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【宝塚1789】星組・礼真琴が魅せた新たなフランス革命

※本記事は再投稿させていただきました

2023年6月2日(金)にフレンチ・ロック・ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』が、宝塚大劇場で開幕した。

6月3日(土)~6月18日(日)までの公演は、体調不良者がいたため中止となったが、再び幕を開けてからは順調に公演が続いている。

1780年代のフランスを舞台に、フランス革命から人権宣言を採択するまでを描き、2015年に宝塚歌劇で日本初演、その後東宝で2度上演された。

『ロックオペラ モーツァルト』や『太陽王』など数々の名作を生みだしたドーヴ・アチアとアルベール・コーエンによって、フランスを熱狂の渦に巻き込んだ今作。

日本版で潤色・演出を担ったのは『エリザベート』『THE SCARLET PIMPERNEL』などを手掛けた、日本演劇界のカリスマ・小池修一郎。

キャストは主演の礼真琴をはじめ、舞空瞳、瀬央ゆりあ、暁千星、有沙瞳など、華も実力も申し分ない星組メンバーである。

『1789 -バスティーユの恋人たち-』 あらすじ

武器を持ち 立ち上がれ シトワイヤン
今こそ 自由を求めて

『1789-バスティーユの恋人たち-』より『武器をとれ』

1780年代後半、栄華を極めたフランス王政が陰りを見せ始めた時代。

父親を貴族に殺され土地を奪われた、農夫の息子ロナン(礼真琴)は、父の仇を討ち土地を奪還するため村を飛び出す。

辿り着いたパリで革命家のデムーラン(暁千星)・ロベスピエール(極美慎)らに出会う。

「誰もが自由に生きられる理想の世の中を作る」という彼らの思想に感化されたロナンは、自由への希望を見出して、革命活動に参加していく。

そのころ王室では、農民たちの不満を理解していないマリー・アントワネット(有沙瞳)が、豪遊三昧を続けている。

王室で王太子の養育係を務めるオランプ(舞空瞳)は、王妃が愛人フェルゼン(天飛華音)と逢引きするのを手伝うために出向いたパリの街で、ロナンと出会う。

互いに惹かれあう2人だが、貴族に父を殺された息子と王室の侍女という身分の違いが、その恋を阻む。

自由に愛し合える世界を作ろうと革命に力を注ぐロナン。王妃と恋人への想いに揺れ動くオランプ。

1789年にフランス革命を起こし、人権宣言で「自由・平等・博愛」を掲げたのは名もなき市民たちだった。

激動の時代、愛と自由を求めて戦った若者たちの熱い魂がぶつかりあう、大作フレンチロックミュージカル。

『1789 -バスティーユの恋人たち-』における星組生の魅力

星組生の底上げが凄まじいこのタイミングでの大作ミュージカル。いざ開幕すると、主要メンバー以外の組子も歌唱力やダンス力が上がっていて、1秒足りとも目が離せない。

ここでは、主要となる6人のメンバーの魅力をご紹介!

礼真琴が止まらない!!

主人公ロナンを演じるのは礼真琴。歌・踊り・芝居3拍子揃った役者と言われてきたが、もはや役者・礼真琴ではなくロナンなのではないか、と錯覚するほどの憑依っぷりだ。

頭で考える前に行動する無鉄砲な男らしさや頑固さもあるが、それだけではないロナンの心の葛藤が丁寧に造形されていた。

革命家の仲間たちとの生活の差に苦しむ姿や、オランプとの身分違いの恋に戸惑う姿をロックの曲に合わせた歌声とダンスで、ダイナミックかつ繊細に表現。

名もなき市民たちが歴史を変えるために立ち上がった尊さを、ロナンの生き様から感じることができたのは、礼の芝居力の賜物である。

星組が向かう先に敵なし

ロナンの恋人・オランプを演じるのは舞空瞳。生命力と力強さのある芝居で、オランプの芯の強さを見事に表現。また、ロナンへの恋心や身分の違いに葛藤する姿を、感情的かつリアルに表現して、観客の共感を呼んだ。

ルイ16世の弟・アルトワ伯を演じるのは瀬央ゆりあ。端正な顔立ちと品のある佇まいから垣間見える野心には、思わず背筋が凍った。星組から専科への異動が決定しているが、その存在感は増すばかりだ。

王妃・アントワネットを演じるのは有沙瞳。今作で退団が決定している彼女にふさわしい役どころだ。無邪気な乙女だったアントワネットが、革命を通して王妃・そして母親になっていく過程を、圧巻の演技力で魅せた。

革命家・デムーランを演じるのは暁千星。爽やかな笑顔と誠実で男らしい物言いで、好青年という役どころを的確に演じている。市民を先導して歌うときの迫力は、史実にもある「武器を取れ」というデムーランの演説そのものだろう。

もう一人の革命家・ロベスピエールを演じるのは極美慎。後に恐怖政治を行う、その片鱗も見せつつ、まっすぐで真面目な若者として演じている。星組での存在感がさらに増した、頼もしいホープである。

星組版『1789 -バスティーユの恋人たち-』の見どころ

見どころだらけの『1789 -バスティーユの恋人たち-』だが、2023年宝塚ver.として改変された場面がいくつかある。大きく改変があったのは以下2点だ。

  • トップコンビが恋人を演じる

  • 「革命の兄弟」の場面が増えた

ここからは2点の改変場面について、ご紹介!!

ロナン(礼真琴)とオランプ(舞空瞳)だからできる恋の描き方

宝塚初演ではトップ娘役がマリー・アントワネットを演じたが、星組版ではトップ娘役がオランプを演じる。そのため、ロナンとオランプの恋愛に焦点が当たるように演出が改変された。

改変のひとつは、新曲『愛し合う自由』をロナンが歌う場面だ。身分に関係なく愛し合える世界がくると、ロナンがオランプを諭す。

人の心と体 傷付けない限りは 

何を語り求めてもとがめられることなどない『1789 -バスティーユの恋人たち-』より
『愛し合う自由』

このロナンの想いは、後にオランプが叫ぶ人権宣言の一文に繋がる。

自由とは、他人を害さない全てのことを

なし得ることである。『1789 -バスティーユの恋人たち-』

2人の想い、そしてバスティーユに集った恋人たちの想いの結晶が人権宣言なのだ、と感じることのできる印象的な改変場面だ。

爽やかイケメン3人衆「革命の兄弟」の絆

東宝版から追加された新曲『革命の兄弟』を、宝塚版にも採用。ロナンが革命に身を投じるきっかけとなるこの曲は、彼らの友情の育み方を色濃く表現している。

いつか時代が変わったら

肩を組みパリの街を歩こう夜通し朝まで それこそが革命『1789 -バスティーユの恋人たち-』より
『革命の兄弟』

礼真琴だけでなく、暁千星、極美慎も安定した歌唱で劇場を盛り上げ、今後の星組が安泰であると感じさせた。

『1789 -バスティーユの恋人たち-』が訴えたいメッセージ

今作の大きなメッセージは、悲しみが必ずしも不幸をもたらすわけではないということ。

憎しみを乗り越えて 
新しい時代を築き上げる

『1789 -バスティーユの恋人たち-』より
『悲しみの報い』

そして、時代を作るのは歴史に名を残した偉人ではなく、その時代を生きた人間すべてである、ということ。

ひとつひとつの命の叫ぶ声が 
響き合い重なって 明日の歴史作る

『1789 -バスティーユの恋人たち-』より『悲しみの報い』

不安定な情勢が続く昨今の世の中。綺麗ごとでは片付けられない憎しみや悲しみが蔓延しているが、その先に待つのが不幸ではないと信じることができる、そんな作品である。

上演時間は3時間(休憩時間30分を含む)。
宝塚大劇場で7月2日(日)に千秋楽を迎える。その後、東京宝塚劇場にて7月22日(土)~8月27日(日)まで上演予定だ。

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