Ciudad en dormir

豊洲カラー029 駅向こうは再開発が一段落し、いちおう入居も始まっていた。引越し業者のトラックを避けて階段を登ると、マンションポエムのドリームランドに飲み込まれる。俺の全存在を拒絶するかのような公開空地の入り口で、芝居がかったため息ひとつ。そのすぐ横を「ワオォォォゥ! ユ~メットゥピアァ!」と表記するのが精一杯の奇声とともに、若い女が全身の肉を揺すぶりながら駆け抜ける。追いかけるかとバッグを肩に掛け直したら「ダイジョウブ」と呼び止められた。大きなサングラスの下から見事に整った歯を見せつつ、褐色の女性が楽しげに笑っている。
画像2 成田からずっとあの調子なの、と半ば呆れ顔でサングラスを治す彼女は、ソーシャルのポストそのままに可愛らしかった。そんな彼女から「来月には日本へ行くので、案内してほしい」とメッセが届いたものだから、自分の年齢も忘れときめいてしまったことも思い出している。それが、メッセの末尾に『恋人とふたりで楽しみにしています』という文字列を目視するまでの、さらにその恋人が巨漢と言ってもかまわないほどに大柄の女性、それもほとんどテナーに近いドスの利いた声の持ち主と知るまでの、儚く手前勝手な胸の高鳴りだったとしてもだ。
画像3 いちおう、ソーシャルの投稿では動くところをみていたし、声も聞いていたのだが、実際に対面すると圧倒的としか形容できない。身長そのものは俺より低いらしいが、ヒールであっさり逆転されていた。そんな大きな恋人が、どうやら「夢とぴあ」を意味しているらしい奇声を発しながら、身軽にぴょんぴょん飛び跳ねる様は……乳と尻……いや、そういう問題ではないが、不必要に性的な雰囲気を醸しているように思えてならない。特撮番組のロケ地だったかつての再開発地区を案内しながら、違いの体格差を補い合うように振る舞うふたりにあてられていた。

¡Muchas gracias por todo! みんな! ほんとにありがとう!