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Book review

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過去に書いた書評を順に公開していきます。 私自身、何冊分あるのか把握できていないので、ファイリングするつもりでやってみようと思っています。 過去20年分、いや、もっと以前のものも… もっと読む
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記事一覧

1冊の本に書けること  book review

『HOOT』 カール・ハイアセン・作 千葉茂樹・訳 理論社  すべてのパズルのピースが、あるべ…

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大人の行為と存在  book review

『あの空の下で』 フランシスコ・ヒメネス・著 千葉 茂樹・訳 小峰書店 2005  メキシコか…

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自分を見つけるために  book review

『シェイクスピアを盗め!』 『シェイクスピアを代筆せよ!』 ゲアリー・ブラックウッド・著 …

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それぞれが向かうところ  book review

『ほとばしる夏』 J・L・コンリー・作 尾崎愛子・訳 福音館書店 2008  人がよりよく生き…

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知っている本 book review

『ジェリコの夏』 文・ジョハナ・ハーウィッツ 絵・メアリー・アゼアリアン 訳・千葉茂樹 BL…

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自分自身であるために book review

『赤い鳥を追って』 シャロン・クリーチ・著 きも かずこ・訳 講談社 読み終えた後の充実感…

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幸福と悲しみと book review

『ノック人とツルの森』 アクセル・ブラウンズ・作 浅井晶子・訳 河出書房新社  私は本書を『少女の成長物語』として読んだ。悲惨なゴミ屋敷の実態やネグレストよりも、その現状をありのまま受け入れ、そこで生きるアディーナの視点がユニークで興味深かったからだ。彼女は母と弟と三人で暮らしている。父はずいぶん前に亡くなった。  彼女たちには二つの世界が存在する。一つは家の内側の世界。もう一つは家の外側の世界。外の世界は危険だと、彼女たちは母に言い聞かされて育った。そこには怖いノック人

実感すること、言葉にすること book review

『デビルドリーム』 長谷川集平・作 前田秀信・絵 理論社  何かの本で読んだ一節を思い出し…

熱風が吹いてくる book review

『国境まで10マイル』 デイヴィッド・ライス・作 ゆうきよしこ・訳 福音館書店 「これが好き…

空気を書く book review

『ニューヨーク145番通り』 ウォルター・ディーン・マイヤーズ・作 金原瑞人・宮坂宏美・訳…

船乗りにあこがれて book review

コンパス・マーフィー スティーヴン・ポッツ・著 佐々木信雄・訳 求龍堂  船で働きながら世…

彼女は墓地に住んでいる book review

アイボリー 竹下文子 著・坂田靖子 絵 理論社  しっとりした雨あがりを感じた。暑くもなく…

物語が生まれる理由 book review

『クレイ』 デイヴィッド・アーモンド・作 金原瑞人・訳 河出書房新社  アーモンドの作品は…

空は果てしなく、言葉にはできなくても book review

『四人の兵士』 ユベール・マンガレリ・作 田久保麻理・訳 白水社  この物語には四人の兵士が登場する。彼ら、ロシア赤軍の兵士たちは、ルーマニア戦線で戦い、長い行軍の後、夏には総退却をはじめていた。敗走の途中、四人は偶然出会う。リーダー格のパヴェル、力持ちの巨漢キャビン、物静かでやさしいシフラ、そして、天涯孤独のベニヤ。彼は、この物語の語り手だ。  初雪がちらつく十月、指揮官は兵士たちに前線を離脱し森に退避すると告げた。小屋を作って春を待てと。途中、彼らは何度もポーランド兵