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靴下を干すたびに思い出す人


中学校3年間、社会科を担当してくれた男性の先生がいた。

字が独特だけど板書はとても読みやすく、小学生の頃から社会科が大好きだった私はその先生の授業がわかりやすくて好きだった。


特に、学んだ単元についてA4用紙1枚にまとめる課題が好きで、わたしは本当に宿題をやらない女なのだけど、これは好んでやっていた。

飛鳥時代についてとか、法律についてとか、頭の中に散らばった知識を自分なりにレイアウトして、情報をピックアップしてまとめるのが楽しかった。もしかしたら今の旅行日記の始まりかもしれない。


ただその先生の授業の時間は、先生の熱いトークだけで終わる日も多く、それは一部生徒にとっては苦痛で、そんな自分語りが多いところが保護者も鬱陶しがってはいた。みんな嫌ってはいなかったんだけど、うるさいなぁ...という反抗は多少あった。


基本的にはそんな熱いトークも素直に「へえ!」と聞く純粋なJCだった私が、心底どうでもいいよ...と思っていた話がある。


「俺は洗濯物を干す時、靴下一枚でも必ずかかとをそろえ、綺麗に干す。干してから2時間くらい経ったら、足首側とつま先側を上下逆にして干す。」


という内容。

社会科が好きゆえ、早く授業してくれ...と思っていた。何を伝えたかったのかは今もわからない。それなのになぜかこの話は15年近く経った今も頭から離れず、靴下を干すたびにおもいだす。

本当になんの話だよ...と思っていたけど、先生はひとつひとつ丁寧に生きている人だった。



・話したことは必ずメモを取るようにすること
・社会情勢に自分の意見を持つこと
・コカコーラの瓶を旅先で買っては丁寧に洗いコレクションしている


メモをすぐ取る習慣は先生につけてもらったと思う。どうでもいい話もあったけど、大切なことをたくさん教えてくれた。体調がよほど悪い日以外は優しく熱いいい先生だった。当時から週に数度、人工透析に通っていた。


当時、青年海外協力隊に憧れていた私。
英語の先生になりたいって話していたので、卒業文集にはあの癖のある字で
「世界に羽ばたく人材になってね」
って書いてくれた。


高校に進学してお嬢さんと同じ学年になった。
彼女は素直で明るく賢く、同じクラスになれなかったけれど「ああ、あの先生から生まれた素敵な子だな」とずっと思っていた。


そんな先生、長年の闘病の末、亡くなったそう。
本当にお疲れ様でした。
お嬢さんのことも心配なので連絡したいけれど、いつかまた会えたら、先生のことお話しできるのを待とうと思う。


これからも靴下を干すたびに、先生のこと思い出すと思う。コカコーラと青いインプレッサを見ても思い出すと思う。結構先生のこと思い出すと思う。ありがとうございました。

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