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眩しい思い出【ショートショート】

椰子の木のブランコがある浜だった。
涼しげにきらきらと輝く海のブルーと、薄い雲が遠慮がちに広がる爽やかな空の青を、いつまでも見ていられる浜だった。

人影はまばら。5歳くらいだろうか、小さな黄色い帽子をかぶった男の子がブランコに乗ってはしゃいでいる。海辺では、Tシャツに短パン姿の女の子2人が真っ白な砂浜にiPhoneをセットして弾けるような笑顔を向けている。

「大学生くらいかな。」
女の子たちの方を見ながら彼が言う。
「うん、仲良しだね。」
日差しに目を細めながら答える。

「ああやって砂浜に半分携帯埋めたらセルフで撮れるんだ。画期的。」
顔だけくるりとこちらへ向けて彼ががニコと笑う。
「確かに、画期的。」
あははと声を出して笑った。

陽が傾いて、木陰にいたはずの私たちは知らずのうちに太陽の光に晒されていた。
ながい時間を共にした。

特別なことが無くても、彼と笑い合える毎日がある。
彼との何でもない日常が、たまらなく幸せ。

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