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サブカル大蔵経794萩尾望都/矢内裕子『私の少女マンガ講義』(新潮文庫)

萩尾望都がイタリアでの講演会で語った日本の少女マンガ史。「芸術新潮」でも特集されていた内容ですが、『大泉』読後なので若干の緊張感を感じながら読みました。

時代の代表作をフォローし、おそらく同人誌にも目配りをされているようでした。手塚治虫に始まり、最後によしながふみ『大奥』を絶賛していたのが印象的です。

追伸で、講演会で紹介できなかった方々の名前を出してフォローされていて、その中に竹宮惠子の名前がありました。

マンガを説明するために自作の『半神』や『イグアナの娘』をコマごとに註釈しながら紹介されていて、贅沢だなぁと思いながら、先日ケンコバがジャンルの終焉を危惧した、芸人がMー1を語るような危険性も少し感じました。萩尾望都が異国だからとはいえ、少女マンガを語ったという意味。

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少女マンガだけは、つねに予想を裏切る場所から、新しいうねりが登場してきた。(矢内裕子)p.16

 マーケティングや編集者の予想を超えたところから生まれる強さ。

「日本人に西洋の話が描けるわけがないじゃないか」と信じてもらえなかったと聞きました。p.62

 フランス人が、大好きなキャンディキャンディを日本の作品と信じられなかった話。たしかに外国人が日本のことを書くと眉唾してしまう感覚か。そう考えると日本の仏教はインドや東南アジアにしたら、?になるのも当たり前かも。

私も誰かにショックを返したいと思い、それでマンガ家になる決心をしたのです。p.114

 ショックの連鎖こそが萩尾望都の深淵。手塚治虫『新撰組』が、女王を産んだ。

登場人物が西洋人に見えるのは、そうですね…私もときどき考えます(笑)p.124

 なぜ日本のマンガの日本人は西洋人の容貌なのか?という西洋人からの真っ当な質問。文化の深層的な問題かも。外見と本書。なぜ私は大友克洋の描写を異質に感じたのか。リアルでは読めないのか?

だからマンガ家の世界では、気が合う人、作品が好きな人同士で、おつきあいをしています。p.140

 『大泉』が頭に浮かびました。萩尾先生はとにかくおしゃべりだし、同時代のマンガ家の話するし、意外でした。本書では自作についても異国のファンの真摯な質問に対してかなり率直に吐露されていました。


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