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工藤吉生の短歌【15】2015年1-3月〈20首〉

【第十五期】2015年1-3月。57首発表。
32ページからなる「工藤吉生短歌集」を作成、印刷する。
歌集の批評会に初めて参加した。




〈1〉
遠足の途中でオレの家が見えそのまま帰っちゃダメなんですか


〈2〉
まっさらな心に石を投げ入れた波紋のひとつ、(ひとつ)、((ひとつ))


〈3〉
宝くじ買いたくないが当たりたいオレの気持ちを知ってる手口


〈4〉
スーパーのBGMの中で聴く叱責、どこをとっても叱責


〈5〉
「監視するやつがいなけりゃ誰だってサボる」と言えば変な空気だ


〈6〉
親指に指紋があると思い出し無性に見たくなり飛び起きる


〈7〉
現実をある一定の角度から揺さぶるさまを犯罪と呼ぶ


〈8〉
「美味しんぼ」第一回で山岡が水三杯を飲み干すところ


〈9〉
座ってはならぬ規則のあるように男がオレを影として立つ


〈10〉
ストローで飲み干した後しばらくはスースースースー吸う男性だ


〈11〉
ありのままのオレはどういう奴なのか笑うと裂けるくちびるの皮


〈12〉
ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」背景の一言も物言わぬ野山よ


〈13〉
自転車に乗ってるオレと目が合ってボール蹴るのをやめた少年


〈14〉
貧乏になりやすい者の特徴に合致ししかも貧乏である


〈15〉
インターネット炎上に湧く匿名のごとき植物、当然のみどり


〈16〉
世の中はいつでも暗く壁に見る神の言葉の文字の真っ白


〈17〉
子供らの踊るテレビの棒立ちのひとりとオレの目が合っている


〈18〉
鳥の群れはカーブしてゆき電気屋ののぼりの四本とも鏡文字


〈19〉
「人それぞれ」なんて言ってはみたもののつぶしつづける口中の泡


〈20〉
人形のサンタが片手に持っているリボンのほどけないプレゼント


短歌は以上です。ご覧いただきありがとうございます。
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