てんデスヨ。
これから一生
風俗も禁止でぇす。
守れマスカー?」

答える暇は無く、
私の襟首を掴んだ力強い腕に
彼の頸動脈へ
私の二つの牙を導かれ
有無を言わさず
突き立てさせられた。
濃く甘く蠱惑的な芳香が
噴き出して私の口腔を衝いた。
ああ、味蕾は
舌のままのようだよ朗正……。
彼の体温より温かい
新鮮な華やかな香味の動脈血を
堪能して幾度か嚥下した頃、
供給が止んだ。
舌で泉を探るが、
湧出口は既に塞がれていた。

久幸「本日は此処まで!
……が、我慢できそうか?」

私「なんとか……してみせるよ。
ありがとう」

久幸「んじゃ、
ちょっと返してもらって……
さっきのお仕置きな」

私「ファッ?!」

彼は私の口唇を吸い
滑り込ませた舌を口腔へ這わせ
何もかもを開かせるような
優しく淫靡な愛撫を寄越した。
耳介を甘噛され
淫らな溜め息が漏れる。

久幸「愛してる」

初めての告白が
吐息と変わらない程の囁きで齎され
私の腰が砕けた。

真に鋭利な切先は真っ直ぐ下ろせば
皮膚ごときなら
痛みも衝撃も与えないのだろう。
啜られて初めて
体液を吸われているのだと気付いた。
ああ、全てを差し出しても
彼が欲しい……。

久幸「やっべ…………
死ねる位うめぇわ。
いまだ日輪堕つる事無く、
いまだ大地裂くる事無く、
いまだ海波立つる事無く、
永久の果はいまだ遠し。
いまだ日輪堕つる事無く、
いまだ大地裂くる事無く、
いまだ海波立つる事無く、
永久の果はいまだ遠し。
いまだ日輪堕つる事無く、
いまだ大地裂くる事無く、
いまだ海波立つる事無く、
永久の果はいまだ遠し……
ヤバかった!
凌司君…………トンでるか。
駄目でぇす」

しどけなく
ただ彼の背に縋りつくだけの
私の舌を彼は強烈な強さで
きつく吸い上げて
私の正気を引き戻すと
あの悪巧みの笑みを満面に湛えた。

久幸「お仕置きタイム突入でぇす」

彼は一旦止めていたミストを
最少量で開放すると、
己へ正面向けて
彼の右膝の上へ私を跨がらせた。
彼の髪や長い睫毛に接地した霧が
数粒重なったのちに
一筋の雨と化して
輝きを増して流れ落ちる様に
意識を縫い留めて、
私は現実逃避した。

192センチだという彼と目線が重なるのは
彼に化粧を施した彼の誕生日エイプリルフール以来で
あの日には音も無く揺れた程度だった
私の中の鈴がけたたましく鳴り響き、
私は狼狽し切っていたのだ。
できる限り彼の香気を避けて、
細くゆっくり
できる限り長く息を吸い続けて、
冷静を己の内へ呼び求め続ける。

久幸「凌司君、俺の事どう思ってる?」

ああ、彼も同じなのだ。
やっと私は冷静を取り戻した。
真っ直ぐ私を見据える彼の
微かに震えている瞳と
初めて聞く
彼の息を詰めた上擦った声に
愛おしさが噴出した。

私「あ、ア……愛してる」

久幸「何処を?」

私「ぜ、ぜんぶ……」

久幸「ハイ、不合格ー!」

彼は不機嫌と上機嫌が
複雑に混在する
戦闘時のような笑顔で
私の鎖骨を一咬みした。
既に牙は八重歯に戻っていたが、
鋸刃のような前歯がガツリと
上下から鎖骨を挟み打ち
彼の唾液を私の皮下へ射ち込んだ。
何時からか私の毒物中和細胞が
毒と認識しなくなった彼の体液が
遠慮の欠片もなく
欲情の蔓を私の内で縦横無尽に伸ばす。
私の臍下から力が抜け、
口からは情けない声が漏れ、
私は目の前の胸板に
意図せず撓垂れてしまった。

久幸「ンー、
このまま蜜月に籠もりてぇ位可愛いので
十から二十に満点を引き上げマース。
二十個、
凌司君が好きな処を言ってクダサーイ」

私「は? 普通逆じゃない?」

久幸「ギャハハハ、
ヨシヨシ、冷静になったな」

私の中に長く取り憑いていた
溺れてしまう事に対する恐れが霧散する。
私が己が想いに彼に彼の愛に彼の身体に
耽溺し切ってしまったとしても
この男は最後の一歩分の
冷静の手綱を手放さないだろう。
彼は誰の事も
彼のイネイブラーとする事は無いだろう。

私「ああ、そういう処だよ……
君は私の恐れを吹き飛ばしてくれる」

久幸「へぇ、1点付与。ご褒美な」

彼は抱き寄せた私の耳元に囁くと
私の耳朶を甘噛みした後に
唇へ口づけた。
期待に半開いた私の口の中へ
挿し込まれたのは舌ではなく
いとも優し気な声音の問だった。

久幸「今は何が怖かった?」

私「君に溺れてしまう事」

久幸「凌司君の負けず嫌い発動
って訳じゃなさそうだな?」

私「私は……私が耽溺した泉を
底無し沼に変えてしまうらしくてね」

久幸「ふぅん? 
此処はそもそも泉じゃねぇし、
この沼のヌシは沈まねぇし」

私「うん、大体そういう事」

久幸「任せとけよ。次は?」

私「私が不安な時には
絶対に声音を変えない処」

久幸「ヨシ、5点付与。
ソレに関しては結構気を付けてきたからな。
今報われマシター」

彼は少年のように喜びを露わにし
全身で私を強く抱き締めた。
深い口づけと共に
彼の十指の腹が肋骨の脇を
潜るように強く圧し進み、
びくりと私の臀部が跳ね上がった。

久幸「次は?」

彼は私の肉体の反応を
心の底から楽しみながらも
それ以上の快楽を与えようとはせずに
極軽い口づけだけを其処此処に撒き散らした。
懇願しそうな吐息が私の口から漏れる。

私「ッ……身長……?」

久幸「へぇ、1点付与。
ま、そんだけありゃ
更にデカいヤツは日本人には少ないよな」

私「うん、
頭を触られる事も無かったし
鼻を齧られる事も無かったし」

久幸「ブフッ、へぇ、特別に2点付与。
凌司君が床屋行かねぇのは
やっぱエリカちゃんの悋気除け?」

私「前はね。
今は単なる出不精と人見知りだよ」

久幸「出不精はあるよな、凌司君。
でも人見知りって意味解ってるか?」

私「私は本来普通の出会い方をしたら
此処まで話すのに二年は掛かってると思うよ」

久幸「そりゃ確かに人見知りだな。
次は?」

二人の体表から立ち昇る香気が
交わり混ざる度に
私の口から色を増した吐息が漏れる。
彼の唾液を受け入れた処から
理性が蝕まれているが、
彼の青藍の瞳の中の
紅緋の虹彩が未だ暗い事に気付いて、
私の中で妙な負けん気が頭をもたげた。

私「自分の魅せ方を良く心得てるのに
嫌味が無くて何時も惚れ惚れするよ。
役者として男として見習いたい限りだ」

久幸「宜しい、1点付与。
ま、半分以上は
凌司君の視界に居る間だけの
意気地だけどな! ギャハハハハハ!」

私「そうなの?」

久幸「そりゃそうだよ。
俺の目に映る凌司君こそが
そういう伊達男だからな。
どんなに疲れてても傷付いてても
絶対に類人猿みてぇな
歩き方しねぇトコにも惚れてるもん。
並び立つに相応しく在りてぇじゃん」

彼の不意打ちの告白に私は絶句した。
何と平然と打ち明けるのだろう。
ああ、二百年以上も
私より多く経験を積んでいるこのひとに
意地を張る必要など無いのだ。
自ら縛めていた意地の縄から解き放たれ
私の両肩と眉間から力が抜けた。

私「君の心遣いが最高に粋で
毎回惚れ直したよ」

久幸「1点付与。何時?」

私「……地下の厨房を作った時、
父が死んで墓も無くなっていた時……、
ランさんの靴を探した時……、
私が風邪を引いた時と、
騒音に苦しんだ時と、
記憶喪失で入院した時」

久幸「6点付与。
アーァ! 
お仕置きタイムじゃなけりゃなぁ!」

私「なけりゃどうだって言うの?」

久幸「ずぶずぶに快楽の沼底に沈めてやった」

私「ッ……今日は遠慮するよ。
うきうきマートが控えてる、でしょ……ッ」

戦闘終了時の彼の瞳に私が盗み見た
青藍の虹彩の紅緋の旭光が
色濃くギラリと光る様を目の当たりにし、
その輝きで真っ直ぐに射抜かれ、
私の淫猥な望みが噴き出す。
かつて怪異に向けていたのとは全く異なる、
正直すぎる程の劣情を溢れさせた
彼の眼差しに
再び私の腰が砕けた。
ああ、その瞳がその眼差しが欲しかった……!
今じゃなければ!

私「その瞳と眼差し……
全てを捧げたくなるよ」

久幸「2点付与。ラス1は?」

私「広背筋って言うんだっけ? 
君で初めて縋りついて歯を立てたくなったよ」

久幸「満点到達。
最後のは滅茶苦茶意外だったからご褒美やるな」

私「ご褒美……? 
生殺し、でしょ……ッ」

彼の指の腹が唇が舌が
局所を迂回して
力強く這い回り揉み拉いた。
反して時折突き立てられる爪や歯は
これ以上無い程に優しく甘く、
巧妙な抑揚に私の劣情は
極限まで煽り立てられていた。
疾うに私の身体の勃つ処は
全て屹立している。
私は息も絶え絶えに抗議を試みたが
二の句は続かなかった。

久幸「褒美を今やるとは言ってねぇし、
仕置きタイムはまだ終わってねぇし?」

意地の悪い言葉とは裏腹な
鼓膜に口付けるような甘い囁きと共に
頬から鎖骨へ輪郭を削るようになぞられ、
私の背は仰け反り、
口からは嬌声が溢れた。
何故仕置かれる羽目になったのか……
遠避かる意識の中で疑問符が渦巻いた。

痺れが残る程に強く舌を吸い上げられ
痛みで意識を取り戻すと、
彼が呆れと悦びの入り交じる
複雑な微笑を湛えて
私を見下ろしていた。
私は知らぬ間に衣類を着替えさせられて
彼の清潔な寝台に横たえられていた。

久幸「……凌司君、快楽耐性低過ぎ」

私「面倒を掛けて済まない……」

久幸「解ってねぇな? 
甘やかし甲斐があるつってんだよ」

私「甘やかし? 
仕置きの間違いでは?」

久幸「愛し甲斐があるつってんだよぅ」

私「そうか……プッ、クククク」

久幸「お解りいただけたようで重畳重畳。
…………後悔してるか?」

私「何を?」

久幸「あの夜あの河原で
あの台本を読んだ事」

私「全然。
昏睡中の多過ぎる程の点滴の指示から
君が最善を尽くし続けてくれたお蔭で
私はバンパイアになったデメリットを
いまだ一つも実感していないからね。
離婚から暫く経って
タイミングも良かったし、
君は第一印象とかなり異なる好漢だし、
……寧ろ褒めてやりたいよ、
あの日の私を」

久幸「第一印象は?」

私「言わないよ。
また仕置きフラグを立てそうだもの」

久幸「寧ろ今立てマシター!
凌司君やっぱかなりあほだな?!
ギャハハハハハハ……!」

成る程、今やっとさとった。
彼には称賛は元より
縦令たとえ悪口あっこうであろうとも
秘される事自体が地雷のようだ。
……本当に? 
本当に何を言っても仕置き案件にならないか?
うーーーーむ……実に疑わしいが、
永久とわに等しい付き合いとなるのだから
次回からは包み隠さず話すとしよう。

あーぁ、この悪い笑顔すら愛おしく映るのだから
私の目も困ったものだ。


次話のご案内

絶賛販売中のご案内



noteサークルのご案内


色々ご案内


#ランとトゥと泰市 #日記 #イラスト #小説  
#ファンタジー #一次創作   
#Cmon諭 #嘉又夢了 #環を持つ土塊の星 #711号室 #猫

#暗夜迷宮 #圭凌司 #万禮久幸 #バンパイア  



宜しければサポートの程、お願い申し上げます。 頂戴したサポートは、 闘病生活と創作活動に充てさせていただきます。 スペインはグラナダへの長期取材を夢見ております。