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『老舗ミニシアター 第二章へ着々』 no.4

以前、私の購読している朝刊の紙面には、近隣映画館の上映作品一覧が掲載されていた。
テレビ番組表の1〜2時間分ほどの細くてとても小さいスペースに、上映館と上映作品、上映時間だけが載っていた。
その一覧を見るだけで、普段、私が気に留めていない映画情報を得ることができた。
詳しい作品の内容や広告もなく、最低限の情報だった。
テレビの番組表と似ているけれど、より情報は少ない。
でも、私にとってこれで充分だった。
毎朝、新聞をめくってこの一覧の文字だけざっと目で追う。
気になるタイトルを見かけると、仕事の合間にネットで調べたりする。
そうやって次に見る作品を選んでいた。
こんなスペースで上映期間までわかったのだ。
だから貴重な作品を見逃すことも少なかった。
かつてのシネマテークが上映する作品も、ここが情報源だった。
作品一覧が紙面から消えたのは、コロナで映画館が休館になったからだろう。
映画が上映できない以上、紙面掲載の意味はない。
映画館が再開すれば、また紙面にも作品一覧が復活すると思っていた。
でも、未だ消えたままだ。
もしかしたらこのままかもしれないとふと思うことがある。
その反面、どこかで今も復活するような気がしてならない。
ミニシアター閉館のニュースもあったけど、全国的には増えているという記事も読んだ。
ある日、紙面をめくったとき「あっ!」と思わず声をあげてしまう日が来る。
シネマテークがそうだったように。

本屋で映画のポスターを眺めた。
壁には新聞の切り抜きも貼ってあった。
『SAVE the CINEMA』の手書きの文字を見たとき、妙にふに落ちた。
映画も本も文化そのものだ。
映画館や本屋がなくなってしまうことは、文化が消えることを意味する。
前に映画と本の共通点に触れた。
私は新聞もそうだと思っている。
時事ニュースを見るためだけに、紙面をめくる訳ではない。
文化面や社会面が、私は好きなのだ。
大袈裟かもしれないけれど、自分が生きている場所を俯瞰できないと困る。
それができるメディアを私は紙面しか知らない。
デジタルには真似できないと思う。

『SAVE the CINEMA』

今週末『ナゴヤキネマ・ノイ』がオープンする。
オープニング作品は東海テレビ制作のドキュメンタリーだった。
『その鼓動に耳をあてよ』監督:足立拓郎
自分では選ばない作品だけど、見ようと思っている。

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