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短編[承認欲求]

短編小説[承認欲求]
※フィクションです。

私の心の歪みは、やがて私自身を怪物にしていくのかな。
誰か私を抱き締めて「大丈夫」と、飽きるまでずっと、ずっと繰り返して欲しい。

なにがきっかけだったか、もう忘れた。

庭にいたカタツムリを見て、食べてみたらどうなるんだろうと思った。
グミみたいで、可愛くて、愛おしかったから口の中に含んでみた。カタツムリは私の舌の上をコロコロと転がり、時々感じる柔らかいグミのような感触が、なんとも気持ち悪くて、面白かった。

このまま飲み込んで体の一部にしてみたくなった。このカタツムリは私の中で消化されて、そしたら私は孤独ではなくなるのかな。

「なにを口の中に入れてるの!バカ!出しなさい!」

母に偶然見つかってしまった。
私は正直に、口からカタツムリをペッと出した。
手のひらに乗せると、母へ差し出した。

「何を考えてるの…あなた、おかしい…」

母はゴミを見るような目で私を見て、頭からつま先までをなぞるようにして睨みつけた。

そのままブツブツ独り言を言って首をかしげながら、母は部屋へと戻って行った。


最高に気持ちが良かった。
興奮で口から虹が出るかと思った。
いつもは私を無視する母が、初めて私を見て怒った。私を見てくれた。

その時、おかしな行動をすれば母は私を見てくれるのだと学習した。これは母だけじゃない、きっと世の中だって同じはず。

あれから30年、大人になればなにかが変わると思った。でも、特に寂しい気持ちは何も消えなかった。

会社で出会ったたいして好きでもない男性と付き合い、それなりの愛情表現をそれなりに受け止めた。
でもすぐに疑心暗鬼になり、相手を試さずにはいられなくなった。

一方で大人としての立ち振る舞いも覚えた。
知性をアピールする程、賢さや真面目さが私の邪魔をする。

私を見てほしい。
嘘でもいいから優しくしてもらいたい。
演技でもいい、どんな方法でもいいからいっそのこと私ごとあなたの中に埋めて欲しい。そのまま一生、あなたから出て来れなくなったっていい。

誰にも理解されない私だけの虚しさを、分かってくれる人が現れたらそれを運命と呼ぶ気がする。

私は、私はもう既に怪物なのだろうか。



END

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過激な表現含め、全てフィクションです。

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