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「DXをするなら、DXという言葉を使うな」 歴戦PMが語る"社内調整"の障壁と対処法

Monstarlabは6月23日(水)、音声ライブ配信シリーズ「みんなのDXプロジェクトルーム」vol.1を開催した。

DXのプロフェッショナルによるディスカッションを、ラジオ感覚で聞ける「みんなのDXプロジェクトルーム」。テーマに精通したゲストを招き、リスナーとともにDXの課題について考える新企画だ。

初回テーマは、最も要望が多かった「社内調整」

vol.1は「現場担当者編」。番組冒頭ではまず、DX推進のために日々奔走する担当者のお悩みを紹介した。

会社からDXを推進するよう言われ、企画を立てなければいけません。しかし、上司も私もDXがよくわかっておらず、プロジェクトがなかなかスムーズに進みません。何から取り組むできでしょうか?

これについて、歴戦のプロジェクトマネージャーであるパラダイスウェア株式会社 代表取締役・橋本将功氏、株式会社モンスターラボ 執行役員 開発統括・宇野智之氏が討論。DXの障壁、現実的な対処法などを語り合った。

本記事では、ライブ配信の内容を抜粋してお届けする。

DXそのものを目的化するな

橋本 上層部を含め、関係者たちがDXをよくわかっていないのは、まさに“あるある”ですね。DX自体が非常に抽象的なものですから。

宇野 そうですね。今回のお悩みを聞くに、担当者の方もその上司も、DXに対してふわっとしている。これはDXの曖昧さに加え、「なぜDXを進める必要があるのか」という目的が定まっていないからでは? と思いますね。

橋本 そうですね。

宇野 僕は個人的に、DX自体が目的になることはないと思っているんですよ。

橋本 おっしゃる通りですね。僕も、DXをやりたいのであれば、DXという言葉を使わないほうがいいと思っているんです。

今ネットで「デジタルトランスフォーメーション」と検索すると、いろんな人がいろんなことを言っているじゃないですか。でも、そういったものに目を通し、「正しいDXとは?」と考えることに時間を費やしても、結局は「よくわからん!」となるんですよ(笑)。

バズワードとは得てしてそういうもの。「AI」「ビッグデータ」が世間に広まった当時も、さまざまな企業が関連ツールを導入しました。しかし、本当に業務上効果があったかどうかは「結局よくわからない」のが実際のところではないでしょうか。

このような事態を避けるためにも、まずは具体的な目標を掲げること、それを現場レベルで取り組むことが必要なのではと思います。

同じ景色を見るための“データ”

宇野 DXを推進する上で、そもそも何が課題なのかがわかっていないケースは、実は多いと感じています。

では、課題を明らかにするためには何が必要か。僕は数値化することだと思っています。それがデジタイズ(digitize;デジタル化)ということ。

【関連記事】デジタイゼーション/デジタライゼーション/デジタルトランスフォーメーションの違いは?

宇野 顧客の声やコンバージョン率など、現状の数値化に必要なデータを収集して初めて「ここに課題があるかもしれない」という気づきがある。それがDX、変革のポイントになるのではないかと。

したがって、Monstarlabでもクライアントの方々には「まずは数値化して課題発見から取り組みましょう」とお伝えすることが多いですね。

橋本 現場担当者の方は日々業務に携わるなかで、定性的な課題感を持っていらっしゃることが多いですから。とにかく現場、足元にあるデータから現状を認識し、定量化することが重要ですよね。

宇野 そうですね。往々にしてあるのが、Aさんが見ている景色とBさんが見ている景色が違うという状態。そうではなく、みんなで同じデータを見て、そのファクトに基づいた判断をする。

日本CTO協会が出している「DX Criteria」(※)には5つのテーマがあって、その1つに「データ駆動」があります。要するに「データからスタートしよう」ということなのですが、すごくわかりやすいので、参考になると思いますよ。

※日本CTO協会が監修・編纂している企業のデジタル化とソフトウェア活用のためのガイドライン。「DX基準」ともいう。「データ駆動」の項目では、顧客接点のデジタル化や事業活動データの収集などの8項目それぞれに、クリアするべき基準が記載されている。

宇野 ただ、「データ駆動」ができればすべて解決するかというと、そうとも言い切れないんですよね。

DXの障壁は"経営層の理解"

宇野 重要なのは、そのデジタイズが、何を変革するための過程として存在するのかという意識。もちろんデジタイズが悪いということではありません。ただ、最近は「デジタルプロダクトを作ること=DX」と捉えているようなケースもよくあるので...... それはDXではないなと。

橋本 その通りですね。

宇野 マッキンゼーのレポート『デジタル革命の本質: 日本のリーダーへのメッセージ』(※)では、日本におけるDXの障壁は経営層の理解だとあるんですよ。

※ 同レポートでは、将来を見据えて企業としてデジタルをどう活用し、どこで戦うかのコンセンサスがない状態を「同床異夢シンドローム」と表現。日本企業は、デジタルやデータの必要性は認識されているが、経営層の中で目指す姿や取り組みの優先順位が異なる、あるいは言語化されていないことから、事業・組織が変わらないことを指摘している。

宇野 今回のテーマは現場担当者のお悩みですが、極論を言ってしまえば、経営層が「覚悟をもってやるのだ!」とリーダーシップを発揮できなければ、どんなに現場の方が頑張っても、DXを成功させるのは難しいと感じています。

橋本 現場担当者が上層部向けにできることとしては、今挙がったようなレポート、あとは”2025年の崖”という強烈なキーワードが出てくるDXレポートなどを活用して、いかに危機的状況にあるのかを伝えることですかね。その前に、まずは現状をデータ化すること、そして今後どうなるべきかを考えることが欠かせないと思います。

宇野 今見えていない課題が何なのか、もしくは10年後の世界を見たときにどのような課題があるのかを、できるだけ数値などのファクトベースで判断できるようにする。現場担当者の方は、それをベースに関係者を説得していくことが重要なのだと思います。

橋本 とはいえ、いきなりは難しいので、まずはMonstarlabさんのような企業に相談して取り組むのがいいのかなと。スピーディーに進めるには、プロの手を借りるのがベストですから。

宇野 お問い合わせいただければ、弊社の事例などもお伝えできるので。普段どのような形でクライアントのDXを支援しているかだけでなく、なぜそれをやらなければいけないかという観点でも、お話しできることがあると思います。ある種の客観的資料として、ぜひ上司を説得する材料に使っていただければと思いますね。

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★次回以降のライブ配信のお申し込み

vol2.「社内調整って難しい! 経営・ミドル層編」
刻一刻と変化する社会・市場に対応するため、アジャイルな組織が求められる今。メンバーが自走できる、主体性のあるチーム作りについて討論!

vol.3「社内調整って難しい! 大型プロジェクト編」
DXの取り組みが拡大すればするほど、関係者は増えていく...。あらゆるステークホルダーに、DXの重要性を理解し、動いてもらうには?

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Top Photo by Tim Gouw on Unsplash

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