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モテ期の思い出

衣替えをしてウキウキしていたのだろうか。
ふと、中学時代のことを思い出した。

小5まで学校で口がきけなかったわたしは、思春期になると、当然のようにクラスでいじめられた。
中学校に上がると、クラス中の男子がわたしを嫌い、激しくいじめてきた。
女子にもそういう子はいた。
中1の夏休み、チエとしーちゃんは、わたしの両手足をつかみ、学校のプールに沈めた。
殺されるかと思うほど怖かった。

チエとしーちゃんが、わたしを仲間に入れてくれるようになったきっかけを、全く覚えていない。
チエはとても目立つ子だったし、クラスのムードメーカーだった。
しーちゃんは、チエの親友だった。
わたしはいつの間にか、学校帰りに、たまり場だったチエの家に上がり、チエのグループだった女子4、5人で遊ぶようになった。

ある日曜日、チエの家に行った。
(休日もチエの家はたまり場だった)
これも、どういういきさつでだったか覚えてないけれど、チエはパシャリとわたしの写真を撮った。
しばらくして、チエは現像された写真をみんなに見せて、こう言った。
(携帯はおろかデジカメすらなかった時代だった)
「ねえ!とりこ可愛くない?」
しーちゃんも声を上げた。
「可愛い!とりこ可愛い!」
チエは言った。
「この写真、男子に見せたら、とりこのこと好きになっちゃうかも知れない!
どうしよう!」
わたしは自分の写真を見た。
ああ、こないだは、赤のチェックのワンピースに、三つ編みおさげで来たんだな。
確かに映りがいい。
そう思った。
ちょっとそう思っただけだった。

モテ期がやってきた。
けれどそれは、男子からではなかった。
チエとしーちゃんが、わたしのことを、毎日めちゃくちゃ可愛がるようになったのだ。
チエはわたしにあだ名をつけた。
「プリティー&セクシー!
プリセクとりこ!」
微妙なあだ名だな、と思った。
しーちゃんは、男子と話してて
「学年1可愛い女子って誰だと思う?」
と聞かれると
「とりこさん」
と答えた。
その男子は
「マジメに言えよ!
こいつは学年1のブスだろ!」 
と言った。
わたしは、クラスの中で、そういう極端で微妙な立場だった。

中2になり、クラス変えがあった。
わたしの立ち位置は、似たようなもんだった。
男子には激しく嫌われ、女子には可愛がられていた。
思春期だったから、男子にモテたい、とはもちろん思った。
けれど、女子に優しくしてもらって、それなりに楽しい毎日だったような気もする。

子供時代と思春期は地獄だった、と思うときがある。
けれど、こんな穏やかな春の日には、楽しかったこと、嬉しかったことの記憶もよみがえる。
わたしはそれなりに幸せな人間だ。
そして、これからまた、新しい幸せをつかむため頑張っていけたらいい、そう思う。


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