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「ものを捨てる」 11首

///この記事は歴史的仮名遣ひで書かれてゐます///


いつか読むいつか使ふといつも来ぬ先に見果てし夢さむる今

もの捨てて縁(よすが)ゴミとせし思ひ出はなべて楽しき若き日のこと

思ひ出の灰皿小銭入れとして自分を騙してきた もう限界

減らせる、まだ減らせると槍もちて追ひまはしたるわが理想像

減らせる、あれ減らせると夢に見てもう捨てたよと目が覚める朝

ものに空(す)き空(あ)いた心のスペースは「捨てよ」と命ずる声にみちをり

夢覚めて覚めてまたみるミニマリストなりさへすれば術もあらむと 

最強の自己啓発てふミニマリズム ならビジネス本はもう要らぬのか

買ひ直さるるものならこんなに迷はぬと詰まらぬ助言に反発してをり

例外をゆるさぬ気概ゆきすぎてCD棚に残る茫漠

捨てハイの正体見たり価値のあるものムダにする一つの消費と


【後記】ふだんろくに詠んでもないくせに捨てられない執着の一つである短歌。身一つでできる趣味なりライフスタイル(歌とともにある生き方)であるだけに、ミニマリストを志したからってわざわざ諦める必要あるのかな?って検討するたびに惑ってゐる。もっと減らして俳句とか川柳はどうかな?とか。これは冗談だけど、でももしやるとなれば歌に辞典なり歌集なりは必須だから、身一つってのは嘘。諦めない自分を納得させるいつもの言ひ訳なんだよね。

好きな歌人はミニマリストらしく一人あげるとすれば藤井常世。
らしく一首あげるとすれば

無礼きらひ鈍麻のこころなほ嫌ひ夏草むらに沈みて叫ぶ

『歌集 鳥打帽子』

読んでいただきありがたうございました。

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