ABA(応用行動分析)について⑦トークン(ご褒美)システム

今回は、「トークンシステム」について紹介したいと思います。

行動がなぜ起こるのか、また起こらないのかについては、行動分析の基本原則に基づいて考えます。

ある行動が続くのは、その行動に対してポジティブな結果が得られるからです。
逆に、ポジティブな結果が得られない場合、行動は減少する傾向にあります。

まず、先行刺激と文脈が行動に影響を与えます。
学校での例を挙げると、授業中に立ち歩く行動は通常否定的な結果をもたらしますが、休み時間には許容されることがあります。
つまり、同じ行動でも文脈によって強化されたり弱化されたりします。

不適切な行動も、それがポジティブな結果を生む場合には強化されてしまいます。
そのため、学校が面白くないと感じる生徒は、別の面白いことを見つけたり、不適切な行動に逃避することがあります。

このような行動を減らすためには、行動の後にポジティブな結果が得られるように環境を整えることが重要です。
行動の手がかりとなる環境の整備は、行動を教える上で基本となります。

行動の強化や弱化について考えていきましょう。
適切な行動が十分に強化されていない場合は、その強化の方法を考え、逆に不適切な行動が強化されている場合は、それを弱化させる方法を考えます。これはレベルCの取り組みです。

まず、子供がやる気をなくすのは、しばしば否定的な反応や叱責が原因です。
例えば、悪い点ばかりを指摘されたり、怒鳴られたりすると、子供は(大人もそうですが)やる気を失います。
これは行動を起こさなくなるというような否定的な結果につながります。

また、失敗が多く成功が少ない場合も、子供のやる気を削ぎます。

行動を増やしたい場合は、強化するための対応を採用します。
具体的には、良い行動があったときに褒めることです。
褒める際は、具体的な行動を褒め、できるだけ直後に褒めることが効果的です。
また、目線の高さで目を見て、にこやかな表情で、気持ちを込めた声で伝えることも大切です。
ただし、子供がアイコンタクトを嫌がる場合は、無理に行わないようにしましょう。

皮肉を交えたり、誤解を招くような言い方は避けるべきです。子供にはストレートでわかりやすい言葉で伝えることが重要です。

また、児童が興味を持っているものや流行っているものを利用することも、ポジティブな強化として有効です。

褒める機会を逃さないことが重要です。
行動が完全に完成しなくても、取り組みを始めた時点で褒めることが効果的です。

例えば、勉強を始めた時や1問解いた時に褒めるなど、小さな進歩も評価することが大切です。
また、課題が難しい場合は難易度を下げて達成可能にし、達成したら報酬を与えるなどの工夫も有効です。

行動を促すためには、細分化して一部を褒めたり、手伝ってから褒めたりする方法もあります。特に子供が一人ではできない場合、手助けをしてから「よくできたね」と褒めることで、やる気を引き出すことができます。

また、グループやクラスで他の子供が良い行動をした時にそれを褒めることで、模倣を促すことが可能です。(特定の特性がある場合、他人を褒める行為が本人の行動に繋がらないことがあります。つまり、それが自分にも求められている行動だと理解できない場合です。)

子供が自分で行動を選ぶことを促し、選択した行動を達成したら報酬を与える方法も効果的です。

これにより、反発を避けながら望ましい行動を促すことができます。

トークンシステムは、望ましい行動を促進するために用いられる方法で、具体的な行動を明確に定義し、その行動が達成された際にトークン(ポイントあるいはご褒美)を与えることが基本です。

トークンは、褒め言葉と組み合わせて使用することで、その効果を高めます。

しかし、トークンシステムの適切な使用には注意が必要で、子供ができる行動ややる気を出せば可能な行動に対してのみ適用し、習得していない行動や日常的に行っている行動には使用しません。

また、トークンが一定量貯まると、子供にとって魅力的な報酬と交換することで、望ましい行動を促します。

トークンシステムの効果を最大限に発揮させるためには、トークンの種類や交換できる報酬を事前に決め、子供が行動を完了した直後にトークンを渡すことが重要です。

トークンは、賃金のようなものであり、働いた結果として得られるものです。

これにより、子供は自分の行動と報酬の関係を学び、将来の就労や自立した生活に役立つ自己管理能力を身につけることができます。

ただし、トークンシステムを利用する際は、特に高価な報酬を与えてしまうことで、継続して莫大なコストが必要になってしまうことにも注意が必要です。

健康や経済的なバランスを考慮し、適切な報酬を選ぶことが望ましいです。

また、トークンシステムを家庭や学校、施設などで別々に適用する場合は、連携を取り、一貫性を持たせることが重要です。

支援学級のお子さんを含む場合、トークンシステムを計画する際には、ペナルティ(罰)を組み込まないことが推奨されます。

ペナルティは子供にとって不安やストレスの原因となり、学習効果を阻害する可能性があるためです。

また、子供が望ましくない行動を示した際には、その要求に応じず、望ましい行動を示した時にすぐに褒めることでポジティブなフィードバックを与えます。

結局、トークンシステムは、子供に自己管理能力を教え、将来的に自立した生活を送るための一助となり、適切に利用されれば、就労や個人の趣味にもつながる有益なツールとなるでしょう。

消去の法則に基づいて、子供がしてほしくない行動を示した際には、その行動に対して明確な反応を示さないことが効果的です。

ただし、子供の安全や他人への影響を考慮して、適切なタイミングで介入する必要があります。

また、消去の法則を適用する際には、行動の強度が一時的に増加すること(消去バースト)があるため、その準備も必要です。

消去バースト(Extinction Burst)は、応用行動分析(ABA)において重要な概念の一つです。

「消去」とは、行動を強化する結果を取り除くことによって、その行動の頻度や強度を減少させるプロセスを意味します。
「バースト」は、強化が停止された後、行動が一時的に増加または強まることを指します。

この現象を理解しやすくするために、次のような例を挙げることができます。

子どもがスーパーマーケットでお菓子をねだり泣くたびに、親がお菓子を与えると、子どもは泣けばお菓子をもらえると学びます。
その後、親が子どもの泣き声にお菓子を与えないことにした場合、最初は子どもの泣き声やねだりが激しくなるかもしれません。
これがまさに消去バーストです。子どもは過去の経験から学んだ「泣けばお菓子をもらえる」という期待が満たされないため、より強く反応するのです。

しかし、このような行動の増加は一時的なものであり、継続的に強化を提供しなければ、行動は徐々に減少します。
消去バーストはABAで行動変化をもたらすための重要なステップですが、時には予想外の強い行動を引き起こすことがあるため、慎重に管理する必要があります。

タイムアウトやレスポンス・コストなどの弱化手法を用いる場合は、これらを適切に実施することが重要です。

「レスポンスコスト(Response cost)」は特定の行動が取られた後に、既に獲得された強化物(例えば、トークンや特権)を取り除くことを指します。
この技術は、不適切な行動を減らすために使用されることが多いです。
しかし、この方法を単独で使用するのではなく、適切な行動をした際は褒めることが大切です。

最終的には、子供にとって意味のある報酬や講師を設定し、望ましい行動を促進することがトークンシステムの目的です。
また、子供が自らの行動をコントロールし、社会的なルールや規範を学ぶ手助けとなることが期待されます。

通園施設や児童発達支援センターでは、パズル式のレスポンスコストを用いる例があります。
この方法では、問題行動を示す度にパズルの一部が取り除かれ、報酬を得る機会が減少します。
しかし、この方法も行動の原因を理解した上で適切に使用することが重要です。

適切な行動の強化としては、視覚的に伝える方法が効果的です。
トークンシステムはその一つで、子供がうまくできたことが視覚的に分かりやすくなります。

行動の切り替えが難しい場合、口頭で伝えるよりも視覚的に伝えることが推奨されます。
また、行動に対して必ずその後に報酬や良いことが起こることを示す強化の法則を応用してください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?