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海外進学プランB

今年の秋に入学するドイツの大学では、私はデザインを、夫は映画制作を専攻する予定である。

日本では外国語大学の国際社会学部を卒業した我々にとって、これはそれぞれにとって全く未知の分野への挑戦だ。

5年日記を読み返していたら、「ドイツの大学で全く新しい分野の学位を取ろう、そしてその費用を工面するためにオーストラリアで出稼ぎしよう!」というぶっ飛んだ結論に至ったのが、ちょうど1年前のこの時期であったことに気がついた。せっかくなので、この結論に至るまでの紆余曲折をこのnoteにも書き残しておこうと思う。

最初に2人の間で「海外の大学に行ってみる?」という話になったのは遡ること4年ほど前、社会人1年目の10月、ちょうど新型コロナウイルスの影響で人々がステイホームをしていたタイミングだった。

たまたま彼が私の実家から徒歩圏内の場所で一人暮らしをしていたため(改めて文字に起こすと「そんなことある?」という感じだが)、電車に乗って出かけられないご時世でも我々には散歩というアクティビティが残されていた。

仕事が休みの日、近所の散歩中にどちらともなく発した、「このまま社会人生活が何十年も同じ感じで続いていくかもしれないと思うと何故か分からないが発狂しそう」という一言から派生して、「今の会社で数年働いたら、海外の大学に行ってみても良いのではないか」という意見が出たのである。

この日のことは不思議とよく覚えていて、久々にドキドキとワクワクとで胸がいっぱいになったのを今でも昨日のことのように思い出せる。

実は、当初の計画はノルウェーの大学院への進学だった。
というのも、私が大学生時代に休学留学した際は(そしてこの計画が挙がった際にも)、ノルウェーの大学では英語で学べるコースが多く開講されており、そのほとんどの学費が海外からの学生に対しても無料だったからである。

ただ、話が出たのがコロナ禍ど真ん中の時期だったということと、せっかく頑張って就活して入った会社なので数年は働いておこうという気持ちもあり、今すぐにでも海外へ!という話にはならなかった。
そのため、そこからの数年間はそれぞれの会社で社会人生活をそれなりに頑張りながら、新居を探して引っ越したり、入籍したり、結婚式を挙げたり、新婚旅行へ行ったりと、これはこれで人生の重要な節目をいくつも迎えながら日々を過ごした。

そして2023年2月、IELTSのスコアを取得し、日本の大学の成績やモチベーションレターなどの必要書類を揃えて大学院への出願を終えたタイミングで、我々は衝撃のニュースを受け取ることになる。

国の方針が変わり、ノルウェーの大学でもEU外からの学生に対してべらぼうに高い学費がかかるようになってしまったのである。

さすがに日本の何倍もかかる学費を工面するのは全く現実的ではない…とは思いつつ、せっかく準備したので一応出願のステータス自体は継続していたのだが、今度は日本の大学での単位数がそれぞれ大学院で専攻するには足りないとの理由でそもそも「受験資格なし」として結果が返ってきてしまった。

かくして、プランAのノルウェー大学院進学は残念ながら叶わぬ夢となってしまったのだが、既に3年弱あたためてきた「海外進学」の構想は、その時点でもう私たち夫婦の中ではそう簡単に捨てられないものとなっていた。

そんな中、2人とも納得がいくもう一つの選択肢として急浮上したプランBが、「オーストラリアでワーホリしてから、ドイツで学部入学」というものだった。

日本の大学でやったことをベースに学びを深めるのが難しいなら、もはや本当に好きなことをゼロから勉強した方が楽しいのでは…?という発想の転換である。

なぜドイツの大学なのかというと、「学費がべらぼうに高くない」「英語で学べる」「デザインと映画制作のどちらもコースが開講されている」この3つの条件を満たす大学が奇跡的にベルリンに存在していたためである。

ちなみに、ドイツは公立大学だと学費が無料だったのだが、当然ドイツ語で学ぶコースがほとんどで、かつ我々夫婦が学びたい内容で探すと有料の私立大学しか選択肢がなかった。それでも日本の大学の学費とあまり変わらない金額で、イギリスやアメリカ、オーストラリアなど他の英語圏の大学で学ぶよりもはるかに現実的な計画に思われた。

そうと決まれば話は早い。IELTSや過去の成績表などはノルウェー出願時のものを使い回し、モチベーションレターやポートフォリオを新たに準備して出願、そして無事に2人とも合格をもらい、今に至るという次第である。

当初の計画通りにはいかなかったわけだが、今となってはこのプランBの方が結果的には良かったのではないかとすら思っている。

「海外に行く」というイベントに加えて「全く新しい分野のことを学ぶ」、そして「学費の足しにするため出稼ぎワーホリ」要素までついてきて、ワクワクが渋滞している。「数十年先の暮らしまでなんとなく見通せてしまって辛い」とこぼしていた社会人時代の自分からしたら想像も出来ないほど、見通し不明な人生設計である。

最近気づいたことだが、デザインも映画も、それぞれが留学中に専攻外だが興味本位で履修していた授業の内容と重なっている。

元々関心はあったが、高校3年生時点で進路として固めるには少し躊躇われた内容を、日本の大学で培った英語力を活かして海外の大学で専攻する。そう考えると、外国語大学への進学を決めた自分の判断も巡り巡って今に繋がっているのかも知れないと思えて少し嬉しい。

なお、今働いている寿司屋の面接で「この9月からはドイツでデザインを勉強します!」と伝えたところ、なぜか同じ職場のデザイン科卒の同僚と社長と3人で「デザインチーム」を構成することになり、今はデザイン会社とのブランディングに関する打ち合わせなどに参加させてもらっている。

これから勉強するというだけでまだ今は普通に素人なんですが…と喉まで出かかるのを必死で堪えつつ、プロのデザイナーの仕事とブランディングの実践の場を先駆けて学べる貴重な機会であることは間違いないので、必死に食らいつく毎日である。

ワーホリ期間も早くも3分の1を過ぎてしまったが、このプランBをより充実したものにするべく、無理なく頑張りたい。

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