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文藝春秋「本格ミステリ・マスターズ」のまとめ

昔から「叢書・シリーズ」が大好きだ。
単発の単行本ではなく、テーマ性やジャンルを統一させて、同じレーベルで出版されるものだ。装丁・デザインが統一されているので、本棚に並べると綺麗で実にカッコいい。
ミステリのジャンルで言うと、1980年代あたりから、ミステリの叢書レーベルがたくさん出てきた。そういうのをまとめたページを作ってみたいと、かねてより思っていた。Wikipediaにまとめられているものも多いのだが(実際、このシリーズではまずWikipediaを参考にしていくつもりだ)、個人的な思い出だったり、その中でも印象的な作品や傑作などを紹介していきたいと思う。
なお、レーベル創設の経緯や歴史、編集者などの内部事情を私はほとんど知らないので、このシリーズ記事では触れない。単純にリスト化の試みと、あくまでも個人的な記憶を綴っていきたい。

第一弾は、文藝春秋「本格ミステリ・マスターズ」だ。
早速Wikipediaに頼るが、「文藝春秋創業80周年記念事業」として創られたレーベルだそうだ。
編纂委員は、綾辻行人、笠井潔、北村薫、二階堂黎人の4人。既にミステリ作家として活躍されている作家の作品を集めている。確か、全て書下ろしだったはず(違ってたらすみません)。
特徴として、表紙に花の写真があしらわれた統一性と、「m」が2つ重なったロゴが作られていた。
『葉桜の季節に君を想うということ』だと、こんな感じ。

歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』表紙。実にシンプルだ。

その刊行ラインナップは以下の通り。出版順と、その後の文庫化などの書誌データ、私が既読か未読かをリスト化したものだ。
(私の既読作品はタイトルを太字にしている)

島田荘司『魔神の遊戯』2002年8月 → 文春文庫2005年11月
柄刀一『凍るタナトス』2002年8月 → 文春文庫2006年1月
山田正紀『僧正の積木唄』2002年8月 → 文春文庫2005年11月
折原一『倒錯のオブジェ』2002年10月 → 『天井男の奇想』に改題の上、文春文庫2006年3月
加納朋子『虹の家のアリス』2002年10月 → 文春文庫2005年12月  → 文春文庫 新装版2006年10月
北村薫『街の灯』2003年1月 → 文春文庫2006年5月
歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』2003年3月 → 文春文庫2007年5月
小森健太朗『Gの残影』2003年3月 → 『グルジェフの残影』に改題の上、文春文庫 2006年7月
西澤保彦『神のロジック 人間のマジック』2003年5月 → 文春文庫2006年9月 → 『神のロジック 次は誰の番ですか?』に改題し、コスミック文庫 2021年6月
二階堂黎人『猪苗代マジック』2003年7月 → 文春文庫 2006年11月
笠井潔『魔』2003年9月 → 文春文庫 2007年2月
近藤史恵『二人道成寺』2004年3月 → 文春文庫2007年3月 → 角川文庫2018年1月
芦辺拓『紅楼夢の殺人』2004年5月 → 文春文庫 2007年8月
恩田陸『夏の名残の薔薇』2004年9月 → 文春文庫2008年3月
太田忠司『月読』2005年1月 → 文春文庫2008年1月
我孫子武丸『弥勒の掌』2005年4月 → 文春文庫2008年3月
愛川晶『六月六日生まれの天使』2005年5月 →文春文庫2008年5月
奥泉光『モーダルな事象』2005年7月 → 文春文庫2008年8月

以上、計18作品だ。
まとめてみてすごいなと思ったのは、全作品がちゃんと文庫化していること。もちろん文春文庫だ(後に別の版元から二次文庫化した作品もある)。当たり前ではないか、と思われるかもしれないが、単行本は必ずしも文庫化するとは限らない。売上が見込めなければ文庫化が見送られることもよくある。そういう意味で、全作品が文庫化されているのは素晴らしいと思う。
ただ、文庫化したからと言ってずっと残っているとは限らない。今回調べてみて気づいたが、文庫も品切れになっている作品も結構ある。厳しいのだ。
例えば、愛川晶『六月六日生まれの天使』は確か一時期、既刊掘り起こしで仕掛け販売され、ベストセラーになったことがあるはずだが、現在は品切れである。

私の既読作品は14作品。一部うろ覚えもあるのだが、恐らくこれくらいは読んでいるはずだ。逆に未読作品があるのが申し訳ないくらい。

後の評価、という意味で振り返ると、やはりダントツの存在感は歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』だろう。本格ミステリ大賞も受賞し、いまや歌野晶午の代表作である。
北村薫『街の灯』は、後に『鷺と雪』で直木賞を受賞することになる「ベッキーさん」シリーズの一作目である。
近藤史恵『二人道成寺』は、主要探偵キャラの「今泉文吾シリーズ」にあたる作品。

個人的な、このレーベルのベスト3は、
『葉桜の季節に君を想うということ』
『弥勒の掌』
『紅楼夢の殺人』

である。
いずれも本格度と仕掛けの融合が素晴らしい作品だ。
『紅楼夢の殺人』は本格ミステリ大賞には選ばれなかったが、私がかつてやっていた「インターネットで選ぶ本格ミステリ大賞」に選ばれている。


と、いう感じで、今後もミステリ叢書シリーズのまとめ&振り返りをいくつかやっていきたいと思っている。以下、今後のまとめ予告。
・講談社「推理特別書下ろし」
・講談社ノベルス「乱歩賞SPECIAL」
・新潮社「新潮ミステリー倶楽部」
・東京創元社「鮎川哲也と十三の謎」
・東京創元社「黄金の13」
・東京創元社「創元クライム・クラブ」
・東京創元社「ミステリ・フロンティア」
・原書房「ミステリー・リーグ」
・国書刊行会「探偵クラブ」

and more…

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