『紀元前九十二年、ヒダカの海を渡る』[216]草原を行く
終章 別れのとき
第4節 草原の別れ
[216] ■2話 草原を行く
「お前と初めて会った日、お前の後ろに神様がいると言ったのを覚えているか?」
「ああ、覚えている。何を馬鹿なと、吾れはソグド語で答えた」
「そうだったな。ヒダカに神様はいるのか?」
「ああ、いる。ヒダカの神様はどこにでもいる。もしヒダカ人がみな消え去っても、神様だけはその場にずっと居続ける」
「匈奴にも神様がいる。あそこに見える大きな木は神様だ。戦いの神もいる。だが、一番大事なのは日の神だ。いま後ろの山の上