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月曜モカ子の私的モチーフ vol.182「9月15日」

先週の土曜日、平成を駆け抜けた偉大な歌手の安室奈美恵さんが引退し、日本を代表するといっても過言ではない女優の樹木希林さんが亡くなった。
それが同じ日というのもなんだか考えさせられる。
新しい元号を迎えた日本の音楽シーンにアムロちゃんは登場しないし、わたしたちは今後、樹木希林のいない日本映画を観ていくことになる。

                           
安室ちゃんに関しては語れるほどファンではなかったので、
ファンの方々の想いを考えると安易にわたしなんかが言えることはないので、ずっとファンだった樹木希林さんのことを、わたしは考えている。

                           
ああいう人になれたらいいなとずっと思っているけど、わたしにはああいう「動じなさ」は備わっていないし、あんな人はなかなかいないから、樹木希林は樹木希林なのだろう。
マスコミに対してのコメントがいつも素晴らしいなと思っているのだが、今日、テレビで、昔、内田裕也が勝手に離婚届を提出したときのマスコミのインタビューを放映していたのだけど、その言葉が、とても印象的なので紹介したい。
わたしが物心ついた時はもう樹木希林は大御所という感じだったけれど、その映像の樹木希林は38歳とあり、インタビューする方も結構トゲがあるというか、嫌味な言い方をしていた。記者が言ったことは、勝手に離婚届けを出したというのは内田さんの離婚宣言ととらえられると思うのですが、それでもまだ「あがくのですか?」という少し嘲笑が混じったような質問だった。
                          
「客観的にはここまで来て、復縁は難しいと思われますけど」その質問に樹木希林は「客観的にではなくて主観的にもそう思います」と答えた。(じゃあなぜ?)と言った感じの質問に樹木希林はこう答えた。

                          
「わたしにはね、怖いものや怖ろしいものがないんです。昔からそうで、死であるとか、そういったものにも何も恐怖を感じないんです。でもわたしが唯一怖ろしいと感じることが一つだけあって、それはあの人の前に立つことなんです。あの人はあの通り不道徳なところもいっぱいある。でもそういう彼の心を『おお汚い、おお汚い』ってかき分けていくとね、一番奥に、ものすごく美しい鏡みたいな彼の心があって、けれどもそこに物凄く怖ろしいものが映っている。そしてそれは自分だったんですね」

                           
すごい言葉だなあと思って、そしてそれを意地悪な質問をぶつけてくる記者に、極めて淡々と、同時に嘘なく、じぶんの心を晒しているその姿にも、改めて心を打たれた。

                           
今、いろんなことを考えていて、今日は投稿が遅くなりすみません。いろんなことを考えていて、と、いうのは、わたしの近況を知ってくれているみんなが「きっとこう言う事を考えているだろう」とか「こういう風に思っていたりするだろう」ということとは実はすこし違うと思うのだけど、
(例えば体調のことや今後の仕事のことや小説のことを考えているわけではない)
わたしはいつもその、他者との見解の相違を、放置できないところがあって、わたしが今考えているのはまさにそういうことだったりする。

                           
人の心理を勝手に読んで、転がっている材料だけで「きっとあなたはこうなんでしょ」とか言われてしまうことに対して、あまりにそういうことじゃないから「そうじゃないって言ってる!」と強く言ったりすると、人は、「強く否定するのは図星だからだ」とか「痛いところを突かれたからだ」とかまた勝手に解釈してわたしをわかったような気になって、認識の乖離が広がっていく。それを埋めようと思っても仕方ないのだけれど、
なんていうのだろうか、もし、自分だったら、どうせ自分をやり込めて傷つけに来ているのだなってわかっている記者に対して「本当に今じぶんが思っていること」をあんな風に淡々と微笑しながら言えるかなあとか、考えてみたりする。

                           
本当に今じぶんが思っていること。
それを人に理解してもらえるように言葉で表すのはむつかしい。わたしの中に一つ課題があって、それをどう解決していったらいいかは他人からみたら「解決の必要もないこと」なのだがわたしには解決の必要が今あるのである。けれどもとても言語化できる課題ではない。
                           
だからあまり、誰とも議論したくない。
話さないで言葉を形にしていった方がいいのかな、と思ったり。
                                    
昔はやんちゃで今は落ち着いたり、昔は物静かだったけど今はバラエティでも引っ張りだこだったり、芸能人の人を見ていると年齢によって脱皮したり、変化したりしている人もたくさんいて、それはそれで素敵なことだと思う。
                           
同時にこの9月15日に表舞台から姿を消した二人の女性は、
いつも、どんな時も、ブレない信念と、ブレないスタイルを貫いていて、過去の映像なんかで振り返る機会をもらえたこの数日、どのカットもどの映像でも、このお二方は本当にブレていなくて、一貫したスタイルを貫いていて、この2人の偉大な表現者からもらったメッセージはそれだなあと、思いました。

                      (イラスト=Mihokingo)

※これは2つ前の「月モカ」です。掲載遅くなりました!すみません!


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