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工藤吉生の短歌【10】2013年10-12月〈20首〉

【第十期】2013年10-12月。64首発表。
結社「塔」で最初の一年を終えて二年目になり、「若葉集」から「作品2」欄へ移る。



〈1〉
長身の黒人ひとり異次元に通じる穴のようにたたずむ


〈2〉
触れたものが黄金になる王様を時おり思いあわれに思う


〈3〉
地下鉄で男のカバンが二度三度オレのケツに触れ憎しみを抱く


〈4〉
菓子パンがパンを失いビニールがベッドの上につくる陰影


〈5〉
店長と喧嘩し辞めた織田さんのロッカーの中の油性マジック


〈6〉
行間に鳴いているのが秋の虫 花火が一つの詩であるとして


〈7〉
眠ってる赤子に青のミニカーを握らせ思い直して奪う


〈8〉
上腕に上腕二頭筋はあり君は言い訳せず生きたまえ


〈9〉
年齢がだんだん重くなってくる 三十三 見つめても減らない


〈10〉
「がんばろう東北」雨のトラックにはねとばされた水避けきれず


〈11〉
ドドギャドン=ボボボラゴスとポロリンチョ・ハーコリャコリャの直接対決!!!


〈12〉
完全な球を目指して寝る猫の耳が少々はみだしている


〈13〉
自転車の横転による自転車の横転によりごっちゃごちゃごちゃ


〈14〉
あらかじめパンの内部に仕込まれたマーガリンまるで心のように


〈15〉
「おい見ろよ、こいつ卒業文集をもらってすぐに切り刻んでる」


〈16〉
糞ひれば力作だったすぐに写メ真横から写メ少し味みる


〈17〉
国滅ぶ 流言飛語の末のすえ真夏見慣れた数字の下で


〈18〉
どう生きてゆきたいのかだ回り終え独楽は再び紐を巻かれる


〈19〉
音楽を背負った人が乗ってきてしばらく経ってしずかに降りた


〈20〉
太陽が泣いてるマークがあるとしてそんな天気にふさわしい風

短歌は以上です。ご覧いただきありがとうございます。
投げ銭を受け付けています。100円です。払っても新しくなにか読めるわけではありませんが、工藤がとてもよろこびます。

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