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とりこさんはわたしの奴隷だから

保育園の頃からいじめられていた。
特にひどくわたしをいじめていたのは、Nちゃんという同い年の女の子だった。
小学校に上がっても、Nちゃんと同じクラスになった。
毎日Nちゃんの家に、学校帰りに寄らなければならなかった。 
Nちゃんは鍵っ子で、ふたりきりで遊ばなければならなかった。
門限を過ぎて帰ってくるわたしを、母は毎日怒鳴りつけた。
「あんたがハッキリ言えないからでしょ!」
Nちゃんが怖かった。
母も怖かった。

小2になった。
何月だったか覚えていない。
秋だった。
だからわたしは8歳になっていたんだと思う。
Nちゃんはお風呂にお湯を張った。
そしてわたしとふたりでお風呂に入った。
裸のNちゃんが、脚を開いた。
そしてこう言った。
「ここを舐めて」
(大人になって、それがクンニリングスだということを知った)

未知の世界だった。
それに、わたしはおませさんでもなかった。
怖かった。
ただ、ひたすら怖かった。
それでも、Nちゃんの命令は絶対だった。
わたしはNちゃんの股間を舐めた。
感じていたのか、大人ぶりたかったのかわからない。
Nちゃんはアンアンあえいでみせた。
次は、わたしが舐められる番だった。
叫びたいほどに怖かった。
けれど、Nちゃんに逆らうことが怖かった。
わたしは無言で耐えた。

お風呂場から出ると、Nちゃんは
「キスがしてみたい。
キスして」
と言った。
イヤだ!と思った。
たまらなく怖かった。
けれどやっぱりわたしはなにも言えなかった。
目を閉じているNちゃんの小さなくちびるに、指を2本当ててみた。
Nちゃんは騙されなかった。
だから、ほんとうにキスをした。

その遊びは、何ヶ月続いたのだろう。
ほんの数週間だったのかも知れない。
8歳だったわたしは、そのことを誰にも言えなかった。
そして、とうとう誰にも言えなかったままに、大人になった。

大人になって、思ったことがある。
Nちゃんは、誰か大人の人にイタズラされていたんじゃないだろうか。
Nちゃんは、美少女だった。
残酷な美少女だった。
けれど、その残酷さが、大人の誰かからの虐待によるものだったとしたら。
「とりこさんはわたしの奴隷だから」
Nちゃんは、よくそう言った。
けれど、8歳の女の子が、奴隷がほしいと思うようになったのは、大人の誰かからの性被害によるものだったとしたら。

Nちゃんの両親は、わたしたちが小5か小6のとき離婚した。
Nちゃんは少し離れた町に引っ越し、転校した。
だんだん関わり合いが薄くなり、わたしはNちゃんから解放された。

Nちゃんは、どんな大人になったのだろう。
Nちゃんは、どんな人生を生きているのだろう。
あの残酷だった美少女は、どんな心の傷を抱えていたのだろう。

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