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サブカル大蔵経268高野秀行&清水克行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』(集英社文庫)

日本の戦国時代とアジア・アフリカの現在。信長とイスラム教。新米より古米。綱吉の再評価。貨幣からコメへの逆行。

居酒屋から始まった雑談、リミッター外れた高野さんの知性を清水先生が引き出す!これぞ学問だと思いました。

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ソマリ人が、「ゲストが家に来たら、その家のルールを曲げてでもゲストに合わせるものだ。ましてゲストに頭を下げさせるとは、本当に屈辱的だ」って言って泣くんです(笑)p.32

 客という存在についての考察。外国の絶対性と主客転倒する日本の柔軟性。

藤木久志『雑兵たちの戦場』で、足軽は略奪集団だったという説。p.49

 残虐非道の時代の再認識。

刀というのは、あまり実戦の役に立たない武器だと僕は思うんですよね。戦場で役に立つのは弓矢と槍だと思うし、鉄砲が伝来してからは鉄砲だったんじゃないですか。現代のピストルと自動小銃の関係と同じだと思うんですよ。p.58

 防弾チョッキ着て撃たれた高野さんの武器論。

江戸時代が世界史的に見ても稀なくらい平和な時代だったとしたら、それは最終的に綱吉の功績かもしれません。p.67

 最も武士らしくない綱吉の存在と評価。

アト=未来、サキ=過去。過去が前にあって未来は後ろにあるという認識。p.90

 今と昔の時間感覚のちがい。後ろ向きのタイムスリップ。SFだ…!

宗祖が出た比叡山。天台本覚。誰でも仏になれる。中世、宗教の解体の一歩手前までいっていた。p.97

 最澄のオーバードライブ波紋を受け継いだ鎌倉宗祖たちィィ。

当時の銭は日本で作ったものじゃなくて、中国から輸入していたもので、今で言えば日本国内でドルが一般の通貨になっているような状態。p.148

 言葉もカネもみな中国直輸入。今の日本でドルがメインみたいな感じ。それで成り立ちますが。

中国人はあごひげ。義持はあごひげ。イスラム。口ひげは男らしさ、あごひげは宗教性。p.198

『まんが日本の歴史』の義持のヒゲ、その通り、もみあげからさらに伸びた形がなんとも印象深かったのですが、まさかそんな理由があったとは…。

同性愛は戦国の文化。元禄になってひげの文化も同性愛の文化もなくなっていく。戦士が去勢されてサラリーマンになっていったような感じですね。薩摩なんかの武士社会では最後まで残ったみたいですけど。p.200

 現代は綱吉から始まるのかも。

まぁ、たくさんタイの新聞に載っているんですよね。この村では三つ子ばっかり生まれるとか、牛がしゃべったとか、事件や交通事故がすごく多い場所があるとか、そういう話が。室町時代みたいですね(笑)で、最後はお坊さんが出てきてお経読んで、そういうこともなくなりましたと。ああ、そういうオチが。オチが必ず坊さんなんですよ。坊さんか、宝くじなんですよ。p.273

 タイのタブロイドは日本霊異記か。

戦国大名が「お国のために」といっても「そんなこと言われたって」と感じていたんでしょうね。「お国のために」と言い出したら、もう終わりって言うことですよね。そうだと思いますよ。ごまかしが入りますからね。そういうことがわかるのが、歴史を学ぶ1つの大きな意味ですよね。p.382

 歴史と現在が繋がった。


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